
(since2006/11/24)
「麻酔から醒めたら左眼がなかったでは困ります」Subject: 涙腺の腫瘍摘出手術を控えている者です。
Date: Thu, 11 May 2006 08:55:45 +0900
足立先生、回答例を拝見してぜひとも先生のアドバイスを伺いたく思い メールさせて頂きます。
6月に「涙腺の腫瘍」の摘出手術を控えている**県在住の**歳の女性です。土壇場になって主治医とのコミュニケーション不足に悩んでいます。今の自分の状況の判断、主治医とのつきあい方、この期に及んで
転院するかどうかなど質問がいくつかございます。
子供の頃からの強度の近視で、現在左右とも裸眼視力0.02程度、矯正では1.2程度は見えます。病眼の左も遠くはよく見えます。この視力を失いたくはないのです。また両目とも飛蚊症が強く1から2年程度
に一度くらいの頻度で近くの眼科で眼底を見てもらっていました。網膜 は薄いと言われたりしています。
状況:
昨年暮れ、左目の睫毛が眼球に当たって痛むので耐えきれなくなり、近 くの****病院の眼科を受診しました。その際、担当医師(**** 先生)から「(左の)眼球が突出している、左右も不揃いでおかしい、 腫瘍の疑いがある」と言われてCTを撮り、「やはり腫瘍らしいので専門のところできちんと診てもらうように」ということで紹介状と CTのフィルムをもって今年1月****病院の***先生の所に移りま した。
*先生のもとで視力・眼圧・視野・フリッカー・眼底等の検査の他、造影剤を用いてCTとMRIを測定しました。その結果、「涙腺の腫瘍である、眼球も変形している、視神経が圧迫されて瞳孔など反応が弱っている、腫瘍が良性か悪性かは手術して組織を検査しないとわからないが」と言われ手術を勧められました。ただし、眼球の突出や左右の不揃いが治るかどうかはわからないとも言われました。(どうして
治らないのかはお聞きしたのですがお答えは頂けませんでした。)
先生方にはご理解いただけないかもしれませんが、私にはイノチより眼球が大事で、眼球摘出など考えられない、知らない間に摘出されて麻酔から醒めたら左眼がなかったなどという事態には耐えきれない、と申し
上げ、「眼球は温存する」という口約束のもと、6月手術という予定で 術前の検査も受けてきたのですが、ここに来て今の私の左目の状態・具体的な手術の方法(計画)・眼球の温存の可能性などについて十分に納
得する説明を頂けず、不安がつのっている状態です。
今まで半年も何をしていたのかと言われそうですが、眼腫瘍の専門病院 は少ないとの印象もあって、悪性であった時の事を考えると先々**の お世話になっていた方が良いのかと思い、また主治医も年代的にも40
代前半の脂の乗り切った方という印象でしたので、転院しない方が良いのでは、と自分に言い聞かせてきたというのが実情です。
手術の説明の際にも、手術のためということで撮り直した画像も(見せてくださいとお願いしたにも関わらず)瞬間的に一枚しか見せて頂けず、また手術の方法も例えば「眼科診療プラクティス」を見ればわかる
(丸善や図書館で教科書や文献を当たりました。*先生の論文も読んで おります。その旨はお話ししてあります)程度の説明で、ただ一つ、 「眼科と脳との境界にある骨を削るかもしれない」ということは言われ
ました。今画像等からわかる範囲で私の腫瘍は何と思われるか、と執刀 医である主治医の意見・仮説をお聞きしたかったのですが、開けてみなければわからない、の一点張りで、これからどういう勉強をしておけば
良いのか全くわかりません。
***の**病院であるにもかかわらず、手術を控えて不安定になり、 耳鳴りで眠れない状態であっても対応してもらえず、術後のケアにも不安を覚えます(夫が病院に色々問い合わせてくれたのですが。)
質問:
1.私はどうするのが一番良いのでしょうか?このままでは*先生に納 得のいく説明を頂ける自信がございません。質問してくれれば答えるか らと言われるのですが、素人の考えつかない物事もあると思います。そのために専門家のところに伺っている訳ですから、先を読んで積極的に
説明がなされなければ「インフォームド・コンセント」とは言えないのではないかと思います。
2.腫瘍の状況は画像を見ないと何とも言えない点はあるかと思いますが、一般的に涙腺の腫瘍では眼球は温存するものなのでしょうか。そう であって欲しいですが、そうでない場合があるのかどうか、あるとした
らどんな場合か?最悪の事もあり得るのなら、それなりの心の準備というものが必要です。どんな処置であっても、「知らないうちにされてしまった」ではなく、心から納得して受けたいのです。
3.眼の左右不揃いは昔からのような気がするのですが、昨年暮れから 比べて今は眼球の突出がひどくなってきたようです。現に睫毛の当たる 割合も多くなって来ました。こんなに速く大きくなっているとしたら
(眼球の圧迫という事から考えて)手術は一刻を争った方が良いので しょうか?変形している眼球が戻らなくなるという事もあり得るので しょうか?
4.転院先の選択について:眼腫瘍を扱う科は眼科以外では信州大学のように形成外科が対応している病院もある聞きましたが、先生がご存知 の病院や専門医がおいででしたらお教え頂きたく存じます。***が便利ですが、今は納得して手術が受けられるのならどこにでも行こうという気持ちです。なお、3月にセカンドオピニオン用にCTとMRI
のフィルム一式を頂いてあります。(実は眼球の変形も、画像としては、このフィルムを自宅でざっと見て確認したのが初めてです。とても 驚きました。)また、セカンドオピニオンは***大の**先生に頂きましたが、*先生と同じ医局の先生でしたので意味がなかったのかもしれないと今は後悔しております。**先生のご意見では、「腫瘍は(眼球が変形するほど硬いのは)良性の多形腺腫と思われる。自分の奥さん
であっても手術を勧める」とのことでした。
何よりも視力の保持が私にとって一番の大切です。一刻を争うような状 況かも知れません。気持ちが焦っているためか乱文でしかも長文になってしまい申し訳ありません。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

Date: Sun, 14 May 2006 16:48:02 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。
とても大切な眼のことですし、大変ご心配なご様子、ひしひしと伝わって来ました。
お気持ちお察し致します。
まずは、「涙腺腫瘍」について簡単にお話しておきます。
少し専門的な言葉も入ります。
「涙腺腫瘍」には「多型腺腫」、「腺様嚢胞癌」、「腺癌」、「MALT型リンパ腫」などが良く知られています。
「MALT型リンパ腫」の「MALT」とは「mucosa-associated lymphoid tissue」のことです。最近高齢男性での報告が相次いでいます。
「多型腺腫」は女性に多く、「腺様嚢胞癌」は男性に多い傾向があるとも言われています。
この他に「涙腺腫瘍」としては「悪性筋上皮腫」、「髄外性形質細胞腫」、「粘表皮癌」、「多形腺腫源癌」、「未分化癌」、「内皮細胞腫」、「肉腫」、「腺癌」の一種ですが「皮脂腺癌」などの報告があります。
全体として若年者の方が高年齢者より悪性の場合が多い傾向があります。
手術方法としては腫瘍の場所にも拠りますが「Kroenlein法(クレーンライン法)」という方法が取られることが多いです。
眼窩外側壁の骨片を一時的に切開、開放して、眼球後部を露出させて摘出する方法です。
他に、前頭部に骨弁を作って眼窩内に到達する「Dandy法(ダンディ法)」という方法が使われることもあります。
では、以下ご質問項目に従いお答え致します。
> 質問:
> 1.私はどうするのが一番良いのでしょうか?このままでは*先生に納
> 得のいく説明を頂ける自信がございません。質問してくれれば答えるか
> らと言われるのですが、素人の考えつかない物事もあると思います。そ
> のために専門家のところに伺っている訳ですから、先を読んで積極的に
> 説明がなされなければ「インフォームド・コンセント」とは言えないの
> ではないかと思います。
普通、「涙腺腫瘍」の摘出術では眼球摘出を行うことはほとんどありません。
「眼球は温存する」という口約束を頂いているのであれば、そうして「質問してくれれば答えるから」と仰って下さっているのであれば、「手術で開けてみたところあまりにも腫瘍の広がりや浸潤がひどく 眼球を摘出が必要と判断される可能性はあるのでしょうか」
と伺っておかれれば如何でしょうか。
「そういう可能性は全く無い」と言われるのでしたら、「たとえそういった場合であっても必ず一旦は手術窓を閉じて
麻酔から覚めてから今後どうするかの相談に乗って下さいね」
とお願いしておけば良いでしょう。
そういう可能性は全く無いとは言えないとのことでしたらそういった場合にどうするか、必ず一旦は閉じて頂くようお願いしておくのか、術中の先生の判断に任せるのか良く相談して前もって決めておく必要があります。
一旦閉じてもらって詳細な病理検査を待ってから眼球摘出をしないで放射線療法や「クラドリビン」とか「リツキシマブ」といった化学療法も含めて検討、考慮する必要があるからです。
なお、これらのことはいきなり先生に念書を書いて契約書類を押してもらうわけには行かないでしょうからご主人だけでなく、もうお一人かお二人のしっかりとされたご家族と出来たら看護師さんのいらっしゃるところでお伺いになっては如何でしょうか。
実際の手術の際には説明同意書にサインを求められるのでその説明書には上のことを書いておいて頂く様お願いすることも出来ると思います。
> 2.腫瘍の状況は画像を見ないと何とも言えない点はあるかと思います
> が、一般的に涙腺の腫瘍では眼球は温存するものなのでしょうか。そう
> であって欲しいですが、そうでない場合があるのかどうか、あるとした
> らどんな場合か?最悪の事もあり得るのなら、それなりの心の準備とい
> うものが必要です。どんな処置であっても、「知らないうちにされてし
> まった」ではなく、心から納得して受けたいのです。
一般的に涙腺腫瘍の手術ではたとえ悪性のものであってもほとんど眼球摘出されることはありません。但し、絶対に無いとは言えません。
手術前にCTなどで骨浸潤などが確認されており、相当悪いものが考えられる場合には眼窩内容すべてを摘出する覚悟で手術を始めます。
もちろんそういった場合には前もって主治医から十分な説明がご本人にも、ご家族様にもあります。
> 3.眼の左右不揃いは昔からのような気がするのですが、昨年暮れから
> 比べて今は眼球の突出がひどくなってきたようです。現に睫毛の当たる
> 割合も多くなって来ました。こんなに速く大きくなっているとしたら
> (眼球の圧迫という事から考えて)手術は一刻を争った方が良いので
> しょうか?変形している眼球が戻らなくなるという事もあり得るので
> しょうか?
徒に手術の時期は延ばさない方が良いでしょう。
だからと言って病院のルールを無視して急いでもらうのは反って準備の手筈を狂わせたり、いろいろな意味でもお勧め出来ません。
> 4.転院先の選択について:眼腫瘍を扱う科は眼科以外では信州大学の
> ように形成外科が対応している病院もある聞きましたが、先生がご存知
> の病院や専門医がおいででしたらお教え頂きたく存じます。***が便
> 利ですが、今は納得して手術が受けられるのならどこにでも行こうとい
> う気持ちです。なお、3月にセカンドオピニオン用にCTとMRI
> のフィルム一式を頂いてあります。(実は眼球の変形も、画像として
> は、このフィルムを自宅でざっと見て確認したのが初めてです。とても
> 驚きました。)また、セカンドオピニオンは***大の**先生に頂き
> ましたが、*先生と同じ医局の先生でしたので意味がなかったのかもし
> れないと今は後悔しております。**先生のご意見では、「腫瘍は(眼
> 球が変形するほど硬いのは)良性の多形腺腫と思われる。自分の奥さん
> であっても手術を勧める」とのことでした。
涙腺腫瘍にご理解が深い先生としては***でしたら***大眼科の*澤**子先生、***大学眼科の*島*一先生などが良く知られています。
今お世話になっておられる***先生もこの方面ではかなり有名な先生でいらっしゃいます。
以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。
涙腺腫瘍の手術を受けられた患者様の大半が無事手術を済まされてこれといった大きな後遺症も無く過ごされています。
病気が相手ですので「絶対大丈夫」ということはどのような名医であっても絶対に言えないのが現実ですがきっと*先生でしたら最大限努力して誠意を持って取り組んで下さると思います。
ご心配なお気持ちは大変良く分かりますがあまり構えずに冷静にお気持ちをお話になっては如何でしょうか。
Subject: 有り難うございました。
Date: Tue, 16 May 2006 00:01:47 +0900
足立先生
お忙しい中、まとまりのない質問に誠実にお答えを頂き大変恐縮です。
有り難うございました。
追加の質問は少し落ち着いて、まとまってからさせて頂きたいと思いま す。
今週中に****にて**申し上げますので、今後とも宜しくお願い申し上げます。
腫瘍について丁寧なご解説も有り難うございました。専門用語の方が、辞典でも調べやすいので助かります。
少しご説明させて頂きますと、私は自分の腫瘍が悪性であるとか、悪性化するとかいうことを恐れているのではありません。
その時はそのとき、積極的に最先端の医療技術を試みてみるつもりです。
怖いのは、たとえ片目であろうとも「視力を失う」、それも、「知らないうちに」という事なのです。
先生のお答えの中に、「涙腺腫瘍で眼球摘出を行なう事はほとんどありません」とあり、救われたような気持ちです。
もういちど、主治医の先生に、落ち着いてお話ししてみるつもりです。
看護師方もお忙しそうなのですが、今の私の気持ちをお話しして相談 祈ってもらいます。それでも、はっきりと、承諾書に明記する形でお返 事が頂けないのであれば、転院もやむを得ないと思っています。
ただ、もうかなり眼がうっとうしくなってきている事でもあり、本当 は、決まっている日程をこれ以上延ばしたくはないのです。
早く腫瘍を取って、放射線なり薬物なり、次のステップの療法に積極的 に関わりたい、そのために、前向きに生きるためにも私には、両目がど うしても必要なのです。
うまく伝えられますかどうか・・・やってみます。
まずはお礼まで。