△━1999/10/30━━━☆━━━━━━━━━━━━━━━☆━━━━━━━━━
★☆ たま
◇◆◇ バンコク発!<地球>乗り見聞録
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(月一回発行)
◇◆ 久慈ちゃんのバンコクで、たま乗り
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∥ 揚げたての美味いガイトートとなら俺の女房を交換してもいいぜ
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九月某日
例によってビザの切りかえをしに、
南タイヘ向うためオイラはフアラムポーン(バンコク中央駅)に居た。
列車は午後2:30の出発だというのに、12:00には駅に着いてしまった。
こういう所、オイラは変に気が早い。ビートたけしの親父はタ方4:00
開場のプロレス興行を観るために、朝7:00頃から会場に着いて
待っていたという。そんな話を思い出して独りで可笑しくなった。
待合所のベンチでぼけーっとしていると、ものすごいカップルが目の前に現れた。
二人とも日本人だが、男の方はまるで60年代のヒッピーがタイムスリップ
してきたかの様ないでたち。女はチリチリのド金髮に趣味の悪い厚化粧。
爪はシザー・ハンズの如く長く伸びている。
何と言うか、汚らしい事この上ない。
うわあ~、と思いながら眺めていると、一人のタイ人がカップルに近づいて来て、
何事か話しかけた。しかし二人はまるで相手にしない、
と言うか話が通じていないようだ。不得要領のままタイ人は離れて行った。
その後姿を目で追いながら、女がバカにしたように言った
「何?あのヒト」
これを受けた男の答えがふるっていた
「知らねェ、変なヤツだな」
だって。
オイラは思わず
「変なヤツはあんただよ」
とつぶやいてしまった。小声で言ったつもりが、二人にはバッチリ
聞えてしまったらしい。男はジロリとこちらを一瞥し、
一瞬何か言いた気な顔をしたが、
そのまま何も言わずキップ売り場の方へ去って行った。
またもう一人変なヤツがいるとでも思ったんだろう。
ところで彼等に話しかけた"変なヤツ"は何者だったんだろう。
彼には他にも何人か仲間がいて、日本人と見ると片っぱしから声をかけてゆく。
といって別に怪しい奴でもなさそうなのは、
首から何かのライセンスの様な物をブラ下げているのだ。
多分、旅行会社の客引きか何かなんだろうけど、
オイラにはいっこうに声をかけて来ない。どうやらオイラは日本人に見えないらしい。
2:00ちょい過ぎに列車が入線して来たので早速乗り込んだ。
前回、列車に乗ったのは、ラオスとの国境の街ノーンカーイからの帰りで、
いつものように二等座席車だった。その時なぜだか異常にしんどかった
(もうトシなのかも知れない)ので、
今回はちょいと贅沢に二等寝台車で行く事にした。B(の上)列車で行こう。
自分の席に着き、淡い期待を抱きながら、旅を供にする近隣席の人々を待った。
できれば一人旅のベッピンさん、いやいや、そんなゼータクは言わない、
せめて道中楽しくおしゃべりできる様な人が来てくれればいいな・・・。
だがしかし、人生とは無情なるものかな。
オイラの正面と、通路を挟んだ隣りの二席を占めたのは、
大声でしゃべるチャイニーズのおっさん達であった。
ガッカリしているオイラの気持ちをよそに、
おっさん達はまるでケンカでもしているみたいにデケェ声で喚き合っている。
こうなりゃしょうがねえ、前川健一さん風に言えば"毒食らわば皿まで"だ。
中国語を勉強するつもりで、おっさん達の会話に耳を傾けてみる
(イヤでも聞こえるんだけど)。
どうやら、この人達が話しているのは普通語(プートンホア,標準中国語)
とは違うみたいだ。"ホワぁ~"とか"マぁ~"とか妙に語尾を引くしゃべり方。
どっかで聞いた事あるぞ・・・。
そうだ、ジャッキー・チェンがしゃべってる言葉だ。っつー事は広東語か。
きっとそうだ。
しかし、オイラに解るのはそこまでで、後はただひたすら喧しいだけだ。
あ~っ!うざったい!!。
列車が走り出して間もなく、車掌が検札にやって来た。
と、おっさん達の一人がタイ語で車掌と話し出した。
外国人が話すタイ語ではない、ちゃんとしたタイ人の発音だ。
さっきの広東語も本物っぽかったが(少なくともオイラにとっては)
一体どちらが母語なのだろう?タイにはこういう人がザラにいるから面白い。
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
走行する列車の発するサウンドはオイラに、旅に出て来た事を実感させる。
それを妨げるおっさん達の蛮声に頭をブン殴られながら、憮然として窓の外を眺める。
棒っ切れで犬をブッ叩いている子供が見えた。
いいぞ、ぼうず、やっちまえ!叩き殺してスキヤキにしたれ!
タイに居て何がイヤかって、ノラ犬がやたら多い事だ。
夜道を歩く時なんて危なくってしょうがねえ。
野っ原の中に、変な白い楕円形の物がいっぱい広がっている。何だろう?
と思ってよく見てみたら、無数のアヒルだった。
その真ン中で、牧童らしき少年が一人、そいつらを蹴散らしていた。
牛や羊はよく見るけど、アヒルの放牧なんてのは初めて見た。
夕方6:00 注文しておいたメシが運ばれて来た。
普段は酒ばかり飲んで、あまりメシを喰わないオイラだが、
どういう訳か旅に出ると急に食欲が旺盛になる。
今日の晩メシは白米と、おかずにゲーン・パー。ビールは飲まない。
しょんべんに行くのが面到だから。
ゲーン・パーというのは野菜がたっぷり入ったカレーだ。辛い、けどうまい。
冷房が効いた静かな車両で、黄昏ゆく景色を見ながらの食事。
こんなのも、たまには悪くない。
メシが済むとすぐに、乗務員が寝台をセットしてくれた。
前夜はよく眠れなかったので、もうおネムだった。
寝床にもぐり込むなりコトッと眠りおちてしまった。
翌朝、寒さで目が覚めた。ハラヘった。
折よく注文をとりに来た食堂車のおネエさんに、モーニング・セットを頼んだ。
ごく薄切りのトーストに、ハムと目玉焼き、パイナップル三切れ、ジュースと紅茶。
これで80バーツ。
ちょいと高いが、うまかったからいいや。
7:40 列車はハジャイの駅に到着、オイラはここで下車。
ハジャイ、南タイ最大の都市。オイラ、この街とはイマイチ相性が良くない。
また何か喰いたくなったが、ひとまず堪え、乗り合いワゴン車で
マレーシアとの国境の街、パダンベサール(以下、パダン)ヘ向った。
運賃は35バーツ。駅前で声をかけて来たタクシーは、400バーツだと言っていた。
実はオイラ、パダンへ行くのは初めてで、
どうやって行ったらいいのかまるで知らなかったのだが、
早まってタクシーに乗らなくて本当に良かった。
パダンには小一時間程で着いた。
ワゴンの運ちゃんに国境ゲートまで送ってもらい、手続きを済ませ、
マレーシアへ入国したが、つまらないので30分もしないうちにタイヘ戻った。
街の中心にいい宿(一泊180バーツ、テレビ付き)を見つけ、水浴びして
散歩に出た。パダンは一時間もあれば隅々まで散歩できてしまう程度の
小さな街だが、なかなか賑やかで面白そうな所だ。
夕方ゆっくりと散歩する事にして、
ガイトート(フライド・チキン)を買って宿に戻り、テレビを観ながら喰った。
南部へ来ると、普段バンコクでうまいガイトートが食べられない反動から、
まとめ喰いしてしまう。南のイスラムの人々が作るガイトートは、
ほとんどハズれる事がなく、今日のやつもひどくうまかった
(下手するとKFCよかうまいかも)。オイラがバンコクで住んでいる辺りも
イスラム教徒の多い所だが、これ程うまいガイトートに出逢った事がない。
テレビのタロック(お笑い)番組を観ているうちに眠ってしまい、
目覚めるともう夜の8:00をまわっていた。
さあ、水浴びをして街へくり出すとしよう。
昼間はあまり気付かなかったのだが、この街は小さいくせに、カラオケだの、
パブだの、マッサージだのといった夜の店がけっこうある。
その中の一軒に「サーオ・イサーン」(イサーン娘)という飲み屋があった。
イサーンの女性達がこんな所まで出稼ぎに来ているらしい。
二階がテラスになっている、ちよっといい感じのメシ屋を見つけ、
上にあがってビールとつまみにヤム・ヌア(牛肉のサラダ)を取って、
ささやかな晩酌を楽しんだ。
オイラの目の前のテーブルに、男三人、女一人のグループが座っていた。
女はどうやら"サーオ・イサーン"らしい。ちなみに、かなりの美人。
彼等の会話をそれとなしに聞いてみる。男三人の会話はタイ語なのか、
マレー語なのか。彼等のカオつきはどちらかと言えばマレー系に近いように思われた。
いずれにせよ、標準タイ語とほんの少しのイサーン語しか解らないオイラには、
彼等の会話はさっぱり理解不能だった。それは"サーオ・イサーン"も同様らしく、
男達の会話をつまらなそうなカオで聞いている。
時々、男の一人が彼女に通訳してやっていた。
オイラの背後は、おっさんとおばさん六人の宴会だ。
こっちの会話の方はある程度解ったが、えらい早口だ。
そう言えば、南の人々の言葉は早口でよく解らん、
という話が
「タイ鉄道旅行」(岡本和之・著 めこん)という本に出ていたのを思い出した。
ビールの酔いが心地良くまわってきた。
お~っし、せっかくだからもうちょいと遊んでやれ!
というワケで勢いづいてもう一軒(程々という事を知らない。オイラの悪いクセだ)。
「サーオ・イサーン」に行ってみようかと思ったが、南タイくんだりまで来て、
わざわざイサーン人に会いに行く事はない。
いつもバンコクではイサーンの人々に囲まれて暮らしているのだから。
南タイのベッピンさんとお話がしてみたかった。
何かショーをやっているらしいカフェーを見つけた。
中に入ると外から見た印像と違って広々としていた。一番奥にステージがあって、
そこは煌々とライトに照らし出されているが、ホールの方はまっ暗で、
ほとんど何も見えない。ステージ近くの席に着くと、
たちまち4人のおネエちゃん達にぐるわを囲まれてしまった。
他に客がほとんどいないから、彼女等もヒマらしい。
一緒にビールを飲みながら話を聴いてみた。が、なんの事はない、
一人の南タイ人を除いて全員がイサーン出身者だった。チャンチャン。
それでも彼女等は愛相が良く、話は楽しかった。
すっかり酔っぱらってしまった。おネエちゃん達に別れを告げ外に出た。
ハラがへっていたので、宿の正面のメシ屋に入り鶏粥を喰った。
部屋に帰ろうとしたら、宿の玄関にカギがかかっていて中に入れない。
コンコン、お~い、開けちくれい。
ロビーで眠っていたらしい少女が仏頂面で出て来て、忌ま忌まし気に言った。
「どこ行ってたの?ここの門限は十一時ですよ」
そうか、そりゃあ知らなんだ、起こしちゃってゴメンよ。
おやすみ・・・。
それでは、第十二号の発刊予定は、12月9日です。
お楽しみに・・・
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