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マトリクス方式の問題に付いて。

 

 システムとして重ねの理が成立するか(複数チャネルへ同時入力しても正しい結果が得られるか)実験してみました。

 →具体的には、異なる2チャネルに同一信号を入れた場合、その中央に定位するか否かの問題です。

 

山水QS方式ではステアリングロジック有無、詰まり、機種に関わらず、

 

 ○ 前方の左右のチャネル、後方の左右のチャネルに同じ信号 → 正しく再生され、前方、後方の中央に定位する。

 

 ○ 左側の前後のチャネル、右側の前後のチャネルに同じ信号 → 正しく再生され、真左、真右に定位する。

 

 ○ 全チャネルに同じ信号 → 正しく再生され、真上に定位する。

 

 △ 右前と左後ろの対角のチャネル、左前と右後ろの対角のチャネルに同じ信号 → 未定義信号。 但し、正しく対角のチャネルに原音通り再生されないが、幸いにも全チャネル同じ信号になる様に誤り、結果的に真上に定位する。

 

CBSソニーSQ方式では機種に依って結果が変わるので、WMロジック機や自作ロジック機をロジック有りとすると、

 

 ○ 前方の左右のチャネル、後方の左右のチャネルに同じ信号 → 正しく再生され、前方、後方の中央に定位する。

 

  左側の前後のチャネル、右側の前後のチャネルに同じ信号 → 未定義信号。 以下の如く、ロジックの有無で変わる。

 ○ ロジック無しの時 → 正しく再生され、真左、真右に定位する。

 × ロジックありの時 → 正しく再生されず、真右は右前方、真左は左後方に移動する。(未定義信号故、方向を正しく判別できずロジックが誤動作)

 

 × 全チャネルに同じ信号 → 未定義信号。 正しく再生されず、左前と右後ろの対角のチャネルから再生する。

 

 △ 右前と左後ろの対角のチャネルに同じ信号 → 未定義信号。 正しく再生されないが、幸いにも入力と同じ、左前と右後ろの対角のチャネルから再生。

 

 × 左前と右後ろの対角のチャネルに同じ信号 → 未定義信号。 正しく再生されず、入力と逆側の、左前と右後ろの対角のチャネルから再生。

 

結論

 山水QS方式では重ねの理はほぼ成立し問題は少ない。 然し、

 CBSソニーSQ方式では、前方の左右チャネル間、後方の左右チャネル間以外は全て未定義となり、重ねの理は殆ど不成立で問題が多い。

  →残響等や前後感を正しく再現することができない。

 →音量バランスで楽器をチャネル間に配置する事ができない。

→4チャネルディスクリート音源では正しくエンコードできない。

 

  蛇足ですが、以前、調整用に作成したQS/SQエンコーダでの真右、真左は(単純に右側の前後のチャネル、左側の前後のチャネルに同レベルの信号を入れて生成せず、)QS方式は右丈、左丈の信号、SQ方式は位相差90゚ 関係でレベル比 0.414 の信号、と個別にエンコードしてQSでもSQでも真右、真左を正しく定位させる様にはしておきました。

 

 CBSソニーSQ方式は、理論上、山水QS方式と比べると、分離性能が劣っている事は周知ですが、上記の如く、前後に相関のある信号が扱えない故、前方2チャネル+後方2チャネル方式であり、4チャネル方式とは言えない仕様だった事が分かりました。 何れにせよ、ソフト制作の制約が大変多いシステムであるという事丈は確かであり、更に、文化遺産破壊の被害拡大を招く故、これも、CBSソニーSQ方式が、数年で撤退した数多い理由の一つだったのでしょう。

 

 余談ですが、マトリクス方式で録音された音源をステレオで聴いた場合、

 QS方式では、右後方、左後方の音は、夫々、右スピーカの外側、左スピーカの外側に定位します。 然し、

 SQ方式では、右後方、左後方の音は、夫々“逆の方向の”、前方中央やや左寄り、前方中央やや右寄りに定位して仕舞います。

→SQ方式は、(前方チャネルの互換性は良好でしたが、) 後方チャネルに関しては、そのエンコード(移相)の規格に大きなミスがあったのです。

 

 詰まり、SQ方式は現行ステレオ方式との互換性が高い事が謳い文句でしたが、上記の理由で、現実は、QS方式より互換性が低い規格だったと思われます。