質問・回答(0219)


「炎症のために体が言うことをきかないのですが」

83歳の母のことでご相談いたします。
山梨県出身の母は風土病のため30年前に肝硬変と診断され、定期的にGOT等を チェクしていまして、日常生活には不自由なく過ごしてまいりました。 平成11年6月、大腸癌でS字結腸をの1部を約二〇センチほど切除いたしました が、 抗がん剤を使用することなく、今年の6月まで順調に生活しておりました。

今年の6月、庭作りのため、雑草を取ったり、ススキの根っこを株ごと取ったりと 周りの注意も聞かず、張りきって仕事をしたことが原因なのでしょうか。 その後、まず膝がいう事をきかず、布団から立ち上がるのに30分もかかるぐらいに 自由がきかなくなりました。 それと肩のコリ、はりもありましたので、暫く整形に通って、湿布くすり、痛み止め 等で 様子をみてきましたが、一向に良くならず、整体に2度ほど通いました。

筋肉の移動が原因ということで、1回に3時間ほど、振動を与える程度の強さで 揉み解して、もとの位置に筋肉を収めるといった整体です。 しかし、途中であきらめ、又、整形に通い始めました。 加齢による磨耗があるが、それが原因で起こる痛みではないということで 湿布薬と痛み止めが処方されました。〔肝臓に悪いということでよほどのことが ないと飲まないようです。)

時々原因不明の熱が出るようになりましたので、リウマチの検査を受けに、内科を 受診いたしました。 この時の血液検査では、貧血(9.7)、蛋白が多い、白血球が2900と以上に低 い、しかし炎症の数値は13と高いと言う結果がでました。 先生も首をかしげ、この炎症がどこからくるのか突き止めるべく、核放射線による検 査をうけましたが、はっきりとした結果は得られませんでした。

明日の13日にCTをとりますが、これでも分らない時には、引出しをひとつひとつ 開ける ように検査をしていくより仕方がないといわれました。 一応、入院の申し込み(膠原病の疑いあり)はすませてあります。 ちなみに腫瘍マーカは平常値です。 身長155センチ、体重55キロ、〔以前は62キロ)です。

現在、肩のコリ、痛みが辛いとのことです。頭を支えるのが辛くなるため、 いつも頭を前のほうに下げています。肩の近くの腕の付け根のツボを押すと大変痛い と 言っています。握力も水道の蛇口や雑巾等をしぼることが困難のようです。 足のほうでは、膝に問題があるというよりは、大腿骨に違和感があるようで 歩き方もヨチヨチです。 風邪をひいたとき、よくあるということですが、顔の皮膚や、手首の皮膚がピリピリ して 痛むそうです。 頭皮も1部少々ポコポコのようです。 最近では食欲もなくなってきました。 よろしくお願い申し上げます。

明日、CTをとりに、そして15日には検査結果を聞きにまいりますが、 どのようなことを伺えばよいかアドバイス頂ければ幸いです。 なかなか難しい病気なのでしょうか。 現在、***大で診て頂いています。 痛くても、動かさなければダメと本人は自己流に体操していますが、 いかがなものなのでしょうか。痛みは暖めると楽になるということで 痛みのある肩等にホカロンを張りつけております。 お忙しいなかお手数を再度お掛け致しましたが、よろしくお願い申し上げます。              敬具
いつも下をむいています。

山梨県の肝硬変の風土病と言いますと医学生のころに日本住血吸虫の実習に竜王とかいうところにミヤイリガイを探しに行ったことを想い出しました。既にそのころにはほとんど全滅していたように覚えています。

さて、お母様のことですが血液検査で「蛋白が多く」、「貧血があり」、「炎症の数値が高い」とのことでしたらまずは「多発性骨髄腫」のことが頭に浮かびます。普通は高齢の男性に多い病気ですが女性に起こることもあります。

通常「肝硬変」では血液中の蛋白、特にアルブミンが低下することが多いのです。もしも「多発性骨髄腫」でしたら血液中の免疫グロブリンを調べれば大体判ります。免疫グロブリンにはIgG,IgA,IgM,IgD、IgEなどがありますがこれらの値は正常値であったかどうか聞いておられますでしょうか?
それぞれ「アイジージー、アイジーエー、・・・」などと読みます。詳しくは血液の免疫電気泳動法などで調べます。

「多発性骨髄腫」でしたら、血液の変化の他に骨のレントゲン検査で「打ち抜き像」と言って頭の骨などに丸く抜けたような像が出てくることも多いです。

全身の骨の検査は既にされているとは思いますが如何でしたでしょうか。「多発性骨髄腫」ではない場合は感染症、膠原病、悪性腫瘍など可能性の高いものから徹底的に調べて行く必要があります。

 その際やみくもに辛い検査をするのではありません。 異常が発見されやすく、しかも患者さんの心身に負担のかからない検査を選んでそういう検査から順番にやって行ってもらいます。

言葉のあやかもしれませんが決して「机の引出しをひとつひとつ開けるように」つらい検査を軒並みやってもらっては困りますし、まさかそのようなことはなさらないと期待します。

 入院しますと、まず最初に「システムレビュー」と言っていままでの生活歴から行動範囲など徹底的に詳しい聞き取り調査があるはずです。83歳とのことでしたらきっとご家族にも詳しいお尋ねがあるでしょう。

 次いで全身を隈なく診察されることでしょう。
 以上の段階ではそれほど患者さんの心身に負担は与えませんので徹底して行います。その後、何人かの医師が集まって文献その他も参考にしてありとあらゆる病気の可能性を検討した上でめぼしを付けて検査計画を練っていくわけです。
しらみつぶしに全ての病気の可能性を検討するという段階が入るのが外来診療と違った点です。

 「引き出しをひとつひとつ開けるようにして検査する」という言葉が気になりましたので、入院されてお話をお伺いになる場合は上記のステップをしっかりと尋ねられてはと思います。東京医大の附属病院にご入院とのことですのでまずは大丈夫と考えます。

 握力の低下も出現しているとのことですが例えば血液中のカリウム(正常値は3.5−5.0くらいです)など、体の中の電解質のバランスのくずれも原因となりますし、体のどこかに悪性腫瘍が出来ている場合にも起こり得ます(「イートン・ランバート症候群」と言います)。後者の場合には診断確定に筋電図検査まで必要になることもあります。

感染症でしたら骨の症状が多いので骨髄炎なども考えねばなりませんが、いくら調べても判らなかったがあとになって実は「結核性骨髄炎」だったなどということもあります。内科的な病気では全身性のチフスなどが見逃されたこともあります。

膠原病の場合はほとんど血液検査で病気を絞り込むことが可能となって来ています。お母さまの場合、リウマチ系統の検査が重要となるでしょう。

悪性腫瘍の可能性が高い場合は胃カメラなど消化器から全身の検査が必要になってしまいますが、それでもよほどの可能性が無い限り超音波(エコー)検査などご本人が辛くない検査から進めてもらいたいものです。CTの検査もそれほど負担になりませんので原因がはっきりとしない場合は腹部だけでなく、胸部、頭部など日を分けてすべて撮影してもらわれると良いでしょう。

骨の病気の可能性もありますので激しい体操をして骨折など起こさないよう、体操は軽いものにしておかれた方が安心でしょう。

以上、お答えとさせて頂きます。


足立先生
早速、ご回答頂きましてありがとうございました。

長男(兄)が骨髄腫で亡くなっておりますので、ひっよとしてとの 思いがよぎりました。
お蔭様で病院の先生からのお話をお聞きする際、何を伺ったらよいか 大変参考になります。 ありがとうございました。
また、よろしくおねがい申しあげます。 取り急ぎ御礼まで。