質問・回答(0226)


普通の病室で感染症の危険はないのでしょうか?

私の父(もともと、高血圧と糖尿病をもっていまし た)は、昨年12月20日に、 くも膜下出血で、緊急入院し、手術(脳動脈溜をクリップで留める手術)を行いまし た。

12月31日にも、右脳の血液を取る手術をしました。 入院してから1ヶ月後に、それまで入っていた「ICU」から、「リカバリー室 」 (感染症の防止のため、入室制限がある。リカバリー室への入室は、大人の家族のみ で、マスクを着用、風邪をひいてる人は家族でも入室しないように指導されました) に移りました。

「リカバリー室」に入ってから、大量の下血(腸からの出血)があったたため様子見 の状態が続きました(水頭症の手術がなかなかできませんでした)が、下血がなく なったので、3月**日に、水頭症の手術(脳圧が上がると、脳からの水が腹腔 に流 れるようにするための手術)をしました。

しかし、現在になっても、まだ、父は意識が戻らない状態です(眼は開いたり、クリ クリと動きますが)。 水頭症の手術後はそのまま「リカバリー室」に入っていましたが、「水頭症の手術か ら8日目の3月**日」に、「リカバリー室」から「普通の病室」に移されまし た。

この「普通の病室」は、既に入っている他の5人の病人は、皆、リモコンでテレビの 操作をするような「ある程度元気な方」で、お見舞い客の出入りも、完全に自由で す。
この「普通の病室」の中では、意識が無いのは、父だけです。 父は、現在も、水頭症の手術の時に空けた体の穴(頭に2箇所、首に1箇所、腹に1 箇所)は、まだ「カサブタ」ができていない状態です(穴の上に、ガーゼのようなも のを付けています)。

また、父は、現在も、「痰を取るための、また、緊急時に酸素吸入をする気道を確保 するための穴」を、首に空けており、その穴に、プラスチックの管が入っている状態 です。

このような状態で、前述のような「普通の病室」に入っていて、「感染症の危険」は 無いのでしょうか。 「リカバリー室」では、感染症の防止のために見舞い客の入室制限があります(そも そも、「感染症の防止」のために、父は、「リカバリー室」に入れられていたと思い ます)が、「普通の病室」にはそれが無いので、私としては、「感染症の危険」があ るのではないかと心配しています。

このような「普通の病室」にこのまま入れていて、「感染症の危険」はないのでしょ うか? それとも、私から、お医者様に、「感染症が心配なので、リカバリー室に戻して下さ い」とお願いした方がよいでしょうか? ご助言をお願い致します。

(また、付加的な質問として、今のような父の状態で、意識はいつ頃戻るでしょうか ? 父の手術をした先生は、最初の手術のとき、「くも膜下出血の病状のグレード は”4”で、右脳と左脳の真中の下の1センチの動脈留が破裂したために、くも膜下 出血となった」と言われていました。

このような病状の場合、意識は戻るでしょうか ? また、意識が戻るとして、後遺症はどのようなものが予想されるでしょうか?)

MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)感染症やVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)感染症など「院内感染」が問題になっている最中、手術後間もないお父様のことをご心配になるお気持ちメールを拝見して良く分かりました。

ご指摘のとおり「リカバリールーム」の方が入室者へのマスク装着などにより風邪等の感染の可能性は少なくなると考えられます。

しかし、「リカバリールーム」であっても床の上や空気中の細菌などが完全に殺菌されているわけではありません。医師や看護婦の着衣、聴診器なども無菌でないことの方が多いと考えられます。実際に検査をしてみたら病院勤務医師の3分の1近くでで鼻腔にMRSAが見つかったなどという報告もあります。

そういうことを考えると普通の部屋とリカバリールームとでは感染症の危険はどちらもあると言えましょう。

白血病の治療などで入院中の患者さんに「無菌室」と言って床などはもちろんのこと空気中の細菌まで殺菌してしまう装置があるような部屋に入ってもらうことがあります。白血病の治療中に細菌を排除する白血球がほとんど無くなる時期があるからです

こういった「無菌室」というのは高額な装置が必要となりますし、大変な手間をかけても実際には無菌というわけには行かず雑菌が繁殖してしまうことも多いものです。このような部屋をそろえている病院は極々限られています。

病院の中の細菌は出来る限り少ないに越したことはないのですが手術後の患者さん全員をこういった「無菌室」に入ってもらうなどということは非現実的でしょう。

そういう中でそれでも術後感染症を少しでも少なくしようと、たくさんの患者さんの中からその病院のルールに従って手術直後はICU,その後の感染の可能性が高い患者さんを選んで「リカバリールーム」に入ってもらっているものと考えられます。

「リカバリールーム」だと風邪などの感染の可能性がごくわずかでも少なくなるであろうとの心配りと考えられます。ICUや「リカバリールーム」にさえ入れば感染症の可能性が全くなくなるなどというものでは決して無いでしょう。

ICUなどは周りに重症の患者さんが多いのでかえって危険な細菌に感染する可能性が高まる場合もあります。

以上のことを考えると受け持ちの先生に「リカバリー室に戻して下さい」とあえてお願いするのは病院のルールに沿わないことをお願いすることにもなりかねず他の患者さんとの平等性からもあまりお勧めできません。

メール末尾のご質問は患者さんに接していないので当たっていない点もあるかもしれませんがお答えしておきます。

意識が戻る時期を予測するのは大変難しいですがくも膜下出血のグレード4で繰り返し手術が行われても未だに意識がないという状況から楽観はできません。

しかし、「もう意識はもどらず植物状態になるのでは」と思われる患者さんでも数ヵ月経ってから徐々に反応がみられることもあります。
意識が戻られて少しでも言葉も話せるようになればと念じております。


足立先生 ご助言ありがとうございました。 たいへん、詳しく述べていただき、よく理解できました。


Date: Mon, 09 Apr 2001 15:41:11 +0900
父のその後

3月9日にインターネット&メールで相談しました*****と申します。

相談・回答をチェックしていて、今日、久しぶりに新しい相談例を読みました。
父と似ている症例で、普通病棟での感染の危険性など、こちらが知りたい内容が掲載 されていて非常に参考になりました。

父は手術はしなかったのですが、ICUから、いきなり6人部屋にうつされて、家族中で 大パニックした経験があります。

この*曜日に転院がきまりました。今の救急病院とはちがい、設備のそろった病院 (ストレッチャーでの入浴が可能・大きなリハリビルーム)です。

また、父も意識レベルは低いのですが、呼びかけに応じ、左眼をひらいたり、リハリ ビのときに、痛みで顔をゆがめたり、手を握り返してくれたりとすこしづつですが、回復の兆候をみせています。

先生の回答をよみ、なんだか、私の相談の内容を盛り込んだような(と自分で勝手に 思ってしまいました)内容だったので、とてもうれしくなってメールしました。

父の急な脳出血、こういうときには、本当に少しでも多くの情報がほしいものです。先生のホームページ、非常にありがたかったです。先生もお忙しいでしょうが、うろたえる患者自信や患者の家族のために続けてください。

ありがとうございました。