質問・回答(0366)



(since2007/11/6)

「私は総合内科医ですが、
自分の手足が痩せて来ました」

Date: Thu, 1 Nov 2007 20:03:18 +0900 (JST)

初めまして、*****と申します。
9年目の総合内科医です。
現在は、**県の僻地の小規模病院で一般内科医として勤務しております。
恥ずかしながら、私自身のことについて相談させて下さい。

3*歳の男性です。
四肢の痩せについて、相談させて下さい。

既往歴について概説致します。
生来健康で、著患を知りませんでした。
25歳の1*月に、微小変化型のネフローゼ症候群を発症しました。
腎生検も致しました。
プレドニゾロンを40mgから内服し、寛解導入致しました。
漸減して行き、約1年で内服終了し、休薬となりました。

その後、28歳の1*月に再発致しました。
この際も、腎生検を行い微小変化群の診断でした。

同様に、プレドニゾロンを40mgより内服開始致しました。
寛解導入でき、漸減できておりました。
この際は再発という事もあり、少量を長期間内服することとなり、
約2年間(3*歳まで)内服しました。
骨密度の低下も出現した為、プレドニゾロン内服中はビスホスホネート製剤の内服もしました。

また自覚症状はないものの、白内障も出現し始めました。
血圧は正常で、耐糖能障害もありませんでした。
この1回目の再発の際に、季節性がありそうなことから、アレルギー性も考えました。
IgEを測定すると1500程度まで上昇していました。
そこで、その後は毎月、IgEを測定するようになりました。

2*歳の春に現在の僻地病院へ転勤してきました。
転勤当初はIgEは200台まで低下していました。
プレドニゾロンを終了していた昨年、32歳の11月に再発しました。
昨年の夏から少しずつIgEが上昇し始めていました。
IgEが500を超えたところでの再発でした。
予想通り、何らかのアレルギー反応が発症に関与しているようでした。
プレドニゾロンにより既に副作用が出ている為、出来るだけプレドニゾロンは内服したくないと言う思いがありました。
また、弱小病院で、私が休職すると病院が機能しなくなる為、高容量のプレドニゾロンは内服したくありませんでした。
以前の主治医に相談しようかと迷いました。

しかし、恐らく定型的な量でのプレドニゾロンの再開を勧められるものと考え、相談しませんでした。
アレルギー反応自体が抑えられれば、寛解出来るのではないかと予想して、試しにプレドニゾロンを5mgから内服しました。
すると約2週間で尿蛋白は陰性化し、寛解出来ました。
その後IgE値は昨年12月まで上昇しましたが、700程度をピークに低下して行きました。
今年の2月まで5mg内服し、その後は3月まで2.5mgを内服し終了しました。
IgEは400台で推移していました。
今年の7月にIgEが600を超え、3回目の再発となりました。
またしても、プレドニゾロン5mgの内服を始めました。
それにより約2週間で寛解導入でき、今月にはIgEも400台まで低下しています。
現在も5mgを内服中です。
2回目、3回目の再発の際にもプレドニゾロン内服中はビスホスホネート製剤も内服しております。
さて、ここから本題です。

今年の6月頃(3回目の再発よりも前です)から、足のサイズが小さくなったのを実感しました。
当初は気のせいと思っておりましたが、25.5cmで丁度良かった靴が、ガバガバになってしまいました。
腕時計もゆるくなっているのに気付きました。
休薬期間はあったにせよ、昨年の11月からプレドニゾロンを内服している為、その影響も考えました。
しかし、初発と1回目の再発時にはプレドニゾロンを40mgから内服していたにも関わらず、このような四肢末端が痩せた事はなく、納得が出来ませんでした。
上下肢の近位筋が痩せた感じはなく(ズボンの大腿がゆるくなった感じはしません)、筋力低下も自覚しません。
この数年間、体重は55kgで全く変動がありませんでした。
四肢末端が痩せるのは、食事の摂り方が少ないのか?とも考え、食事量を増やしてみました。
そのせいか、10月には57kgまで体重は増えました。
腹囲は増大したみたいで、ウエストがややきつくなりました。
当然ですが、四肢末端は大きくなるどころか、むしろ徐々に小さくなっているようです。
発熱、食欲不振、倦怠感等を含め、全く自覚症状はありません。

少量のプレドニゾロンでも、このような副作用が起こる事があるのか?
相談しようにも、誰に相談すべきかもわからず、また仕事を休んで医療機関を受診できるような環境にもありません。
(離島の為、本土までは飛行機で移動せざるを得ない程の田舎です)
血液検査でも、血算、生化学(CPK、LDH、ALP、肝腎機能、グルコース)共に異常はありません。
上部消化管内視鏡、腹部エコー検査でも異常はありません。
胸部レントゲンは今月末の健診で撮影予定です。
当院にはヘリカルCTはございますが、MRIはございません。
他に一般内科医が2人居ますが、キャリアは私と同程度です。

質問内容を整理します。
四肢末端の痩せは、少量のプレドニゾロン内服で生じるのか?
ネフローゼ症候群と、四肢末端の痩せは関連があるのか?
四肢末端の痩せは、独立した疾患と考えられ、何らかの基礎疾患が存在するのか?
もしそうであれば、どのような疾患が疑われるのか? どのような検査を追加すべきか?
そもそも、どの診療科へ相談するべきなのか?

ご多忙な折り、大変ご迷惑をお掛け致しますが、何卒宜しくお願い致します。

Date: Sun, 04 Nov 2007 10:19:38 +0900
Subject: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。

総合内科医という高度なレベルの先生からのご質問ですので病歴が非常に良くまとまっており助かりました。
ご質問者が医師でいらっしゃり、ご本人やご家族についてのご質問も結構多いのがこのホームページの特徴でも有ります。
たとえ医師であっても、いざご自身とかご家族の病気のことになると何故か判断に迷われるようなことも多いようです。

では、以下に「整理された質問内容」に沿ってお答えします。

なお、ホームページをご覧になる方は医師以外の方も多いですので
医師であれば当然ご存知のことも含めて回答を書かせて頂きます。

> 四肢末端の痩せは、少量のプレドニゾロン内服で生じるのか?

既にお気付きのことと思いますが、プレドニゾロンと言う副腎皮質ステロイドホルモンによる「中心性肥満」の一症状と考えられます。
副腎皮質ステロイドホルモンはとても良い薬ではありますが副作用も多いことが知られています。
臨床に携わる医師としてはまず、生命に係わる以下の3大副作用を忘れないようにしておく必要があります。

1.消化性潰瘍の悪化による消化管穿孔
2.糖代謝障害による糖尿病の悪化による昏睡
3.感染症、特に結核、真菌感染症の悪化

しかし、この他にも生命に係わらない副作用として、
中心性肥満・野牛肩・満月様顔貌(moon face)が有ります。
四肢皮下脂肪の脂肪分解によって脂肪が躯幹・肩・顔面へ動員された結果として起こるものです。

お尋ねのステロイドの量との関係ですが、結構少量でも発生することも有るようです。先生もご存知の口内炎の薬だけでも中心性肥満が発生する例が
ACTH RELATED PEPTIDES(1340-4512)17巻 Page205-210(2006.12)に
外用ステロイド薬の口腔内塗布による医原性Cushing症候群の1例
として発表されています。
又、先生と同様、微笑変化群のネフローゼ症候群が4回も再発し、
ステロイド依存性ネフローゼ症候群となった例でやはり「中心性肥満」が出現した例が下記論文に掲載されています。
**県立病院医学会雑誌(0385-9320)45巻2号 Page139-142(2005.12)

> ネフローゼ症候群と、四肢末端の痩せは関連があるのか?
四肢末端の痩せは、ステロイドにより四肢の脂肪が分解され移動したためと考えます。ネフローゼ症候群と四肢末端の痩せについての関連性は私は聴いたことが有りませんし、文献的にもみつけることが出来ませんでした。

> 四肢末端の痩せは、独立した疾患と考えられ、何らかの基礎疾患が存在するのか?

> もしそうであれば、どのような疾患が疑われるのか? どのような検査を追加すべきか?
ステロイドミオパチーでは四肢末端よりも躯幹筋の筋萎縮が来る形を取りますので否定的ですし、特別な疾患によるものとは考えにくいです。
ですから筋電図検査で low amplitude short duration discharge の確認などは行う必要性は低いと考えます。

> そもそも、どの診療科へ相談するべきなのか?
現在はプレドニゾロンを日に5mgだけ使用中とのことですが、
これ以上、ステロイドホルモンを使用し続けると中心性肥満は増悪することが考えられますのでステロイド薬は漸減し、シクロスポリンなどに変更を試みられるのが良いかと思います。
シクロスポリン3mg/kg/dayの投与でプレドニゾロン依存性ネフローゼ症候群であっても2年間再発がみられなくなった例が、先の**県立病院医学会雑誌に報告されています。
科とすれば、膠原病科などになるでしょうが、総合内科医でいらっしゃれば現在の先生の環境を鑑みますと上記文献などで研究をされて先生ご自身で対応を検討されては如何でしょうか。
なお、先生のように中心性肥満を起こしやすい人と、起こしにくい人と体質のようなものががあるようでそういった研究から原因として、最近では
細胞内グルココルチコイド活性化酵素
11β-hydroxysteroid dehydrogenase type I(11β-HSD1)の役割が注目されていることを申し添えておきます。

以上、今回のお答えとさせて頂きます。
どうぞ、お大事になさって下さい。


Subject: Re: 「インターネット病気個別ご相談」お答えします。
Date: Sun, 4 Nov 2007 13:32:50 +0900

足立先生

ご返事頂き有難うございます。
私もプレドニゾロンの副作用を疑っていましたが、自分の事となると自信が持てずに居ました。
先生の御意見を拝見して、確診できました。

こうなりますと、基礎疾患のコントロールを如何に行うかが問題となってきますので、やはり腎臓内科医との相談になるかと思います。
この度はご多忙な折り、貴重な御意見を頂き有難うございました。

尚、先程、*******で**致しました。
宜しく御**下さい。