質問・回答(0294)


「タミフルや輸血は胎児に影響心配無いでしょうか」

Date: Sat, 15 Feb 2003 23:59:07 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お願いします

以前ご回答頂いた際のアドレスにメールさせていただきます。
妊娠中に服用した薬の危険性と、前回の分娩異常の今回におよぼす影響についておたずねします。
12月14日から生理、1月16日にインフルエンザと診断され、17日、18日の朝と夕、タミフルを1カプセルずつ服用してしまいました。生理は28日周期です。
産婦人科の医師に危険性を尋ねたところ、影響があったら、着床してないから、いま妊娠してると言うことは、大丈夫ということですと言われました。ところが、いろいろ調べると、4週からは胎児に薬の影響が出る時期だし、タミフルと言う薬も妊婦に禁忌ではないものの、新薬ということなので心配です。
また、実は、去年の秋に、たいばん早期剥離で緊急帝王切開をしたばかりです。上の子(6歳)は34週の早産で、去年の妊娠中も早産の傾向があったため1ヶ月以上入院中だったにもかかわらず、剥離が起き、子供は低酸素脳症になってしまいました。
わたしも輸血されるほどの出血でした。非常に落ち込みました。今回の妊娠は予定外の事で、どうしようか迷っています。

質問を整理します
1)服用したタミフルの影響について
2)帝王切開から期間があいていないことの母体への危険性はないのかどうか
3)今回も早期剥離の危険はないかどうか。あるとしたら、避けられるかどうか
4)輸血による未知のウイルス等の胎児への危険性はないかどうか

42歳の高齢です。第1子出産後、2度流産、その後去年の出産をしました。12月の生理が出産後初の生理でした。


Date: Fri, 21 Feb 2003 13:03:47 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

当ホームページを何度もご利用ありがとうございます。
大変微妙な問題ですのでご心配のこととお察し申し上げます。

今から申し上げても遅いと思われるかもしれませんが今後のこともありますので書いておきますが妊娠中に薬を服用することはよほどのことが無い限り避けるべきです。
ご本人が気がつかなくて妊娠をしてしまっていることも多いですので私は妊娠可能な年代の女性に薬をお出しするときには大変慎重にし、風邪などでは出来れば薬を使わないで治すようにお勧めしています。たとえ可能性が低くても赤ちゃんに何か影響が出るのではないかと心配をしながら妊娠期間中を過ごすこととに比べてみれば今かかっている風邪が早く治ることなどは大変重要性が低いことだからです。

若い女性の方々は日頃から極力薬を飲まないように習慣を付けないでおくことは大変重要なことです。

それではご心配になっておられる点につきご質問事項に添ってお答えします。

> 1)服用したタミフルの影響について

A型のインフルエンザだけに効果のある「塩酸アマンタジン(「シンメトレール」などという商品名で販売されています)」は妊娠をしている女性が使うことは赤ちゃんへの影響がある程度可能性があるのではとされ、「禁忌(決して使ってはならない)」とされています。

しかし、「タミフル」については動物での実験でも赤ちゃんに影響をするという結果は出ていませんし、人でのそういった報告は現時点では公にされたものの中には見当たりません。
妊娠した人に対してたくさん実験をして「安全です」と公言するわけにはいかないので書類上は「治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されています。

薬に対しての安全管理の体制が格段と改善されてきていますので、こういうふうに記載がされていて何か影響が出たとあとで分かることは最近では大変少なくなってきています。もしかしたら例えば交通事故に会うなどという可能性の方が実際問題高いくらいかもしれません。

我々さまざまな危険の中で何とか少しでも安全なようにと過ごしている訳ですが「タミフル」による影響が最も危険かというと今のところそういう状況では無さそうです。

なお、妊娠中に全く薬を使わないで過ごされた健康な若い女性の場合でも母子とも健康でお生まれになる可能性は100%というわけには行かず、おおよそ2%くらいの確率で心配しなければならない様子が赤ちゃんに現れることはあります。出産年齢が高くなればこの確率も高くなることは既にご存知のことかと思いますがこういう種類のある程度の危険性は人間として誰しもが持つ宿命の一つではありますので心の片隅に置いておかれるのが良いでしょう。

誰もが100%絶対安全に生きて行くということはむしろ有り得ないのが実情なのです。
ですから最も危険の可能性が高いものから対応をしていく他はありません。ご指摘のタミフルの危険性は「全くない」とか「絶対大丈夫」と言えるものでは確かにありませんが「可能性があったとしても大変低いものでむしろ万が一あったとしても諦めるべきほどである。」とか、究極的に考え詰めると「可能性が無いとは言えないがそこまで心配していては交通事故などもっと可能性としては高い、生きていく上での他の危険性のことまでを考えるとむしろやりきれない」というのが現状でこういう危険性はむしろ人間として生きていく上での宿命と言わざるを得ません。

> 2)帝王切開から期間があいていないことの母体への危険性はないのかどうか

期間が開いていないこと自体はそれほど問題にはなりません。
前回と同じようなことにならず、妊娠経過が順調であり、前回の帝王切開の切開部分が適切であり、軟産道強靱が無いなどといういくつかの条件が合い、自然陣痛が順調に発来すれば場合によっては経腟分娩を試すことが出来ることさえあります。

> 3)今回も早期剥離の危険はないかどうか。あるとしたら、避けられるかどうか

常位胎盤早期剥離の反復率は5〜10%とされ、十分な管理体制が必要です。前もって予防して避けるということは出来ませんので出血、腹痛など早急に病院へ行けるようにしておきます。

> 4)輸血による未知のウイルス等の胎児への危険性はないかどうか>

現時点で分かっているウイルスについてはほとんど回避出来ますが、それでも検査に漏れる場合なども稀にはありますし、輸血により他人の血液中の未だ人類が発見していない未知のウイルスに感染するという可能性は常に残っています。
輸血も安易に行うのではなく、妊娠中の薬物内服と同様に出来るだけ避けたいもので命にかかわるような場合の最終的な手段とすべきです。

以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。


Date: Sun, 23 Feb 2003 23:01:20 +0900
Subject: Re: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

メール、確かに頂きました。いつもながら、本当にごていねいなご回答ありがとうございました。週明けには、****せていただきます。
実は、予想外の事が起きてしまい、メールを頂いたお知らせが遅くなって申し訳ありませんでした。先生にお尋ねしたすぐ後の診察でけいりゅう流産であることがわかり、入院して掻爬になりました。前回の診察の時には無事で、いろいろ悩んだものの、家族の後押しも有り、心配はあるけれどとにかく産む方向に向かっていったのですが、今回の診察で心拍が確認できず、残念な結果になりました。気持ちと裏腹の方向にばかり物事が進んでいくようで、本当に人生何が起きるか解らないなあ、と言う気持ちです。

次の妊娠は考えてはいませんが、もし、運良くできれば、先生のご回答を肝に銘じて、少しでも心配の無いようにしたいと思います。
輸血に関しては、してしまった以上、もうどうしようもないので、私自身に、数十年後、何かの病気が出るかも、と気にはなりますが、もう、その時はその時、と、割り切るようにしたいと思います。
一人目の子供を妊娠したときは、早産ではありましたが、とりたてて大変なことではなかったので、妊娠すれば、普通に生まれるような気持ちになっていたのがとんでもない間違いであることを痛切に感じてます。 出産して、おめでとうという言葉が、どんなに重いか・・・人間100%安全と言うことはないと先生がおっしゃる意味が、いまは分かります。

子供がいる以上、わたしの命が無事であることを感謝して、なるべく健康でいられるように努力しなければ、と思います。
お忙しいところ、本当にどうもありがとうございました。