
Date: Sun, 31 Dec 2000 16:56:09 +0900
はじめまして。12月**日に出産し、その子が二分脊椎(肛門から10センチ程上部に縦7センチ、横5センチ程の円形の傷がありそこから髄液も出ている)と診断され現在治療方法で悩んでいるものです。
脊椎破裂で神経も切断されている為に下半身の機能はほとんどないそうで、足は動かず排尿排便の機能も全くないそうです。
それと現在も軽い水頭症で、それは進行していくだろうとのことです。これは出生後すぐの検査では髄液が25ミリリットル前後浸出していたものが1週間程後の現在は10ミリリットル前後に減少、その為に脳に溜まりつつあるということです。
あと詳しい病名がわからないのですが、MRIで調べると脳の後頭部あたりにクモの巣状の奇形もあるそうです。そのため将来コミュニケーションもとれるかどうかわからないといわれました。
これについても詳しく教えてください。
小児科では親としてたとえ一生寝たきりであろうと面倒をみなさいと言われ、脳外科では現在の医療で生かされているだけの子供で普通であればとっくに亡くなっているような子だからあきらめろと言われています。
また手術してメリットがあるのなら手術を勧めるが、何も得るものがないこの子の場合は手術(脊髄が破裂している場所の縫合手術)はあえて勧めないと言われました。(自然淘汰しろということです)
子供の現在の症状はNICUにはいますが様態が安定し、保育器ではなくコットの中におります。授乳も行いミルクも自分で飲めております。炎症反応もなく、現在は抗生物質の投与も致しておりません。(生後7日目に点滴と抗生物質の投与を中止)患部のガーゼ交換程度の治療だけです。
選択方法としては
(1)無理やりお願いして手術をしていただく
(2)傷がふさがっていない状態でも家に連れて帰って面倒をみる
(3)しばらく現状のまま様子をみる(自然に傷がふさがった子も過去いたそうです。)
なのですが、小児科と脳外科の意見が全く正反対の為にどうしたらいいのか途方にくれております。
アドバイスを宜しくお願いします。
○脊椎破裂の二分脊椎(現在数ミリから十数ミリの浸出液が出ている)は自然にふさがる可能性は何パーセント程度あるのか
○脊椎破裂している場合、通常生後24時間以内に縫合手術するらしいのですが、手術をしていただけなかった娘の場合、他の要因(例えばそのクモの巣状の奇形) が影響しているのか
○クモの巣状の奇形とはどういう病気か、又これは脳の機能としては致命的な障害なのか、コミュニケーションもとることは本当に全く不可能なのか
宜しくお願いいたします。
Date: Wed, 03 Jan 2001 14:09:31 +0900
メール拝見しました。
かなり程度が強い「二分脊椎」とのことで赤ちゃんのことを考えます不憫ですし、また、ご両親や関係された方々のお気持ちお察し致します。
「程度が強い」と書きましたのは、私たち一般の医者が普通拝見する「二分脊椎」の患者さんは「潜在性二分脊椎」と言って体の異常が外から見ても分からず、脊椎の骨のレントゲン写真を撮って初めて異常がわかるというものが多いのです。
この「潜在性二分脊椎」でしたら程度の軽いものも含めますと小児の約25%にも見付かると言われています。成人になると思春期までの骨化現象によりレントゲンを撮っても発見されるパーセンテージは随分と低くなります。外から見て腰のあたりに毛が生えていたり、場合によっては少しへこんでいることもあります。
今回の赤ちゃんの場合は正確には診察しないと判断できませんが、「潜在性」ではなくどちらかと言えば「嚢胞性二分脊椎」に分類され、メールの内容は「嚢胞性二分脊椎」の中でも、最も重症な嚢胞さえ作らず、髄液まで漏れ出るような「完全二分脊椎」または「脊髄破裂」などの様子に似ています。
「嚢胞性二分脊椎」は日本には比較的少ない病気で普通、1000出産につき0.2人くらいと考えられています。諸外国では2.5−2.7人ほどとかなり多くなります。
「嚢胞性二分脊椎」の場合、ほとんどの例で「アーノルド・キアリ」という頭の後ろのあたりの骨の奇形を合併しています。その他に心臓、腸管、頭蓋骨癒合症などさまざまな奇形を合併することが知られています。
いずれ感染を起こしますので感染を防ぐという目的のためには手術が有効です。
二分脊椎の程度が軽い場合は赤ちゃんの将来のために意味のある人生を過ごすためにちゃんと手術をすることが誰の目にも分かりやすいのですが、ある程度を過ぎると一体手術をすることがどれほど意味があるのか、むしろ少しでも苦痛を伴う手術が本当に赤ちゃんのためになっているのか疑問が出ることがあります。
何故なら「嚢胞性二分脊椎」の手術を行っても有意な人生を送りえる状態になったのは7%だけだったとの1971年ころのデータがあるからです。2001年になってもこの可能性はそれほど高くなっていないと考えられます。7%以外の残りの赤ちゃんは苦しんで手術を受けさせたとしてもいずれはほとんど人間らしい活動など無くて亡くなられてしまったものと考えられます。
ですから、実際、胸椎や腰椎部の二分脊椎患者で完全な対麻痺があり、括約筋麻痺(排尿、排便の機能の麻痺)が完全な場合は、手術をせずむしろ放置を進める脳外科医も多いです。今回の赤ちゃんの場合もほぼこれに近い状態のようですね。
先ほどのデータを出したLoeberという人は治療をするかしないかの選択基準を出しています。それによりますと腰椎の2番、3番よりも上にも麻痺がある場合も基準に入ります。この基準に従うとすれば今回の赤ちゃんも手術をしないという範囲に入ってしまいそうです。この「Loeberの基準」は大概の脳外科医は知っていますのでこの基準ではどうなのか確かめておかれても良いでしょう。
では、ここでご質問3項目につきお答えしておきます。
1.二分脊椎を放置しておくと感染、壊死、滲出などさまざまな変化をきたし場合により瘢痕形成(あと)を残してふさがる可能性はあり得ます。
2.生まれて24時間以内でしたら皮膚も清潔で、胎便も無菌ですが牛乳やブドウ糖を飲んだり空気にさらされて24時間もたつと何をするにしても細菌の侵入の可能性があるので手術の条件がそれだけ不利になるわけです。
3.MRIで確認された「後頭部あたりのクモの巣状の奇形」というのはさきほど述べた「アーノルド・キアリ奇形」のことかもしれません。
「アーノルド・キアリ奇形」とは後頭部の小脳の下のあたりが頭蓋骨の一番下の大きな穴を通って脊椎管内に入り込んでしまい上部頸髄との間にクモ膜の肥厚癒着を起こすこともあります。
大脳の機能に直接関係するのはこの「アーノルド・キアリ奇形」よりもむしろあとで起こってくる「水頭症」という状態によるものです。脊髄とつながっている脳室という水を入れる場所が膨らんでしまうために起こります。
続いて「小児科と脳外科の意見が全く正反対」とのことですが、小児科の先生は手術を何が何でもやりなさいと言われているのではないのではと考えます。
手術については上に書きましたことなどを踏まえて再度脳外科の先生から情報を頂いた上でご両親で結論を出されてはいかがかと思います
次に水頭症の手術をするかどうするかなどのこれからいろいろとご両親様が判断を迫られることも出てくるかもしれません。小児科の先生も相談に乗って下さる様子ですし困難を乗り越えて行かれるよう切に念じております。
なお、第1子が二分脊椎であった場合、第2子も二分脊椎である可能性が6−8倍になると言われています。しかるべきところで、正確な遺伝相談を受けておかれることをお勧めします。
どの程度お役に立つか分かりませんが、以上、医学的なアドバイスとさせて頂きました。
蛇足ですが、国民の一人一人が今回のような赤ちゃんの幸せについて、どうするのが良いかなど、一緒に、そして真剣に考えるようになれば「子供の虐待」、「幼児遺棄」事件など随分と少なくなるように思いました。
Date: Fri, 5 Jan 2001 19:16:37 +0900
メールありがとうございました。 正直くらくらする内容でしたが、親としてお医者様と相談しながら一番良い道を探し ていこうと思っております。
本日・・・(事務的ご連絡中略)・・・遅くなって申し訳ありません。 又何かありましたら相談に乗っていただきたいと思っております。
その時は宜しくお願いします。
Date: Fri, 05 Jan 2001 21:44:18 +0900
「くらくらする内容」に今後、皆様からの回答どのようにすべきか 更に考える必要性を感じました。
取り敢えずは身近なドクターと良くご相談になって下さい。
私自身は、機械的なお答えしかできない「インターネット病気相談」の限界を考 慮に入れた上で皆様のお役に立つ方法を探っていきます。 これからもどうかよろしくお願いします。