
Date: Sun, 18 Aug 2002 11:12:52 +0900
こんにちは。お忙しいところ申し訳ありませんが、ご返答よろしくお願いします。どちらにご相談して良いものか、途方に暮れております。
私は患者の息子の妻です。私自身は患者と最近会っていないのですが、お話を聞いた事でお伝えします。
患者は****市在住、6*才、女性です。既往歴ナシ、受診経験は歯科と産科のみ。同居人は娘(夫の妹です)とその子供(患者にとっての孫です)の二人で三人家族。娘は現在無職で在宅しています。
私は**市在住で夫の仕事が忙しいため、患者とはお盆の帰省のときのみお会いするくらいです。
<経過>
昨年より見た目にわかるほど体重が減少してきた。倦怠感はこの頃よりあったらしい。
3ヶ月まえに風邪をひいてから、目にみえて腹部が腫れてきた。
2日前に夫が帰省して会った時の状況は・・・腹部が妊娠末期の頃ほど膨れている。腹水のようだ。下肢は以前と比べ3倍程にむくんでいる。
毛穴は開き、押すと水が出てきそうな感じがある。胸から上は骨が見えるほどやせており、風貌もすっかり別人になってしまった。
足の状況から歩行は介助が少し必要。トイレ、入浴は娘が介助している。食欲は依然と同様にあり、3食きちんと食べている。倦怠感が強く、すぐ横になってしまう。(寝る時は横向き)黄疸なし。発熱なし。疼痛なし。血便なし。
本人の訴えは倦怠感・口渇のみ。尿は回数は行っているが、量的には少ない様子。意識状態ははっきりしている。咳き込みがあり、胸部にも水が溜まってきているのではと夫は心配している。
昨年より病院受診を娘や親族が進めてはいましたが、本人は断固拒否。
最近の患者の状況より、東京に住む患者の弟も含め、親族が時間をかけ説得していますが受診はしたくないと言っています。
本人はこのまま家で亡くなっても構わないとさえ思っている様子です。
受診拒否の理由ははっきりと突き詰めておりませんが、おそらく医療不信(患者の夫が14年前に死去。珍しい病気だと色々、実験的要素を含んだことをされたらしい)・どこからか声が「病院に行くな」と言っていることらしいです。声が聞こえることは、患者の夫が亡くなった後からあったらしく、時々独語も聞かれてはいましたが、日常生活に支障はまったくありませんでした。対人関係も問題ありません。精神科の受診はありません。
夫も含め、周りの者は手後れになる前に治療を受けさせたいとの一心です。どうにか受診する方法はないかと探っております。
説得は何度も試みました。救急車で運ぶ方法も考えましたが、119番に連絡したところ本人の同意がないのでは無理だと断られました。
近くの総合病院に相談してみましたが、とにかく連れてきてくれれば対応するとの返事でした。
むりやり暴れるのを家族がおさえて連れて行くのはどうなんだろうと(可能かどうかも含めて)、色々情報は集めながら考えていますが結論は出ていません。保健所に相談することも考えています。往診も考えました。しかし、受診に直接結びつく方法は見付かっておりません。(本人は外部から人が来ても会わないと言っています)
もし、先生が同様のケースをご存知でしたら教えていただけたらと思います。
質問は以下の通りです。
○本人が受診拒否で、緊急に受診させるべき必要がある場合は何処に相談するのが良いのでしょうか。どうにか受診させる手段はないのでしょうか。
○精神科の絡みで強制的に入院させる事は無理でしょうか。
○夫は色々と病名を推測しています。これだけの情報で大変難しいと思うのですが、どういった病気が考えられるでしょうか。今後も在宅でいた場合にこれからの考えられる経過、注意点を教えていただけたらと思います。
お盆の帰省の際は、「やせてる姿を見られたくない」と私は患者に会えませんでした。
夫は母のあまりにも変わり果てた姿にショックを受けながら、どうしても助けたいという思いだけは強く持っています。
本当にお手数をお掛けしますが、わらをもつかむ思いでご相談致します。
よろしくお願いします。
Date: Sun, 18 Aug 2002 20:10:05 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。
メール拝読致しました。
ご家族の皆様大変お困りのこととお察し致します。
「見た目にわかるほど体重が減少してきた」とのことですので、癌などの内科的悪性疾患が隠れている可能性も高く、その上、既に手遅れになっていることさえ考えられますが、それでも出来るだけのことをしてあげたいというのがご家族の方々のお気持ちとお察し致します。
腹部の腫れは、柔らかく水を含んでいる様子なら、おっしゃられるように「腹水」かもしれません。輸血などを受けた経験がおありなら肝硬変も隠れていたのでしょうか、また、胃腸、婦人科系統の癌が肝臓に転移した結果、その他膵臓癌などであってもおかしくありません。
但し、黄疸が見られないことから肝臓はあまり関係しておらず、心臓が原因の心不全が原因の「腹水」も考えられます。
病院を受診することを断固拒否しておられて「このまま家で亡くなっても構わない」と言われるのはご本人の本心でありさえすれば、それはご本人の意思ですので、基本的には結果についてご本人がご自分で責任を取られる限り尊重してあげるべきと考えます。しかし、今後のことを考えるとご家族の方々の看護、介護も限度があるでしょうね。
なお、どこからか「病院に行くな」という声が聞こえて来たり「独語」もあるようですが、このようなお年で「精神分裂病(統合失調症)」の発症はまず考えにくいですのでむしろ「老年期幻覚妄想状態」の方が考えやすいです。男性に比べて女性に多い病気で、「精神分裂病」とは違って人格変化や思考過程の乱れも少なく、比較的良性の状態です。対人関係に問題の無いのはそのためと考えられます。
しかし、それだけでなく、病院受診の拒否など頑固で、非協調的なところはもしかしたら、「老年期人格障害」も一緒にあるのかもしれません。
「手遅れになる前に」というお気持ちはよく分かりますが、むしろ既に手遅れの状態も十分に考えられます。
さて、ご相談の「これからどうするか」という点ですが、ご指摘のように「保健所に相談」というのも良い担当者に恵まれさえすれば大変良い結果が得られることも有り得ますのでまずは、是非ご相談されるようお勧めします。
「暴れるのを家族が抑えて連れて行く」というのは、患者さんご本人のお気持ちと、そんなことをして何になるのかということを天秤にかけて考えると決してお勧めできる方法ではありません。良く相談に乗って下さる「かかりつけ医」に往診をしてもらって睡眠薬などを処方してもらって眠っている間に精神病院の閉鎖病棟に入院させるなどというのも、入院させるという点では一つの方法ではありますがご本人の納得なしにそういうことをするのはさまざまな危険もあり、法的にもかなりの問題があります。
では、以下、ご質問項目に沿ってお答えします。
1.ご指摘のようにまずは保健所で相談されるのも一つの方法ではあります。
2.精神病などで入院が必要なのに患者さんご本人の了解が得られず、従って「任意
入院」が困難な場合は「精神保健福祉法」が規定により、保護者の同意に基づく「医療保護入院」を考慮することになります。
「医療保護入院」の要件には「精神保険指定医」の診察と保護者の同意の両方が必要であり知事への届け出も義務づけられています。
法律の運用ですので担当医の計らいによりいろいろな場合が考えられますがよほどのことの無い限り、ほとんどのところでは今回のような場合、かなり難しいでしょう。
3.肝硬変、消化器系・婦人科系統などの悪性腫瘍、心不全、膠原病などを含めてさまざまな病態の可能性があります。
なお、お近くに「在宅ホスピス」を手がけているところはございませんでしょうか?
「在宅ホスピス」とは、余命が6ヶ月以内と考えられる段階ととらえれれている患者さんをご自宅で看取られるのを援助しようという試みです。
なかなかうまく行っているというケースは少ないのですが熱意を持って取り組まれている医師、ケースワーカー、在宅介護センターなどがもし近くにあればかなりしっかりと取り組んでくれる可能性もあります。保健所などで把握していることも多いので一度相談してみて下さい。
しかし、そういう理想的な取り組みがうまく行っているというのは全国的にも数少ないです。
いずれにせよ病気はかなり進行している可能性が高いですのでそういう可能性も含めた上でご家族の皆様で十分にお話し合いになるようお勧めします。
以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。
Date: Tue, 20 Aug 2002 04:35:53 +0900
Subject: RE: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。
足立先生 様
早速のご返答ありがとうございました。
夫と共に何度も読み返しております。
夫も少しずつ現状を受け入れてきている様子です。
今後、進展等ありましたらご報告をと思っております。
有り難うございました。