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ほめ言葉 他

     「名探偵『古林』」

 とあるパーティ会場で殺人事件が発生した。
 駆けつけた警部はパーティ列席者を会場内に拘束し、一人一人に状況を聞いて回った。
 しかし犯人特定に結びつくものは何一つ得られない。

 「これじゃあ迷宮入りだ。こうなったら仕方がない、名探偵『古林』を呼べ!」

 その警部の言葉を聞き、列席者の一人が顔を青くしながら警部の元に進み出た。
 「警部さん、犯人は私です。あの『古林』が来るとなってはもはやこれまで。洗いざらい白状します!」

 名探偵『古林』、登場せずに解決。
 さすが名探偵。でも小説家泣かせ。


     「唯一の証拠」

 裁判所で「霞ヶ関ビル破壊事件」の審議が行われていた。

 「証拠として、現場から採取された指紋を提出します。分析の結果、これは被告人の指紋と一致します」
 「異議あり。その証拠は完全に一致と言うわけではありません」
 「いいえ、全くの相似であり、被告人の所業であることを証明するに十分足るものと判断します」
 「でも大きさが全然違う!」

 決め手となる現場に残された指紋。全てが被告人の指紋と一致した。ただし被告人から採取されたものと決定的に異なるのはそのサイズ。現場で採取された指紋は30センチ角にもなる巨大なものだった。

 「判決を言い渡す。唯一の証拠が一致するとは認められない。よって被告人は無罪!」

 被告人席に立つ男はホッと安堵のため息を吐いた。
 その男とは、人間サイズのウルトラマン……


     「しゃべる目の女」

 あの娘は不思議だ。
 「目は口ほどに物を言い」とは言うが、正にそれを地でいっている。その娘の目が……しゃべるんだ!
 「私はあなたのこと好きよ」
 その時彼女の唇は動かない。でも俺にはそう聞こえる。
 友人に聞いてもそんなことはないと言う。でも彼女の目はどんどん俺へアプローチしてきやがる。

 その娘と婚約してから打ち明けたら、彼女がこう言い返したさ、
 「バカね、そんなこと気にしてたの? それはアイコンタクト。私達に愛が芽生えたからそう思っただけよ。恋は盲目と言うでしょ」
 うまいこと言いやがる。
 でも俺は聞き逃さなかったさ。そういう彼女の目が、
 「この男って騙しやすいわ」と言ったのを……


     「ウソ発見器」

 研究員「私はウソ発見器を発明しました」
 博士 「ウソじゃないのか?」
 研究員「決してウソは申しません」
 博士 「よろしい、じゃあウソかホントか、そのウソ発見器で試してみよう」
 研究員(……ラッキー)


     「取説のない機械」

 「博士、これは何の機械ですか?」
 「この機械はあることを試す機械じゃ。ほら、ボタンが二つあるじゃろう。この機械を働かせるには秘密のコード入力が必要じゃ。このボタンをある順番である回数だけ押すとその仕掛けが分かるようになっておる」
 「へえ...面白そうですね。そのコードを教えてくださいよ」
 「それはお前でも教えることはできんな...もっとも偶然見つけてしまう分にはとがめることはできん。気になるならそのコードを自分で見つけることだ。試してみるか?」
 「はい!」

 助手はその機械のボタンを、あれやこれやと押しはじめた。
 「博士、たった二つのボタンとはいえ、これは組み合わせは無限にありますね。まったく何を試す機械なんですかあ?」
 必死にボタンを押し続ける助手を見ながら、博士は笑いを抑えるのに必死だった。
 (それは人間の探求心を試す機械じゃよ。ボタンを押しただけカウンターが上がる、な……)


     「師の言葉」

 「困ったときは逆を選べ」
 その師の言葉を目を輝かせて聞いていた俺だ。
 その教えに従ったおかげで俺は苦境を切り抜けることができた。なにしろ一つ間違っていたら確実に死んでいた状況を、この言葉のおかげで助かったのだ。
 その師にお礼を言いに行くと、師の返した言葉は
 「そんなこと言ったっけ?」

 俺にも部下が付いた。
 「例え上司の言う言葉でも信じるなよ」
 その部下は目を輝かせて聞き入っている。


     「ほめ言葉」

 「この時計、とてもいいけどちょっと高いなあ」
 「さすがお客様、お目が高い(オメガ高い)」


     「あれ、がない!」

 課長は突然「あれがない」と言いだした。
 課長はそれがないせいでお困りの様子。それ以上先に仕事が進まないようだ。
 何かと思えばお気に入りの50センチ物差し。竹製のご愛用品らしい。
 「私のを貸しましょう」
 と社員達が言うが、課長は
 「いやあれでなくてはならないのだ」
 と受け付けない。
 課長がこうでは書類の流れもストップしてしまう。社員は一丸となってその物差しを探し始めた。
 ついに一人の女子社員が、デスクとデスクの間にはさまっていた物差しを見つけた。
 「やあ、ありがとう。これでやっとすっきりする」
 課長はその物差しを受け取るや、自分の背中をぼりぼりと掻きはじめた。
 「この竹の丸みがいいんだ」
 見つけた女子社員は「私、触っちゃった!」などとパニックになっていた。


     「完全密室」

 最初は完全犯罪と思われたこの事件。
 死因は窒息死だった。

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