△━2000/2/5━━━☆━━━━━━━━━━━━━━━☆━━━━━━━━━
★☆             たま
◇◆◇     バンコク発!<地球>乗り見聞録
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                          たぶん(月一回発行)

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◇◆ 久慈ちゃんのバンコクで、たま乗り 
 ◇                            
‖ ♪えきぞちぃ〜ぃぃぃっく   じゃぺぇ〜ん!♪
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3年ぶりの東京散歩だった。
昨年も、その前年にも日本に帰って来た事はあったが、
いずれもほんの2,3日の滞在でその間、
実家に閉じ込まったきりどこヘも出かけなかった。
今回は年末から正月にかけて2週間ほどゆっくり滞在していたので、
久々に東京の街を歩きまわってみた。

まずは大手町へ行き、昔勤めていた飲食店を訪ねてみた。しかし、
まだ27日だというのにもうすでに仕事収めしてしまったらしく、店は閉っていた。
いつもなら年末ギリギリ、
30日位までは営業していたのだが、やはり客足が遠いのだろうか。
昔の仲間に会って一杯やろうかと思っていたのが、アテはずれになってしまった。
仕方ない。諦めて、有楽町の方へ向かってのんびり歩いていった。

いっつも騒がしいバンコクに慣れてしまったせいか、
東京の街はとても静かな様に思えた。
年末で、不景気だからということもあるだろうが、
それにしてもこんな静かな街だったかな、と妙な違和感は拭えない。
バンコクを歩いていると、バリバリとやかましいバイクやトゥクトゥクが
スッ飛んで行き、暴走バスが鼻先をかすめ、海千山千のポン引きやら、
傍若無人なオカマやらといった有象無象が絶えず声をかけてくる。
しかし、ここでは車の音も運転も大人しいし、誰一人声をかけて来る者もない。
誰もが黙々と固い表情でスタスタと歩いて行く。

後になって少しは実感できた事だが、今年は暖かくて、
とても過ごしやすい冬だそうだ。しかし南国から来たオイラには、やはり、
ビルの間を吹きぬけてくる寒風が身にしみてこたえた。
特に首すじのあたりが寒くてかなわん。
だったらマフラーでもすりゃあ良さそうなモンだが、
オイラは昔から首すじをしめつけられる事をどうにもガマンできない。
ネクタイをしめるのもイヤだ。
だからサラリーマンにはならなかった。いや、なれなかったんだな・・・。

まっ黒に日焼けして、変な色の口紅をつけた女のコがヤケに目についた。
まるでダッコちゃんだ。

「日本の女のコはカワイイよなぁ、色が白くってさ」

タイの男達は、遥かな憧憬の念を込めてそう言う。
彼等がこの女のコ達を見たら何と言うだろうか。
オイラにしても美的感覚がタイの男の様になっているため、
とても彼女等を美しいとは思えなかった
(何も色の黒い人を醜いと思っているワケではない。
ただ、やたらにまっ黒い日本人という、その不自然さが異様に思えるのだ)。

こういう珍妙な事が流行る因は、言うまでもなくマスコミにあるに違いない。
マスコミは彼女等に"ガングロ"とやらの称号を与え、変に持ち上げている。
例の"援助交際"というヤツにしてもそうだが、
マスコミはそういった現象を興味本位に取り上げて煽り、
そのクセ口では「これでいいのか」などと尤もらしい事を言う。
ここ数年に頻発している様なワケの解らない事件を生む原因の少なくとも半分は、
そういったマスコミの無責任な姿勢にあると思う。
オイラ如きが何を言っても仕方ないけど。あえて言わせてもらえば
「お前らこそそれでいいのか」ってなモンである。

有楽町に着いた所で、猛烈にハラがへった。
立ち食いソバ屋で天ぷらソバを食いながら1つの事に気がついた。
どうにもソバが食いづらいのである。何でだろう、としばし
ハシを止めて考えてみて、ハタと思いあたった。音を立てずに食っていたからだ。
タイに住み始めた頃、タイ人とソバを食っていて、よく注意された。
オイラが日本の作法どおりズルズル音を立ててソバを啜っていると彼等は決まって、
「よしなさい」と言ったものだ。当時はタイ語がよく解らなかったから、
きっと、はしたないからなのだろうと思っていた。
それでも最初のうちは、なかなかそれを治せなかった。
しかし、ある事があってそのクセが治まったのである。

ご存じの様にタイではメン類に、酢や砂糖(!)、
そして粉トウガラシをたっぷり入れて食べる。オイラもタイに慣れてくるにつれて、
それらを入れる量が増えてきた。トウガラシを大量に入れてメンをズルズル啜ると、
ちょいとした拍子にトウガラシが気管に入ってしまい、
死ぬ程苦しい思いをするのだ。ゲホゲホと苦しみながら、
オイラは「なるほど、メンをすすっちゃあいけないっていう
ホントの理由はこういう事だったのか」と、涙と供に思い知ったというワケだ。
そして日本に来てソバを食い、改めて、
いつの間にか自分がすっかりタイの作法に染まってしまっている事を実感した。

その後、お茶の水、秋葉原、新宿とウロつきまわったが特に変った所もなく、
面白くもなかったので家に帰る事にした。
埼玉の実家の最寄り駅に着き、駅前でバスを待った。間もなくバスが来た。

人々が乗り込み、その列が動き始めた時、
横合いから少し脚の悪いらしいオバチャンが両手いっぱいの荷物を持って、
ヨタヨタと列に近づいて来た。割り込もうというのではない。
彼女は杖を使っていた。しかも両手に大きな荷物を持っている。
乗り口のステップを上がるのが難儀で、
誰かが手助けをしてくれるのを待っている様だった。
だが人々はオバちゃんを尻目に誰一人、助けようともせずにバスに乗り込んで行く。
オバちゃんは縋るような目で人々の冷たい横顔を見つめている。
こんな時、タイだったら必ず誰か助けの手を差し延べる人がいるものだ。
オバちゃんと目が合った。オイラのハラが読めたらしい。
オバちゃんはおずおずと言った、「あの・・・悪いけど・・・」。
皆まで聞かずに、オイラはオバちゃんの荷物を持って先にステップを上がった。
続いてオバちゃんも難儀そうに上がって来た。

久「どこに座るかい?」
オバ「あぁ、そこのイスでいいわ」

オバちゃんが指し示した席に荷物を置いた。

「ほんとにご親切にねぇ、どうもありがとう」

オバちゃんが礼を言ってくれたが、
オイラはぎこちなくほほ笑んだだけで、咄嗟に言葉が返せなかった。
さっきから我々のやり取りを見ていた乗客どもの目が気になったからである。
その目はこう言っている様にその時のオイラには感じられた
「このエエかっこしいのおせっかいめ」。
タイではこんな事は日常的な光景だから、いちいち気にとめる人などいない。
日本でこういう事をすると奇異の目で見られ、
ひどく恥ずかしい事でもしたかの様な気にさせられる。バカな話だ。
オバちゃんが降りる時も、やはり助けに出る人はいなかった。
オバちゃんを降ろしながら車内の広告に目をやった。
「地球にやさしく云々」
ばかやろう、そんな事よりもっと人にやさしくしやがれ。

とは言うものの、オイラも、もしタイで暮らしていなかったら
こういう行動はなかなか出来にくかったろうな、とも思う。
タイ人達と接していると、人に対する思いやりのようなものが、
ごく自然に身につく。
これはタイ生活の素晴らしい効能の一つだ、と特筆しておきたい。

その後の数日間は、親父と飲みっくらをしてヘベレケになったり、長い事会
っていなかった親類を訪ねたり、中学時代の悪友どもと遊びまわったりして過ごし、
年が明けて8日にバンコクへ戻った。成田まで見送りに来てくれた伯母や、
兄貴(といっても従兄)のヨメさんが涙を流して別れを惜しんでくれた事に、
ちょっと胸が痛んだ。

夕刻、バンコク到着。寒い日本に2週間もいたのだから、
さぞかしバンコクが暑く感じるだろうと思っていたが、
案に相違して空気はヒンヤリと冷たかった。おかしい、カゼでもひいたんかな?
後で友人から聞いた所によると、この年末年始、バンコクでは
何十年に一度という、息が白くなる程の寒い日が続いたのだという事だった。
やれやれ、こりゃあとんだミレニアムになりそうだ。

空港からタクシーで自宅へ向かった。
その運転はものすごく恐ろしく感じられた。他の車も同様で、
車間距離をほとんど置かず、メチャなスピードですっ飛ばして行く。
そう、ここはバンコクなんだ・・・。

ドハデなネオン・サイン。イルミネーション・ツリー。
ミドリやピンクに輝く飲み屋の灯り。様々な光が流れてゆく。
遅れていた高架鉄道もすでに開通した。でも、きっと運賃は高いのだろうな。
オイラにはあまり用のない代物だろう。
なんだかちょっとブルーな気分だ。きっと日本に長居しすぎたせいかな。
良くねェな。頭を左右に思いきり振って気を取り直した。

さあ、これからまた、この狂乱怒涛の街をダラダラと生き抜いてやろうじゃないか。

旅の終りってヤツはいつも、オイラをそんな気分にさせる。


それでは、第十三号の発刊予定は、3月5日です。
お楽しみに・・・
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