質問・回答(0290)


「O型ですがAB型の男性との結婚は止めた方が良いのでしょうか」

date: 09 Dec 2002 16:54:44

血液型がAB型の男性とO型の女性との間に生まれる子供には障害が出やすいというのは本当でしょうか。
昔学校の授業で聞きかじったことがあると何人かの知り合いが言っていました。実際にこの組み合わせで生まれた子供が斜視であったり、という例もあるようです。なぜこのようなことが起こるのか。遺伝学上どのような問題があるのか。障害が出るとすればどのくらいの確立で発生するのか教えてください。

実は私は**歳の独身女性(O型)で、今結婚してもいいかなと思う男性(AB型)がいます。これから子供をつくるにしてももうすでに高齢出産になってしまいますし、少しでも危険を避けたいと思ってしまいます。
子供に影響が出るのは困ります。結婚は止めて、もっと相性のいい人を探した方がいいのかなどと真剣に悩んでいます。
医学上の専門の立場からの回答をいただきたく、どうぞよろしくお願いします。


Date: Sun, 15 Dec 2002 21:54:49 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

お友達が学校の授業で聞かれたお話とはきっと「血液型不適合妊娠による新生児溶血性貧血」のことでしょう。

母親とその胎児の血液型の組み合わせにより新生児の赤血球が壊れてしまい生まれた赤ちゃんが黄疸や貧血を起こすことがあります。
これを「血液型不適合妊娠による新生児溶血性貧血」と言うのです。

これにはRh(アールエイッチ)血液型によるものとご心配になっておられるABO式血液型によるものがあります。

妊娠、分娩時に起こるいろいろなことで傷などから胎児の赤血球が母体にはいると母体はその血球に対する抗体を作ります。
この抗体が胎盤を通過し、赤ちゃんの赤血球を攻撃して溶血を起こすことがあるのです。

O型の母親にA型またはB型の赤ちゃんが生まれる時に稀に起こることがあるのでそういう組み合わせの赤ちゃんが出来る可能性が最も高いのはAB型の父親だからそういうことをお友達は言われたのではないでしょうか?

確かにO型の父親との間ではO型の赤ちゃんしか出来ませんのでそういう問題は起こりません。A型やB型の父親との間では50%すなわち2人に1人の割合で血液型不適合の組み合わせの赤ちゃんが出来ます。AB型の父親では100%生まれた赤ちゃん全員がそういうことになります。

こういう組み合わせの妊婦さんはそれこそたくさんいらっしゃるわけですがABO式血液型による「血液型不適合妊娠による新生児溶血性貧血」はほとんど問題になりません。

最も問題になるのはRh血液型の場合です。
無治療の状態でRh(-)のお母さんがRh(+)の赤ちゃんを産むと、お母さんの血液中にRh(+)の赤血球を攻撃する抗体が準備されることがあり、このお母さんが次にまたRh(+)の赤ちゃんを妊娠した場合、 胎内にいる時から赤ちゃんの赤血球はお母さん由来の抗体で攻撃され、 胎児貧血を起こし引いては胎児水腫や胎内死亡、出生後重症黄疸などが起こるのです。
しかし、実際にはRh(-)のお母さんがRh(+)児を分娩した場合、分娩後72時間以内(お母さんが抗体を作り出す前)に 母体にRhIgを注射しますので、母親の抗体産生はほぼ100%阻止できます。

ABO式血液型不適合ではほとんど問題になることはありません。

もう少し詳しく言いますとABO式血液型不適合が起こりうる理論上の組み合わせは母親ー胎児がO-A,O-B,A-B,A-AB,B-A,B-ABという組み合わせで起こりうるのですが、実際に新生児溶血性起こすのは O-A、O-Bのごく一部です。

Rh型不適合妊娠に伴う溶血性疾患が第1子に起こることは希であるのに対し、ABO不適合妊娠に伴う溶血性疾患は第1子でもよく経験されます。

しかし、ABO式血液型では、実際には貧血の程度は軽く、高ビリルビン血症の起こるなどの症状の出現は5%以下に過ぎません。ほとんどは無症状あるいは生理的新生児黄疸が少し強いと思われる程度です。

血液型がO型の妊婦さんはそれこそたくさんいらっしゃいますしその中で赤ちゃんがO型ではないという組み合わせの人たちもたくさんいらっしゃってそのほとんどが健康な赤ちゃんを産んでおられるのです。

出産、育児にはいろいろな要因である程度の危険は伴うものと覚悟はせねばなりませんが、その中で「ABO式血液型不適合による新生児溶血性貧血」というのは危険性の低い部類に入ります。しかもこれが発生する頻度も大変少ないものなのです。

可能性の問題ですので絶対に危険が無いとは申し上げることは出来ずこの場で私が保証をするというのは無理なことではあります。従って上記を参考にご自身でご判断をされる必要がありますが、メールに書いておられるように「少しでも危険を避けたい」としてこれを根拠に「もっと相性のいい人を探そう」とするのはかなり極端な対応の仕方であるということだけは申し上げておきたく思います。

あたかも「北海道の人と結婚するとその分ヒグマに襲われる可能性が高くなるから止めておこうかしら」とか「東海地方の人と結婚すると東海地震に合うかもしれないから怖いわ」とか「都会の人と結婚するとそれだけ交通事故に合う危険が高くなるわけだからやめておこうかしら」とか引いては「お金持ちと結婚すると子供が誘拐犯に狙われる可能性が高くなるから止めておこうかしら」というような考えと通じるようになってしまいます。

確かに道理ではありますが如何なものかと思います。
理屈が合っているかどうかは別にしてたぶん上のようなことを根拠に結婚を取りやめるような人はいらしたとしても少ないのではないかと思います。

なお、占いではいろいろとあるでしょうが医学的には上記の点以外に血液型での結婚の相性で問題となる事象は現時点では明確に証明されたものはありません。

以上、今回のお答えとさせて頂きます。
お幸せになられますよう心からお祈り申し上げております。


Date: Mon, 16 Dec 2002 14:41:26 +0900

血液型不適合妊娠についての件

返信メール届きました。早速誠実なお答えをいただきまして、本当にありがとうございました。ずっと悩んでいた心の中のもやもやが晴れ、前向きにがんばっていけそうです。
心より感謝もうしあげます。