質問・回答(0314)


「手術後、痺れその他の弊害で悩んでいます」

Date: Fri, 26 Sep 2003 09:12:32 +0900

5*歳 自身のことでご相談します。

今年始めより左肩下、肩甲骨あたりに傷みを感じはじめ、整形外科医院で診てもらい2週間ほど薬、傷み止めの注射、電気をあてたり等の治療を受けましたが改善せず、首のレントゲンを撮ったところ多分首からきていると思うから***病院の整形外科に行って診てもらって下さいと紹介状を書いて下さいました。

1月下旬に、その病院でMRIを撮り、やはり頚椎が原因だといわれ入院してブロックを受けました。それが2月の7日でしたが効果は全くなくて後は手術しかないということを主治医の先生から言われ、かなり肩の傷みが辛かったこともあり、そのまま5日後に手術を受けました。

加齢からくる「頚椎症性神経根症」で、圧迫しているところを広げる一時間半位の手術であるとの説明でした。
その時点での自覚症状は、肩甲骨の痛みが激しいのと中指の先だけが少し痺れた感じでした。

ところが手術後すぐに、全く何ともなかった薬指の痺れと根元辺りがつったような違和感がありました。
翌日からは日一日とますます中指、薬指、小指、そして手の平へと痺れがひどくなる一方でした。小指は意思と関係なくふらふら動くような症状も出てきました。
肝心の肩甲骨の痛みは、じっと寝ていれば傷みは和らいでいましたが、手術後3週間くらい経った頃に2回ほど手術前以上の何ともいえない傷みが襲い、傷み止めの座薬も効かず、一晩中辛い思いをしたりもしました。

良くなるどころか逆に日毎にひどくなる一方なので先生にはその症状を訴えるのですが、指は普通に動くし、力も入るし、麻痺をしているわけではないし、手術には問題ないと言うニュアンスの言葉しか返ってきません。そして、すぐには良くなるものでもなく時間がかかるという返事でした。その後MRIも撮りましたが、「これといって問題はないし、痺れがひどくなっていると言っていることがわからない」という風に言われ、薬の処方と、指が固まらないようにしっかり動かしなさいといわれるだけでした。

結局づるづるとそのような中で病院には1ヶ月近くいましたが、それ以上の治療も期待できず、退院せざるを得ない状態で3月半ばに退院しました。
主治医の先生には不信感しか残らずその後は通院していません。

退院後も痺れの範囲も、強さもひどくなる一方でした。

**にいる息子から良い先生を紹介してもらえそうだから一度診てもらったらどうかというのでレントゲンのコピーと紹介状を書いてもらい4月の末に行きました。
MRIも又撮りましたがその先生には「これといった異常もみられない、日常生活もできている、手術に立ち会ってもなく内容もよくわからないので、もう一度手術担当の先生に診て頂いたらどうですか」と言われわずかな希望を持って行ったのですが帰って来ざるを得ませんでした。

5月半ばからは少しでもよくなるものならと思い、週二回近くの整形外科医院で電気治療と薬との治療を3ヶ月受けた結果、同じ市内にある大学付属病院に紹介状を書いて頂き、この18日に、付属病院でもMRIを撮ることになりましたが、結局「手術はちゃんと出来ていると思いますよ」ということと、他に検査の方法もないとも言われ28日分の薬が処方されました。(それまで飲んでいた薬と同じ種類のノイロトロピン錠と、メチコパール)

退院後7ヶ月近く経ちますが、現在の状態は常に肘から下の痺れ、手首から手全体、特に指、指先は一層ひどくびりびりした痺れというか(むしろ傷みに近い)がかなりひどいです。
それに伴って首の締め付けや、肩甲骨の痛みも増す一方です。
首をほんの少し上下左右に動かしても左首がジャリジャリと音がするようにもなり不快です。
又、3ヶ月前あたりから朝や夜中に目が覚めた時しばらくの間右手が痺れてしまっていることがあり、最近はそれが頻繁におこります。

**の総合病院でも医大付属病院でも診察を一応受けましたが、先生から診察結果をそのように説明されれば患者としてはそれ以上のことは聞けませんし、他ですでに手術を受けたものはもうどうしようもないのかと、先生の対応で強く感じ、悩んでいました。

相談するところもなく、あきらめつつも反面、このような症状が続いているのには何かしらの原因があるはずでしょうし、今のこの状態を診て頂ける信頼できる先生もどこかにいらっしゃるのではないかと言い聞かせつつパソコンを動かしていて足立先生の「病気個別相談室」に出会いました。
今の心情を聞いて頂きたくつい長くなってしまいました。
お忙しいのに申し訳ありません。

ご相談したいのですが
原因としてはどのようなことが考えられるのでしょうか。
私の場合のように手術後に現れたこのような症状は指が動かない、力が入らない訳でもなく、検査結果に出るでもなく目に見えない感覚的な当人にしかわからないもので手の打ちようがないのでしょうか。
(ずいぶん進行し続けているのですが)
また、ずっと飲み続けている今の薬はこのまま続けたほうが良いのでしようか。
(今のような状況の中では無駄なような気がしてならないのですが)
続けて、かえって他の体に害を及ぼすような心配はないのでしょうか。

そして、
質問・回答のぺーじを拝見していて(0271)の方のケースに似通ったところがあると思いました。
先生の回答の最後で、脊髄の専門家で、遠く県外からも患者さんが来られるような名医でいらっしゃる先生を紹介されていましたが、私にもご紹介願えないでしょうか。
二つの大きな病院で受診して同じような結果でしたので、又今度も同じ思いをするのではと不安で臆病にもなっているのですが、でも一度診ていただけたらとも考え迷っているのですが。

もしも、診ていただけることになった場合、手術を担当した先生の紹介状が必要なのでしょうか。
紹介状と写真のコピーはすでに一度書いてもらい3月に大阪の病院を受診した際そちらに渡してあります。
もう一度新たに書いてもらえるものなのでしょうか。

ご回答よろしくお願いいたします。

Date: Mon, 29 Sep 2003 22:50:22 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

「あとは手術しかない」などという言い方をされると、多くの患者さんは「手術さえすれば症状が取れて良くなる」と信じてしまわれます。

しかし、筋肉の動きまで障害が出ていて手足が動かなくなってしまったときは頚椎や腰椎の手術により劇的な改善が見られることが多いですが、頚や肩などの痛み、腰痛などの痛みの症状の場合には手術にあまり期待するのは禁物です。医師も手術の説明のときによほど注意をしなければなりません。

実際、頚椎や腰椎の手術をしてもらったけれども「痛みが治らないばかりか返って具合が悪い」という相談がたくさんこの欄にも来ています。

だれでもある程度の年齢になると頚椎や腰椎にレントゲンやMRIである程度の異常が見られるものです。それと今出ている症状とが、原因と結果が本当に一致しているのかどうか、確証が得られることは少ないくらいです。

その上そういった骨の変化だけではなく、レントゲンでは写ってこないような血管や、神経の老化現象などが複雑にからみあって痛みなどの症状が出ていることが多く、そこへ手術をすると、かえって周囲の神経や血管の状態に対して複雑に障害を与えるためでしょうか、良くなるどころか、かえって具合が悪くなることが多いです。

ですから、日頃から私は頚椎、腰椎の手術は安易に受けないよう随分と患者さんにお話をしています。

手術をしてかえって悪くなった原因を突き止めようとしてレントゲンを再度撮ったり、MRIを見ても、そういう細かな変化はつかまらず、骨だけはちゃんと削ってあったりするものですから「手術はうまく行っています」とか言われるだけで患者さんにとってこんなにつらいことはありません。
その上、痛みというのは患者さんご自身が感じられる感覚であり、どれだけ痛いかは医師であっても証明する方法は今のところありません。MRIなどに異常が無くても痛みがあることはあるのですが、「異常有りません」などと言われてしまったりするのです。本当は、痛いというのは異常なのですから「異常が無い」などということはないはずで、正確には「異常が検査の上には出ていない」「検査では異常がつかまらない」というのが正確な表現です。

レントゲンやMRIに異常が写らずに痛みが出ているのですから、どのような名医にそのレントゲンやMRIを見てもらっても問題の解決にはならないことが多いです。

たまには骨の異常ではなく頚椎や手に行く血液の循環(「血の巡り」)などにより症状が出ていることがあり、そういう場合には診察によりある程度類推できたり、血管の異常が大きい場合にはMRA(MRIの血管撮影)により原因が推察出来ることはたまにありますがそういうことは珍しい部類です。

こういった状況下ではほとんどの場合どうしようもないというのが実状です。
ノイロトロピンやメチコバールといった薬は2週間も飲んでみて効き目がなければそれ以上長く辛抱強く飲んだからといって効き目が出てくる期待は少ないです。副作用は少ない部類の薬ですので身体に目立って害を及ぼすということは少ないでしょうが、薬を無駄に飲むことを私は自分の患者さんたちにはお勧めしていません。

現時点で最も良い方法というのはむしろ「ペインクリニック」などをされて疼痛除去を専門とされている良い麻酔医をお近くで探されて受診されることだと思います。
良い先生に当たると今までの苦痛が随分と除去されて有意義な毎日を過ごされるようになる可能性もあると思います。

0271でご紹介した整形外科の脊髄の専門の先生は決して無駄な手術をお勧めにならない先生です。どうしてもという場合にしか手を出されません。
脊髄の手術というのはそれくらい慎重にすべきものですし、慎重にされるからこそ名医なのです。今になって相談されてもお困りになられるだけでしょうし、時間と労力をかけて相談に行かれても先生もご相談者の方もお互いにがっかりするだけになってしまう可能性が高いのでお勧め出来ません。

なお、別の医師にかかる場合には紹介状が無いからといって診察を拒否されることはありませんが、出来る限り紹介状を持って行くのが良いです。
親切で新しい考え方の先生でしたら紹介状は何度でも書いて下さいます。
私も自分の患者さんに対してはいつもそのようにしています。

事情が事情だけになかなか良いお返事ができずに申し訳ありません。
痛み対策専門の「ペインクリニック」をやっている病院、医院は最近とても増えて来ていますので電話帳その他で探されると結構いらっしゃいます。
そういったところで、しかも評判の良い先生に相談されるようお勧め致します。

以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。


Subject: 再度ご相談いたします
Date: Fri, 3 Oct 2003 12:58:25 +0900

このたびは丁寧なご回答を頂きありがとうございました。

ずっと心に引っかかっていたことが一つありまして再度お伺いいたします。
3月に退院する時、こちらの問いかけに対しての主治医の先生の答えの中で最後に、癒着をはがす時血管も急に開いて大量の血が流れたので逆に神経を圧迫したのかもわからない。全体的に神経が循環障害を起したかもわからない。検査のしようがないし、中がどうなっているかそんなことはわからないと言われた事です。
足立先生の回答の中で

たまには骨の異常ではなく頚椎や手に行く血液循環などにより症状が出ていることがあり、………という箇所がありましたが、
足立先生もMRAにより原因が推察できることはたまにあるけれどそういうことは珍しい部類ですとおっしゃっていますように、やはり手術によって複雑に障害を与えられたような場合は単純にわかるようなことではなく、MRI以外の検査の必要性は考えにくいものなのでしょうか。

先生の丁寧な回答を拝見してどうしようもないことは理解しているのですが、このことだけもう一度お尋ねいたします。

お忙しい中申し訳ありませんがよろしくお願いします。


Date: Fri, 03 Oct 2003 16:42:20 +0900

先生が退院のときにおっしゃったのは脊髄後根神経節の「コンパートメント症候群」のことかもしれません。脊髄の後根は痛みなど感覚神経が入るところです。
そうして後根神経節は厚い被膜で覆われているのでその中に出血をすると神経が強く圧迫されて痛みが出ます。
しかし、大変細かいところのことですのでMRIなどでこういった状況を確認するのは至難の技です。

次にMRA(「MRIで血管を写し出すことを言います」)ですが左右の脈の触れ方が違ってくるほど腕の血管が細くなっているような場合には確認が出来ることも有り得ますがそれ以上詳しいことを判明するのは大変困難です。


date: 05 Oct 2003 11:58:07

このたびはご迷惑ではなかったかと思えるような質問にもかかわらず、2度までも、足立先生の誠意あるそしてきっぱりとした丁寧な説明を頂き、これからは気持ちを切り替えて少しずつ前を見ていく努力をしようと思います。
ありがとうございました。