△━1999/8/8━━━☆━━━━━━━━━━━━━━━☆━━━━━━━━━
★☆             たま
◇◆◇     バンコク発!<地球>乗り見聞録
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                       (月一回発行)


   
◇◆ 久慈ちゃんのバンコクで、たま乗り 
 ◇                            
‖ I Love Thailand
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何かというとタイ人の事を考えている。オイラにとって彼等は、尽きざる興味を
掻き立てられる対象だ(タイに居るんだから当たり前だけど)。

例えば、タイ人のナショナリズムについて考えてみる。
彼等のそれは強く、誇り高い事は確かだが、そこにはお上から無理やりに
植え付けられたというような臭みは無く、タイ人の一人、一人がごく自然に
国を愛している。たまに軍にシキられたテレビ局が愛国心高揚のプロパガンダ
っぽい放送をすることがあるにはあるけれど、人々に言わせれば"そんな事ぁ
言われなくったって分ってらぁ"ってなモンじゃないだろうか。

 自然に自分の故郷を愛し
 自然に国王を敬愛する
 カタヒジ張ることなく、さらりと自然に
 オイラはそんなタイの風景が嫌いではない。

ある日、タクシーに乗った。運ちゃんは冗談好きの陽気なアンちゃんで、
しきりと話しかけて来る。オイラが日本人だと判ると、

「へぇ〜、あんた日本人かい?てっきりタイ人かと思ったよ。
 オレ、日本人好きだぜ、皆気のいいヤツらさ」

と言って、ミラー越しにニッコリとして見せた。

「そうかい?ファラン(西洋人)はどう?」

オイラもほほ笑み返しながら訊いてみた。

「ファランね・・。時々うるせえ奴がいるけど、まぁOKだ。だいたい
 タイ人は外国人に優しいんだぜ、いつだってWelcomeだよ。何たって
 "Amazing Thailand"だしな」

事実、タイ人は外国人に対して寛容で、偏見も少ない
("ファランはスケベ""中国人はケチ""日本人はアジノモト"
 といったステレオ・タイプの見方はするが)。

彼は今までに乗せた日本人についてユーモアたっぷりに話してくれた。
彼の日本人観は「皆キー・アーイ(恥ずかしがり)だな」とのことだ。

ひとしきり話しおわり、少しの沈黙があって後、彼はおもむろにこう言った。

「オレ達がキライな国はたった一つだけさ、どこだかわかるかい?」

今まで冗談を言ってたのが、急に真顔になっている。どしたんだ?

「さぁねぇ・・・、どこ?」

たしかイスラエル人がキラわれているってのは聞いた事がある。
しかし、彼の答えは違った。

「ビルマだよ。あんたは外国人だから知らんだろうけど、昔アイツ等は
このタイにやって来てメチャクチャな事しやがったんだ」

かつて、ビルマはタイに侵攻し、当時の都アユタヤを占領、徹底的に破壊して
その王朝を滅ぼした。その後、アユタヤ朝の遺臣タクシンが反撃の兵を挙げ、
ビルマ軍を追っぱらい、タイの独立を回復した。オイラもそれ位の事は
知っている。でも、ひとの国の歴史を知ったかぶるのはいやらしいと思って
ひかえめに答えた。

「うん、本で読んだ事あるよ、でも何百年も昔の話なんだろ?タイ人は
 まだそれを恨んでるのかい?」

「忘れるモンか。同じ仏教徒がだぜ、寺を焼いたり、仏像をブッ壊したり
 おまけにコム・クーン(皆さん、意味はなんとか自分で調べてね。ボクちゃん
 にはとても書けないので)まで・・・そんな事どうして出来るってんだ。
 奴等は人間じゃねぇ、畜生だ。他の人にも訊いてみな、
 オレ達は永久に奴等を許さないぜ、絶体にな。」

彼は静かに、だが力のこもった口調でそう語るのだった。

タイとビルマとの間には、現在も多少のしこりが残っているとは聞いていたが、
これ程激しい言葉を聞こうとは思わなかった。オイラは常々、タイ人というのは
恨みを永く蔵している事ができない人達だと思っている。
それだけに、この運ちゃんの話はちょいとした驚きだった。


彼の話に興味を覚えたオイラは、それから数日後、いつも何かと世話になっている
兄貴分のジャイさんに尋ねてみた。

「う〜ん、その運ちゃんは極端だけど、まぁ大抵のタイ人はビルマに対して
いいイメージ持ってないね。学校でも第二次大戦の事より詳しく教えるし」

「ビルマを許すなって?」

「いや、そんな事は言わない。タイはモメ事はキライだけど、イザと言う時は
皆で力を合せて戦いましょう、って教えるのさ」

なるほど、その事はタイ人を見ていると確かによく解る。
彼等は普段とても穏やかで、無用に外国人を襲ったりは滅多にしないし、
外国人が何かやっても大抵の事なら笑って許してくれる。しかし、ひと度
侮辱を受けようモンならもう誰にも止められない。たとえ相手が図体のデカイ
ファランであっても、ひるむ事なく挑みかかって、ブチのめしてしまう。

オイラは、タイ人の誇りを足蹴にして血祭りに上げられたファランや日本人を
何人も見てきた。
なんてったってムエタイの国です。強いのなんのって。
つくづくタイ人とはケンカしたくないモンだと思う。

話がブッソウになってしまった。
ジャイさんとの話が続いている。

「ジャイさん自身はどうです?やっぱり、ビルマの人がキライ?」

「さぁ、どうかな、別にイヤなビルマ人に逢った事はないしね。
ま、タイだビルマだは関係ないんじゃないかな。ヤな奴はどこにだっている」

そうだよな、所詮は人と人だもの。つまらない歴史やイデオロギーにとらわれる
必要はない(けど、まだ世界にはこんな当り前の事が解らない奴が
ゴマンといるってんだから、やんなっちゃうよな)。
あの運ちゃんにしたってああは言ったけど、
実際に気のいいビルマ人にでも逢えばきっと"まぁ中にゃあいい奴もいるさ"
なんて言うにちがいない。彼はビルマを憎んでいるワケじゃない。ただタイを
愛しているだけなのだと思う。

何かを思い出したらしい、ジャイさんが不意に、プッ と吹き出した。

「ビルマって言えばね、面白い話があるんだ」
そう言って彼は、次のような話をしてくれた。

とある田舎町に、一人の若い僧侶が迷い込んで来た。西も東も分らない。そこで
一軒の民家の前に佇んでいた老爺に声をかけ、道を訊ねた。小乗仏教の国々では
僧侶は尊敬され、大切にされる。老爺はよろこんで僧に道をおしえた。が、ふと
この僧が話すタイ語に不審をいだいた。

「その〜、失礼ですが、御坊はどちらからいらしたので?」
「ビルマです」僧は淀みなく答える。と、老爺の表情はにわかに固くなり、
僧をその場に待たせると家の中へかけ込んでいった。
僧は、何事だろう?と怪訝な顔。
待つ事、二,三分、老爺に代わって家の中から躍り出たのは何と、パチンコを
手にしたガキんちょだった。

「!?」

僧は事態がのみこめず、その場に立ちつくす。
ガキんちょは不敵な笑いを浮かべると、ポケットからタマを取り出し、
立ちつくす僧めがけてパチンコを撃ち始めた。
何しろ日頃から人を射ってみたくてウズウズしていた、今日はおじいちゃん
公認だ。相手は坊さんだが構うこたぁねえ、やっちまえ!
ガキんちょは嬉々として撃ちまくる。
哀れ坊さんワケわからぬまま

「あれぇ〜、これはまさしく法難ぢゃ〜っ、なんでこ〜なるのっ!」
と、命からがら(?)逃げて行ったとさ・・めでたし、めでたし・・・

オイラはこの話を聞いて、大笑いし、そして嬉しくなった。
恐らくそのじっちゃんは、できる事なら自分の手で坊さんをやっつけたい
と思ったに違いない。しかし高齢なのでそうもできず、仕方なく自分の小さな
孫をして一矢報いさせたというわけだ。
なんとも憎めない、カワイイお話ではないか。坊さんにゃ悪いけど。

でもまぁ、タイとビルマとの事はもう数百年の昔の話で、既に歴史としては
熟成されてしまっている。
オイラはそんなタイの人々が大好きで、彼等の肩をたたいて"ワッハッハッ"と
哄笑したい気持ちで一杯なのである。
                     〈つづく〉
      
それでは、第十一号の発刊予定は、9月9日です。
お楽しみに・・・
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