質問・回答(0261)


「顔面神経麻痺ですが中枢性と末梢性、医師により診断が違います」

Date: Sun, 24 Mar 2002 20:12:50 +0900 Subject:
☆病気の発生と経過。
今月の5日に散髪に行き少し短めに切ってもらいました、そのときちょっと風邪気味かな と感じましたが、翌日の昼頃になって、右側の目から、涙が流れて止まらなくなりました、 花粉症にかかったかなぐらいの感じで、涙を拭いて我慢していましたが、洗面のときに 目に石鹸が入る妙な感じがし、口をゆすぐと右側の口の端から、水が流れ出て、口に ためることができません。さすがに妙だと思い、鏡を見ると、そこには右側の顔がゆがんだ 始めてみるショッキングな顔でした。

翌日とりあえず眼科に行き目を見てもらいましたが、そこで「これは、目の病気ではない 顔面麻痺だと思われるので、脳外科に行きなさい」といわれ、紹介状をもらって総合病院を たずねました。
最初に診察をしてくださった脳神経科の医師は、顔を調べた後、「額にしわを 寄せてみてください」となんども、額のしわのより具合を確かめ、「右の顔面神経が麻痺しています 麻痺自体は重症ではないが、顔の右側の額にもしわがよるので、ひょっとしたら脳からきた麻痺かも 知れないのですぐMRI検査を受けるように」と指示され、即刻検査を受け結果診断を仰ぎました。

医師は写真を見ながら(脳を上から見た写真に右左に小さな白い引っかき傷のようなものがある) これは、以前に起こった無症状の脳梗塞だと思われる、したがって貴方のケースは脳に原因がある 顔面麻痺(中枢神経の麻痺)であり、末梢神経系のベル麻痺やウイルス性の麻痺とは違う、という 診断がなされました。 処方は、メチコバール、アデホスLコーワ、を一日三回、ステロイド剤を一日二回二錠づつ飲むようにと いわれました。

翌週、同じ病院に診察に行きました、今度は前回とは違う先生でした、その先生は、私のMRIを見ながら これは、脳からきた麻痺ではない、顔に影響のある部分は、脳の上部ではなくて、もっと下だから、先週の 先生は何か見間違ったのではないか。又小さな梗塞については、明言を避けましたが、心配するようなものでは ない、ある年齢以上になると脳の老化の一種で、小さな梗塞はみんなあっても不思議はない。と いわれ、ステロイド剤の分量を減らした処方と、目薬を追加したくださいました。

☆この段階での疑問。
脳の麻痺でないのなら、普通右側全体が麻痺して、右側の額にはしわは寄せられないはずだとの書物を 読みました、すなわち、ベル麻痺などの末梢神経系の麻痺なら、麻痺側の額も動かずしわは寄せられない。 麻痺側の額にもしわが寄せられるのは、もっぱら顔の下の部分に麻痺が集中する、中枢神経の麻痺、すなわち 脳に原因がある場合が多いと記述がありました。 そのときの私の顔は、右左の眉の位置は、麻痺側である右は左の眉の位置より、下にありました、並行ではありませんでした。 そんな状態で、額にしわを寄せると、右左、アンバランスながら、右側の額にも確かにしわはよっていました。 もし、額にしわが寄せられるのはみんな脳に原因があるとすれば、最初の先生の診断は正しいのではないか、この疑問が 不安に変わりました。

☆もうひとつの脳外科病院の診断。
不安に駆られ、もうひとつ脳外科病院を訪ねました、そこでは、MRIとMRAと血管撮影もしました、機械は1.5の最新型 であった、と記憶しております。 その先生は、「貴方には脳梗塞は認められません、顔面の麻痺は脳には関係ありません」とのことでした、不安なので 正直に、ある病院のMRI検査で、古い梗塞がある、と診断されたといいますと、これは、脳梗塞ではない、年をとると 血管との隙間が開き、それが、そのように映るだけだ、見間違いでしょう、と断定されました。 そのときには、額のしわのことは言いそびれましたので、結局、また、ステロイド剤(ブレドニン5mg)とビタミンB12、と胃腸薬のみ の処方でした。

☆最後の疑問。
どうしても最初の診断が気になります、卑しくも、大病院の脳外科医が、そんな見間違いをするだろうか、また、額のしわは どう説明がつくのか、現在は、この不安で一杯です。

☆現状。
顔の麻痺はステロイド剤の投与でかなり元に戻りました(3週間)ただ、薬の副作用か、ふらつきがあり、体に力がはいらない、 目にかすみがかかったような感じが続く、そんな状況です。 ちなみに、最初の病院で受けた血液検査の結果は、成人病を示唆するような数値は見当たらなかったと診断されています、 血圧は130−136、下が83−88くらいで安定しています。 お酒は少し飲むだけで、タバコはすいません。 額のしわの件と、脳梗塞があるのかどうか、顔面麻痺は脳からの赤信号ではないのか、気になっています、どうかよろしく ご診断ください。参考までに
、今回の麻痺は比較的軽かったようです、これも、中枢神経系の麻痺を暗示するようで いやな感じです、末梢神経系の麻痺のほうが、麻痺はひどいと聞きました。 以上よろしくお願いします。

Date: Wed, 27 Mar 2002 15:42:37 +0900 Subject:
「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

ご相談拝読しました。  私は以前、神経内科医として診療をしていたことがありましたので末梢性の顔 面神経麻痺の患者さんは何百人と拝見したことがあります。しかし、中枢性の顔 面神経だけが麻痺しておられる患者さんに実はお目にかかったことがありません。  末梢性に顔面神経麻痺だけが障害を受けると言うことは解剖学的に独立した神 経であること、ウイルスにしても限局した好みの場所であり得ること、その他の ためによくあることなのです。

 一方中枢性に顔面神経領域だけが障害されるとだけが麻痺することというのは 非常に起こりにくいことなのです。何故かというと中枢というとこの場合は大脳 になるのですが、大脳の組織は回りは全く同じような神経組織ばかりです。 もしも顔面神経領域に脳梗塞など何か病気があって中枢性の顔面神経障害が出て きたとすると、どうしても顔面神経領域以外の耳の神経や目の玉を動かす神経、 咽喉の奥や舌を動かす神経障害を伴ってしまうことがほとんどなのです。  

脳外科の先生でしたら顔面神経麻痺の診断をされる場合、咽喉の奥や耳の聞こ え具合など慎重に調べて下さったことと思いますが他の脳神経の合併がないかど うかはとても大切なことだからです。他の脳神経の麻痺が全く無ければほとんど の場合、末梢性の神経麻痺であり、中枢性の顔面神経麻痺の可能性は極めて低い と言えます。

 一方、中枢性の顔面神経麻痺と末梢性の顔面神経麻痺の区別の仕方に額のしわ の左右差を見る方法があり、これは学生用の教科書にも載っていたり国家試験に も写真付きで出題されたりする基本的なことなのですが、実は教科書に出て来て 医学生が習うほどには簡単なものではないのです。実際、末梢神経自身も真っ二 つに分かれているのでなく、真中を越えている部分もあり、左の末梢神経が額の 真中を少し越えた右の一部、真中に近い部分にも分布していて一部しわを寄せる こともあるのです。ですから、顔の右側も少ししわが寄ることもあります。

 その上、MRIを拝見させて頂かない限り断定はできませんが、もしも脳梗塞 で中枢性に右側の顔面神経麻痺が起こるとしたら左大脳半球の極めて限られた領 域にT1強調画像で黒く、T2強調画像で白く小さな変化が認められるはずです。 最初の脳外科の先生が指摘された「左右にちいさな白い引っかき傷のようなもの」 では理論的に考えにくいです。

診察もせずにメールのやり取りだけで私が診断や断定をすることは出来ませんが、 1.5テスラーのMRIはかなりの解像力がありますのでそれで「脳梗塞は認め られません」といわれたとしますとかなり確実性があります。  脳梗塞ではなくて脳腫瘍など悪い病気で中枢性の顔面神経麻痺が出ていたとし ますと今ごろは病気がそろそろ伸展して舌の動きが悪くなったり、めまいや耳の 聞こえが悪くなってきたり、頭痛や顔の痛みが出現しているころです。 順調な経過からみてもそういう中枢性の顔面神経麻痺は極めて考えにくいと言え ましょう。

また、たしかに中枢性顔面神経麻痺は他の神経症状で症状が覆い隠されて末梢性 の顔面神経麻痺ほど目立たないことが多いのは事実ですが、末梢性顔面神経麻痺 の程度は人によりさまざまです。何年も残ってしまう人もいらっしゃいますし、 数週間で全く治ってしまわれるかたもたくさんいらっしゃいます。  

なお、「大病院の医者は絶対に間違いをしない」などという考えを持っている 人たちがあまりにも多いのですが大間違いです。  実際国民の多くがそう信じていて大学病院などで医療事故、医療ミスなどが起 こる度に新聞やテレビで大騒ぎになるのですが、病院の大きさなどで、医者の技 術や人間性、ミスの発生頻度、院内感染の危険性などが決まったりするものでは 決してないことを付け加えておきます。小さな病院でも優秀な医師が居るところ もあれば、医療ミス対策や院内感染対策に一生懸命に取り組んでいて却って大病院 よりも安全なところもたくさんあるのです。逆に、

大学病院のようなところでも 対策が遅れているところもあります。銀行と同じく病院も消費者が賢くなって選 ばなければならない時代に入ったと言えましょう。 「大きな病院は良い病院」、「小さな病院は駄目な病院」と決めてかかるのは大 きな間違いです。 もうしばらく、注意深く様子を見られてどんどん病状が改善するならばもう心配 は要らないと思います。

以上、お答えとさせて頂きます。 どうぞ、お大事になさって下さい。

Date: Wed, 27 Mar 2002 17:06:01 +0900 Subject:
ご診断メール確かにいただきました。
足立先生、大変ご親切な、わかりやすい、ご診断をいただきましたこと、有難くお礼 申し上げます。 今後ともなにとぞよろしくお願い申し上げます。
とりあえず、メール受領の確認と、お礼まで。