
「不明熱に必要な検査」Subject: 母の体の不調について
Date: Fri, 14 Mar 2003 09:09:32 +0900
5*歳の母の体の不調について相談させていただきます。母は喘息の持病はありますが ここ5年近く発作もなく 3年ほど前に見つかった子宮筋腫があるだけで 体力も2*歳の私よりあるくらいいつも元気でした。
経過
昨年8月頃 眼が疲れるようになる。
9月 急に39度の熱を出し近所のかかりつけの内科にいきましたが風邪との診断しかし解熱剤を飲んで37〜8度に下がりまた39度にあがるという状態が20日ほど続きました。
10月 その後胸のあたりのしびれ 圧迫感と左腕のしびれを感じて県立病院に行き血液検査 レントゲンをとりましたが以上はなく血流を良くする薬を出されました。その後 しびれ 圧迫感は感じなくなりました。熱は37〜38度
11月 熱が引かず辛いので 知人を通して別の大きめの病院で血液検査 腹部エコー 胃カメラ 胸部レントゲン で 検査をしてもらいました。
結果 胃に小さなポリープがありましたが 「特に心配なく様子をみてとりましょう」と言われました。
食道の入り口にカビ(カンジダ菌)がはえている。薬 フロリードゲル経口(1日4回10日分)ザンタック錠75(1日2回10日分)をもらいました。
眼の疲れ 痛みがひどくなり(特に左目)眼科へ行きましたが以上はありませんでした。吐き気も時々今年2月 本人がドライマウスを疑い歯科へ 診察後 軽い症状が出ているようなので薬をもらっています。
3月2日 一日中左目に膜が張った感じで見えにくく 立ち上がった時左目だけ暗くなって1・2分見えない状態。視野は変わりなし。(この日1日のみの症状)
現在も 熱は37〜38度で 37度の時は少し楽になり動けるようですが すぐ38度になり 辛いようです。何か 大きな病気が隠れているのではと 不安です。精神的にはとても強い人なのですが 自分の体調が把握できず 辛いようです。一見若々しくシャキッとしているせいか どの病院でもいまひとつ親身になってもらえません。母の性格上 症状に対して気のせい 気にしすぎなど考えられません。先生の意見をお聞かせください。
何か病気の疑いがあるでしょうか(特に異常なくこの様に熱が続くものでしょうか)他に受けておいた方がよい検査がありますか。
母の両親と兄 3人とも癌を手遅れの状態で発見して亡くしています。同じ様なことにならないようにしたいです。
他の方のご相談を胸の詰まる思いで読ませていただきそして先生の誠意のあるご回答に「こんな方がいらっしゃるのか」と感動しました。
お忙しいと存じますが よろしくお願いいたします。

Date: Fri, 14 Mar 2003 23:19:34 +0900
メール拝見させて頂きました。
結構高い熱が昨年の8月頃から続き、現在も37度から38度の発熱が続いているご様子で、拝読していましても心配です。
通常の症状に対しては最も可能性の高い病気に対する検査をせいぜい数件行って病気の診断に持って行く能率の高い診断方法が勧められますが、お母様のような場合にはこれだけの発熱がかなり長い間続いていますので、ありきたりの診察だけで「様子を見て行きましょう」というのは少なくとも私は安心していられません。
だからといって体に対して危険な検査を闇雲にするのではなく、まずは詳しくお話を聴いて頂き、それから徹底的な診察が必要です。
患者さんやご家族の方々にとってはたいしたことではないと思われていて医師に話をされずに見逃される病気も多いものです。
例えば、発熱の出る数週間前に東南アジアに海外旅行をしていたのを医師に話さず、また医師からも尋ねることなく原因不明だった高熱が実はマラリアであったことがあとで分かったり、原因不明の高熱と咳で診断に難渋していた患者さんが良く聴いてみると家で飼っていた桃色インコが死んだあとの発病で「オウム病」という病気による肺炎であることが分かったりすることもあります。
最近、公園の鳩に餌をやりに行くことが多くなったということを聞き出したために熱の原因が鳩の糞による「クリプトコッカス髄膜炎」という大変怖い病気であることが判明するきっかけになることもあるのです。
原因不明の発熱であっても担当医師がこのように少し詳しくお話を伺うだけで診断のヒントになることが結構あるのです。
特に、最近変わったものを食べたとか、旅行をしたとか、外国から輸入された健康食品をこっそりと飲んでいるとか、少しでも日常と変わったことをしていることは医師に必ずお話下さい。また、これだけの発熱が出ている人に対しては医師からもかなり積極的にお伺いがあるはずです。もしも、担当医師がこういうことをあまり熱心に尋ねて来られないようであれば別の医師にかかられた方が良いでしょう。
次に丁寧に診察をしてもらうことです。
眼科にもかかられたことがあるので大丈夫とは思いますが目の奥の脈絡叢というところは血管が豊富であるために血液を通じて全身の臓器から病原体が運ばれて来ますのでこっそりと特に真菌(いわゆる「カビ」のことです)などが繁殖していて目の異常や発熱が出ていて眼科の医師以外には診断が付かずにいることもあります。少なくとも丁寧に眼底鏡で眼底の診察が必要です。
眼底の検査は眼科医によるものが最も確かではありますが脳外科医、神経内科医にはある程度見ることが出来る医師も多いですし、一般内科医でもしっかりとした訓練を受けた医師は検査は可能です。
内科でも「項硬直(うなじこうちょく)」という首の硬さの診察はされていると思います。熱の原因には髄膜炎という病気がありますので必ず一度は診ておいてもらうべきです。お母様のように数ヶ月も発熱が続くという場合には「結核性髄膜炎」、クリプトコッカスやアスペルギルスなどというカビによる「真菌性髄膜炎」、癌細胞による「癌性髄膜炎」などゆっくりと進行してくる髄膜炎ではないことも確認しておく必要があります。万が一首が硬かったりすれば「ルンバール」と言って背中から脊髄液という水を採る検査も場合により必要になってきます。
要はこういうことも頭の片隅に入れて担当医師が診療をして下さっているかどうかが問題です。
ちょろちょろとおなざりに胸に聴診器を当ててもらうだけではなく、おなかや背中など、広く裸にしてもらって丁寧に診察をしてもらいましょう。
そういう努力をすることにより、長い間発熱の原因不明であった人がおなかの皮膚が赤くなっていることを見つけてもらって熱の原因が「腸チフス」によるものと初めて判明するきっかけになることもあります。
腸の症状がはっきりとせず、むしろ特徴的な症状である「腸チフスの薔薇(バラ)疹」で発見されることもあるのです。但しこれはかなり経験ある優秀な医師でないと見逃されることも多いですので要注意です。
調べてもらうことはこの他にも山ほどあり、全てをここでは書ききれません。
こういった事細かな診察の結果必要な検査を絞り込みさらに詳しい必要な検査を進めてもらうことが必要なのです。
ただ闇雲に「下手な鉄砲も数撃てば当たる」式に無闇やたらにCTやMRIなど、ましてや体に危険な検査をたくさんされるのも患者にとっては困りものです。万が一危険な検査による事故で何かあれば元も子もなくなるからです。まずは丁寧な問診と診察をして下さるお医者様にかかられることが重要です。その上で必要な検査を検討してもらうのが良いでしょう。
長期に続く高熱の原因としては「膠原病」の可能性も頭の片隅に入れておくべきです。
御担当の先生が上記に照らし合わせてちゃんとやって下さっているのかどうか、ご家族としてもご判断なさる必要があると考えます。
なお、お母様のように原因不明の高熱が長く続く症状を「不明熱」と言いますが最近、例えば京都大学など大きな大学病院には「総合診療科」という科が出来てきていますがそういうところでは「不明熱」などに対して非常に適切に診てくれることが多くなりました。そういうところでもしも優秀な医師に巡り合うことが出来て診てもらうと大変適切な対応をしてもらえる可能性が高いです。
上記のことを参考にされて現在かかられているお医者様が適切に対応して下さっているようでしたら引き続きおかかりになり、もしも不十分だとお考えの場合は「総合診療科」など早めに一度他院にかかることも検討されてはとお勧めします。
以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。