▼素肌の涙

●2000/9/16

@シアター・イメージフォーラム

■ティム・ロスの初監督作品。ものすごく痛くて辛いんだけど,とてもいい映画で,確実に今年のオレベスト10入賞。映画館は宮益坂をのぼったところに新しくオープンしたイメージフォーラム,苦言はおわりに。

■冒頭の,風に歪んだ大木の横を,自転車で駆け抜けて行く少年(トム),このシーンからもうココロをグッと掴まれます。このシーンだけでなく,全編に渡って,すみずみまで空気が張り詰めたような映像がスゴいです。光と影の使い方も。

■父と姉ジェシーが風呂場にいるところを目撃してしまったトム,それからこの近親相姦の事実を突き止めようとするトムを中心にストーリーが進みます。愛に溢れる家庭を壊したくないキモチ,性に対する鬱屈した好奇心を抑えられない15才のキモチ,そんなものがゴチャ混ぜになりながら,真実に向かって行く姿がとても痛い。姉へのセクシャルな思慕もあるのかな?

■遂にトムが目撃してしまう,父とジェシーとが断崖にあるシェルターで交わるシーン。このシーンが本当に痛くて辛い。それまで描かれていた新しい命が生まれて幸せに満ちた家庭,その裏側にはこんな事実がある。それを認めるしかなくなったトム。また,ジェシーはアナルセックスをしようとする父に対し,「私もママと同じようにして」とノーマルなセックスを願う。この言葉の意味は一体なんなんだろう?娘としてのココロと女としてのココロが揺らいでいるのか?観ているボクの頭の中にはこんな思いがグルグルしていた。

■トムが母に伝えた一言から,表向きは平和だった家庭が崩れる。それまではトムの追求を否定してきたジェシーも,父に刃を向けるトムを止めることはしない。そして物語は悲劇的な結末を迎えます。

■この映画がデビュー作となったララ・ベルモントのまさに体当たり演技がスゴイ。凛とした大きな目と,白い肌に紅い頬が何とも魅力的です。ヌードもとても綺麗。これはファンになること必至。父役のレイ・ウィンストンも,辛そうな役をとてもよく演じています。

■さて苦言。イメージフォーラム,新しくて綺麗で洒落た建物なんだけど,何せロビーが狭くて待ち時間が大変。まあ整理券制だし,周辺にはカフェなんかも多いからコーヒーでも飲んで待ってたらいいんだけど。それより,上映のマズさが気になった。

■父がジェシーを犯すシーンで,いきなり場内の照明が数秒間明転して何か音楽が鳴りはじめた。後ろに座っていたカップルは「自主規制だろ?」と話し合ってたけど,映倫を通ってR-15で上映されている以上,劇場側でそんなことをする必要はないはず。これは単なるミスだろう。あと,スクリーンのフォーカスも甘々だったし,音量が急に変わったりなどなど.....お金を返せとまでは言わないけど,何らかのお詫びのアナウンスくらいするべきじゃないかな?と思った。

素肌の涙