質問・回答(0343)


「胃全摘手術は、無理なのでしょうか」

Date: Wed, 16 Nov 2005 08:36:00 +0900 (JST)

妻の胃がんについてご相談致しす。
5*才 リンパ節移転3群初期、ステージW(肺移転初期、他移転無し)、
胃全摘手術が出来ないとの事ですが、  
手術は、無理なのでしょうか
現在抗がん剤TC443(25gx2)1日2回服用しています。
最善の治療方法が有ればアドバイス宜しく御願致します。

Date: Wed, 16 Nov 2005 21:51:53 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

癌は癌細胞の塊りで出来ていて段々と大きくなって行きます。
周囲にじわじわと大きくなることを「浸潤(しんじゅん)」と言います。
癌の広がり方にはこの「浸潤」だけではなく、癌の塊りから
癌の細胞が剥がれて血液やリンパ液に乗り離れた臓器に辿り着いて
そこで又、癌が発育してそこでも癌が大きくなることもあります。
これを癌の「転移(てんい)」と言います。

普通は癌の周りのリンパ節に転移します。
リンパ節という臓器はウイルス、細菌など身体に害を及ぼす外敵を見付け出して
攻撃をする砦のようなものです。流れて来る癌細胞に対しても果敢に攻撃を
仕掛けるのですが癌の方が強いので占領されてしまうのです。
これが癌のリンパ節への転移です。
転移はリンパ節以外の臓器にも起こります。
胃癌の場合、普通、肝臓や腹膜に転移することが多いのですが
奥様の場合のように肺に転移することもあります。

胃癌の治療法を選ぶ場合、リンパ節への癌の転移がどの程度広がっているのか、
肝臓や腹膜など他の臓器への転移の程度がどうなのかで判断します。
胃癌でリンパ節転移が3群であればどうしても
ステージが4(正式にはローマ数字で「IV」と書きます)となってしまいます。
胃癌の場合、ステージは1から4まで有り、すべてローマ数字で表すことになっ
ています。
ローマ数字では1から10までを

I、II,III,IV,V,VI,VII,VIII、IX,X

というふうに表します。
「I」は1を、「V」は5を、「X」は10を表し、
右に来るより小さな印は足し算を、左に来るより小さな印は引き算を表すので上
のようになるわけです。

ステージが4の場合、他の臓器に転移が全く無ければ癌に侵されているリンパ節
を徹底的に取り去り、胃の病変を中心に大きく、広く取り去る
「拡大手術」という手術を行うこともあります。
場合によっては完全に癌組織を身体全体から取り去ってしまうことが
期待出来るからです。

しかし、たとえ僅かであったとしても肺に転移があればたとえこういった大きな
手術をしたとしても徒に身体を弱めてしまうだけで、肺に残った癌細胞が弱っ
た身体全体に広がってしまう可能性が非常に高くなります。
ですからこの「拡大手術」という方法はお勧め出来ません。
他の小さな手術では癌を完全に治してしまうことはほとんど考えられませんので
なおさらお勧めしかねます。

ステージIVの場合現在最もお勧めするのはやはり抗癌剤による化学療法という
ことになります。抗癌剤というと副作用の為に熱が出たり、髪の毛が抜けたり、
疲れ果ててげっそりと痩せてしまい苦痛のみで癌にはほとんど効かないという印
象が医師の間にも多いです。しかし、年々新しい良い抗癌剤が次々と開発されて
少しずつではありますが確実に治療の進歩が見られています。

これさえ飲めば確実に胃癌を治せるなどという薬は有りませんが、
現在使用可能な、最も進んだ抗癌剤に希望を託すのが最も現実的な方法ではない
でしょうか。

胃癌に対する抗癌剤、化学療法としては「フッ化ピリミジン製剤」が世界的にも
良く使われます。
我が国でも結構昔から「5−FU(ファイブエフユー)」、「UFT」、
「フルツロン」などという薬が使われて来ました。

しかし、効き目が充分でないので他のきつい抗癌剤を併用する必要があったり、
副作用も結構あったりして使いづらい面もありました。
そこへ、必ずしも他の抗癌剤を併用しなくても効き目も結構あり、副作用も少な
いように改良された薬も出て来ました。
それが「TS−1(ティーエスワン)」です。
単独に使っても結構効き目がありますし、シスプラチンという抗癌剤と一緒に使っ
て効果を高めようと工夫をされる先生もいらっしゃいます。

ご質問者は「TC443」と書かれていますがこれが「TS−1(ティーエスワン)」
のことです。
ほぼ最新の、最も効果があると考えられる抗癌剤をお使い頂いているようです。
28日使ったあと、14日休むのを繰り返す方法が採られる先生が多いです。
使い方によっては半分以上の患者さんでとても良く効いたという報告も出て来て
いる薬です。
最悪の事態も覚悟された上で、しかし最後まで希望も捨てずに少なくとも暫くは
今掛っておられる先生からのお話を充分に聞かれた上で期待を託されるのが
一番と考えます。

なお、胃癌がステージIVにまで広がってしまっていますので今後、様々なこと
の覚悟も必要です。最悪の事態も想定の上でご家族はもちろんのこと近縁の方々
が今後のことについて良くお話し合いをしておかれることもお勧め致します。

又、関係者の方々が一日一日を大切に過ごされるようにもお祈りしております。


以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。