
「痴呆の原因不明で転医先で悩んでいます」Date: Sun, 13 Feb 2005 23:48:02 +0900
7*歳の義母のことでご相談いたします。5年前に肺がん(Ib期 線癌)で内視鏡手術を受け、それ以降は元気で過ごしてきましたが、 昨年夏ごろより疲れやすく、特に歩くのが遅くなり、年のせいかとも思いながら心配してまいりました。
昨年末に帰省した折には物忘れがひどく、家事がつらい様子でした。
私の身近で転移性脳腫瘍の例を聞くことがあり(痴呆も心配しました)
検査を勧めようと思っていた矢先の1月27日に、知人宅で脳梗塞のような状態となり(右半身の麻痺、失禁、言語障害)救急車にて緊急入院となりました。
救急車で搬送中にも痙攣発作を何度か起こし危険な状態だったようです。
入院直後のCT、MRI画像上まったく異常は見られず、翌日から肺炎で発熱しましたが麻痺や言語障害は徐々に良くなり、今は痴呆のような症状だけが残っています(亡くなった義父のことを「最近姿が見えない」と言ったり、昨日は家へ帰っていたと言ったり、つじつまの合わないことを良く話しています)。
入院直後に脳外科医より癌性髄膜炎の可能性もあると言われ(その場合には治療方法はないと言われました)、神経内科医に主治医が代わり、検査が行われ一昨日説明がありました。
髄液中に異型細胞が4つあり線癌の細胞かもしれないが分からない。
腫瘍マーカーの値が15で少々気になる。
一応胃と大腸の検査をして異常がなければ転医してもらうとのことでした。
救急指定の病院でベットを空けなければならないのは分かるのですが、何も分からないまま放り出されるようで納得できないのです。
1 異型細胞が何なのか分かる方法はないのでしょうか。
2 主人は別の脳神経外科を受診させたいと思っているのですが、新しいことが分かる可能性があるのでしょうか。
3 このまま異常がなければ(胃と大腸は年末から年初にかけて検診を受けたと母から聞いているので、私としては異常があるとは思えないのですが)転医は避けられないでしょうが、今の状態でどんな病院を選べばいいのでしょうか。
4 一体何の病気なのか分かる方法はないのでしょうか。(これが一番知りたいのかもしれません)
こんなことになるまでは独り暮らしでしっかりしていた義母でした。もうあの母は戻ってこないのでしょうか。何とかしてあげたい気持ちでいっぱいです。よろしくご回答くださいませ。

Date: Mon, 14 Feb 2005 22:33:20 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。
もともと少し症状の出始めていた「痴呆(以後、最近の言い方の「認知症」と呼ばせてもらいます) 」に加えて肺癌の関与、脳梗塞発症などで病態(病気のなりたち)が分かりにくく複雑になっているように考えられます。
癌性髄膜炎が発症しているとすれば髄液検査のときの髄液の圧力(正常は100から150ミリ水柱、「髄液圧」などとも言います)、髄液中の蛋白濃度(正常は1デシリットル当たり40ミリグラム程度)、などが少し上昇し、細胞としては異型細胞のほかにリンパ球(正常は1立方ミリメートル当たり数個)が上昇していることが多いのでこれらを参考にします。
他の異常を伴っておれば癌性髄膜炎が発症している可能性が高まりますので参考にして下さい。
なお、正常値はそれぞれの検査機関により少しずつ変わって来ます。
脳梗塞もたまたまの合併であり、肺癌も現在の認知症の進行にそれほど関係していないということも考えられます。現在進行中の認知症は頻度の高いアルツハイマー病によるものなのかもしれません。
アルツハイマー病であるかどうかは神経内科医がCTやMRIなどの画像所見と診察により認知症症状が出る他の病気でないことを確認することによりおおよそ診断はつきます。
もしもアルツハイマー病がもともとあるのだとすればなかなか進行を食い止めるのは難しいです。
それではご質問項目に従いお答えします。
1.髄液の細胞を詳しく調べる方法として採取した髄液を遠心分離したり、フィルターを通して細胞を多数集める方法もあり、私自身も行ったことがあります。
髄液を採取した直後にこういう方法を行うとたくさんの異型細胞を観察することが出来るようになりもう少しはっきりとしたことが言えるようになるかもしれません。
しかし、こういった検査方法はかなり特殊なもので現在日本国中で行っているところはほとんど無いでしょう。
上に述べた髄液の他の検査データの動きと合わせて考えるべきで、
例えば髄液中のリンパ球や蛋白濃度が増えているのであれば重要視することが必要です。
見つかった異型細胞の標本が残されているのであれば何人かの専門家に見てもらうことによりさらにはっきりとしたことが言える場合もありますが、普通は髄液の検査は取って置くことはあまりしませんのでこれも難しいでしょう。
なお、ご質問者が「線癌」と書かれているのは「腺癌」のことでしょう。
2.もう一度CTやMRIを撮ってもらい、全く異常がみられなかったとされる入院直後のCTやMRIと比較検討することにより新しいことが判明することも多いです。
その際、昔のCTやMRIを貸し出してもらい別の脳神経外科や神経内科の専門のところでCT,MRI検査をしてもらって比べて意見を聴くと又別の見解を得ることもあります。
新しいことが分かる可能性もあります。
半身麻痺や言語障害が数日続くような脳梗塞の場合は発症直後であっても通常MRIのT2(「ティーニ」)強調画像で白く写るはずですがそれが何故見られなかったのか不思議でもあります。
3.たしかに釈然としない点がありますので転院先はご主人が仰るように さらに突っ込んでじっくりと原因を究明してくれそうなCTやMRIが完備している脳神経外科や神経内科の専門の病院が良いのではないでしょうか。
4.認知症の症状を示す病気はアルツハイマー病が最も多いのですがそれだけではなくたくさんの種類の病気があります。肺癌や脳梗塞などさまざまな病態が複雑に絡まっている場合はよほど緻密に検査結果を検討したりする医師の技量によって診断の力の差が多く出てしまいます。
3.でお答えした方法が良いのではないかと思います。
大学病院のような大きなところが良いかと思うと返ってがっかりさせられることも多いです。
市中の中クラスの脳神経外科病院の方がかえってすぐに入院を受け入れてくれて検査もすばやく的確に施行してくれたりすることがあります。
なお、診察はアルバイトの医師などではなく院長クラスの先生が外来をしておられる日を電話で確かめてから受診して入院の相談などをされると良いでしょう。
以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。
Subject: Re: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。
Date: Tue, 15 Feb 2005 21:55:53 +0900
メールありがとうございました。
こんなに早くお返事いただけるとは思いませんでしたので、感謝とともに感激しております。
来週早々に主治医の先生にお会いすることになっておりますので、足立先生からのアドバイスを踏まえ、さらに詳しい説明を求めたいと思っております。
また、転医先も決めなければならず、今、ネットや書籍で病院をあたっているところです。
この先どうなるか全く分かりませんが、出来る限りのことをしていこうと思います。
本当にありがとうございました。
この先再度先生に質問させていただくこともあるかと存じます。
先生がお元気で、このページを続けていかれますよう願っております。
足立先生のますますのご活躍をお祈り申し上げます。