質問・回答(0302)


「癌性髄膜炎の診断について」

Subject: 癌性髄膜炎の診断について
Date: Mon, 9 Jun 2003 13:03:44 +0900

大変お忙しいところ申し訳ありませんが、 67歳の母のことでご相談させていただきたく、別送にてメールいたしました。 まず、経過から説明いたします。

5年前に左乳癌で温存術を受け、2年前に局所再発がみとめられ 左乳房を切除しました。 今年3月に右側の鎖骨と腋のリンパが大きくなり、 右乳房内に再発を告げられました。 4月から外来で点滴の抗がん剤投与を予定していましたが、 4月14日に突然激しい頭痛、吐き気、臀部の激痛を訴え 3日間なにものどを通らず、主治医がいるところの総合病院に出向き ブドウ糖等の点滴と脳CTを受けました。

CTの結果問題無いとのことで家に帰り、その後は全く元気をとりもどし 次の週の4月22日に外来で1回目の抗がん剤の点滴を受けました。 その後、リンパの腫れが急激に減り、ほとんど触れなくなり、 抗がん剤の副作用もなく、気分良く過ごしていたのですが 3週間後の5月13日に2回目の抗がん剤を点滴した後から 気分がすぐれず、食欲も減退してきました。

抗がん剤の副作用と思い込んでいたのですが、 5月21日に再び、頭痛、吐き気、臀部の激痛が起き、 その日の夜に入院しました。 その時は吐き気止めを入れたブドウ糖の点滴と痛み止めの座薬で 症状は一旦おさまり、退院という話もあったのですが 3日後に再度同じ症状が起こり、痛み止めの筋肉注射、座薬、で しのぎました。(ほとんど効かずに苦しみました)

26日に整形外科で検査したところ、神経を圧迫しているヘルニアなどは 認められないとのことで、臀部の痛みを取り除くために 神経ブロックの注射をしていただいたのですが、2日ともたず、 30日に再び神経ブロックの注射をして、幸いいまのところ 臀部の激痛は治まったままです。

このころから、入院してからじょじょに現れていた幻覚がひどくなりました。 6月4日に脳の造影CTと、神経内科の先生により骨髄液の検査をしました。 その結果、6月6日に主治医より「癌性髄膜炎」との診断を受けました。 主治医の説明によると、髄液の中に癌細胞があるということ、 それが骨髄の中に付着して増殖し、脳ヘルニアを起こし呼吸器系を圧迫すれば 1か月ほどで命に関わるということ、骨髄の中に抗がん剤を入れる方法は 効き目もなく、副作用がひどいのでやっていない、すなわち治療方法は 無いとのことでした。

現在の母の容態は、日によって違い、 吐き気がなく、ほんの少しでも食べ物が入る日もあれば 一日中胃液を吐いている日もあり、 ずっと眼を閉じてうつらうつらとしている日もあれば 朝からはっきり眼を開けて幻覚で見えるものをしゃべり続ける日もあります。 話のつじつまも合ったり合わなかったりの繰り返しです。 新たな症状としては目まいがひどいようです。

主治医からは、2日前よりステロイドと胃液抑制剤の錠剤が出されました。 長くなりましたが、以上が今までの経過です。

質問と致しましては
1.本当に治療の手立ては全くないのでしょうか?
   インターネットなどで癌性髄膜炎の症例が載っていたなかで化学療法でチオテパ、シタラビン、プレドニゾロンという薬剤を使い髄液に異型細胞が見られなくなったとの例もあったので望みを捨てきれません。      
   また、最近癌に効果があるといわれているサリドマイドは、 この場合には効き目はないのでしょうか。

2.4月14日に初めて症状が現れてから、1月程軽快していたことを先生はどう思われますか?
  この先も同じように症状が消えてしまうことを願うばかりです。

3.ベッドの上半身にほんの少し傾斜をつけると調子が良いように思いました。   脳圧を下げるために、効果があると思われますか?

4.ほとんど口から栄養を摂れない状態なのですが、輸液だけで大丈夫なのでしょうか?体力が心配です。
  主治医に質問したところ、あまり栄養を摂ると、かえって身体に負担になってしまうとのことでしたが。

質問としては以上ですが、どんな些細なことでも教えていただければ たいへん嬉しく思います。 何卒、よろしくお願い申し上げます。

Date: Mon, 09 Jun 2003 22:44:51 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

「癌性髄膜炎」のお母様に何とかして差し上げたいとのお気持ち
よく伝わって参ります。

神経内科の先生より受けられた検査は「骨髄液」の検査ではなく、たぶん「ルンバール」という「脊髄液」の検査ではないかと思われます。

以下、ご質問項目に従いお答えしていきます。

1.インターネットで随分と詳細に検索されていますね。
インターネットで探された「チオテパ、シタラビン、プレドニゾロンを使い髄液に異型細胞が見られなくなったとの例」は確かにある病院の検査部からの学会報告であるのですが、実際に患者さんを診察していた医師からの報告が専門の医学雑誌などでは見当たらず、そんなに良い効果があるのであれば、医師からの報告もあるはずのところどうしてなのか分かりません。

大阪府立成人病センターの中川秀光先生たちのグループからはシタラビンとメソトレキセートを用いて13人の癌性髄膜炎の治療をしたところ良い効果があったとの報告も何回かされていますが、その後他の医師が同じ治療法をしてみて良かったという報告はされていません。

普通、新しい良い治療法の場合、誰が試してみても効果があるようであれば次から次へと報告が重なるものなのですがそういう意味から何とも言えません。

なお、乳癌に対してサリドマイドが効果があるという明確な結論が出たという所見は無いようです。

藁をもすがるお気持ちは理解出来ますが誰しもが認める治療法は無いというのが実情です。

2.髄膜の中は髄液の流れによりちょっとしたことで症状の変化が起こるようです。癌性髄膜炎の臨牀症状が不安定であるのはこのためではないでしょうか。
最も危険なのは「脳ヘルニア」と言って頭蓋骨の一番下のところで脊髄液の流れが止まるとともに脳がずれ込んでくる場合です。呼吸などが止まることさえあります。

3.そうですね。脳圧亢進による頭痛、吐き気、などが頭を高い位置にすることにより軽減することは日常しばしば経験することです。2.でも述べた「脳ヘルニア」さえ起こさなければ取り入れても良い方法でしょう。

4.輸液が「中心静脈栄養」と言って首の下や足の付け根などの太い静脈から栄養価の高い点滴を入れているのでしたら体力は保たれますが、手足の先などからただ単に静脈へ点滴をしているだけでしたらやせて行くばかりになります。
しかし、全身の栄養が保たれると癌細胞の活動も高まることがあり、なかなか判断の難しい点もあります。

以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。

Subject: 返信ありがとうございました
Date: Sun, 15 Jun 2003 10:34:43 +0900

足立先生、先日は相談にのっていただいて、本当にありがとうございました。

癌性髄膜炎と診断された母ですが、一昨日の脳のMRIでは、いまのところ脳の異常はないとのことでほっとしております。
とはいえ、意思の疎通も難しい状況ではあります。
このまま、髄液中の癌細胞が消えてしまうというみんながあっと驚くようなことが起きたら良いのになぁ、などと思いつつ、毎日家族で付き添っております。