△━2000/5/27━━━☆━━━━━━━━━━━━━━━☆━━━━━━━━━
★☆             たま
◇◆◇     バンコク発!<地球>乗り見聞録
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□■□■□━━━━━━━━http://www.hi-ho.ne.jp/qwerty/[第十三号]━━

                          たぶん(月一回発行)



今年はドリアンも豊作だそうな。



◇◆ 久慈ちゃんのバンコクで、たま乗り 
 ◇                            
‖ 恋人も濡れる街角 〜 友人への手紙より〜
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拝啓 ○○大兄

その後、大兄におかせられましては、つつがなき御様子、誠に祝着と存じ上げ早漏、いや、候。

別に用件は無いんだけど、近頃、妙に筆マメになったので、また手紙を書いてみる事にしました。

知ってるかもしらんが、先月(4月)の13〜15日にかけて、タイ暦の正月にあたるソンクラーン(水かけ)祭りだった
(新聞によると日本でも、在留タイ人が祭りを楽しんだらしいね)。
オイラはお客さんを連れて、タイ東北部のコラートという所に行ってきた。
本来ソンクラーンは、北部のチェン・マイという街がメッカとされているのだけれど、
コラートでも負けず劣らず狂乱怒涛の水合戦が繰り広げられ、
"そりゃあもう、街は大騒ぎさ!"(古い)。
それでは、具体的に祭りの様子を書いてやろう(偉そうだな)。

この祭りの意義とは参加する事にある。老若男女、タイ人、外国人の区別なく人々はそれぞれの得物
(水鉄砲である。どでかい「たけし城」で使っていた様なヤツから、
昔ながらの押し出し式、果てはシャンプーや洗剤等の空容器まで、実に様々だ)を手に壮絶に水をかけ合う。

血気盛んな若い衆は、バイクに2,3人とまたがり、路傍の人々を掃射しながら街中を縦横無尽に走り回る。
その様は、かつて中国の辺境を脅かした騎馬民族の如くだ。
トラックの荷台に水をつめたドラム缶を積んで、手桶で水を浴びせかけて回る連中もいる。
これは、さながら重戦車といったところ。
それらを迎え撃つ側の人々は、これもまた大きなドラム缶を路上に据え、
あるいは、市のイキなはからいで設置された特別の給水蛇口辺りに陣地を構えて応戦する。

一番えらい事なのは、そんな修羅場の中を歩いてくぐって行く人達だ。
なんせ四方八方から水が飛んで来て、片時も油断がならない。
オイラは、お容さん、しかもお年寄りのちょっと体の弱い人を連れていたので、なおさら大変だった。
カゼでもひかれちゃコトだから、防御用にカサを持って常にそのおばあちゃんに寄り添っていたのだが、
何分、多勢に無勢。防ぎきれるワケがない。
結局、おばあちゃんも相当に被弾して、びしょ濡れの粉だらけ(というのは、
水をかけると供にべビー・パウダーを水に溶いたやつを頬っぺたに塗りたくるのがこの祭りの作法なのだ)にされちまった。
それでも、おばあちゃん大変に喜んでくれて、
「いい冥土の土産ができたよ」なんて言ってた。

年に一度のソンクラーン。
タイ民族最大のイベント。
皆が兄弟、家族である事を確かめ合う日。
若者達は、美しい黒髪に水玉を輝かせながら無邪気にはしゃぐ娘たちに心ときめかせ、
そして、なんとかお近づきになろうと水鉄砲を抱え、突撃を試みる。

ワンパクだけど、どこかはにかみ屋でもある子供達がオイラの顔を見つめ、水をかけてもいいものか、どうか躊躇している。
「かまわねぇ、エンリョはいらないからドーンと来い!」
子供は嬉しそうに破顔一笑。小さな体で大きなバケツをエイヤッと持ち上げ、オイラにぶちまける。
「うしゃ〜っ!しゃっけえなぁ オイ!」
ごていねいにも氷が入っていた。

混雑した道路を、お巡りが濡れネズミになって整理している。
その顔は、こんな仕事おっ放り出し、自分も騒ぎに加わりたくてウズウズしている、という感じだ。

不キゲンな顔なんてどこにも見あたらない。文字通り、全てを水に流してしまう日だ。
心の底から楽しそうな人々の笑顔を眺め、オイラは一人思う、
"人間てなぁ、いいモンだ"と。

年の頃は15,6といった感じの小娘が、花のようなほほ笑みと供に言った。
「サワッディー・ピー・マイ」(新年おめでとう)


・・・と、まぁざっとこんな感じだ。
よかったら来年は皆で遊びに来てはどうか?。日本の花見よか面白いぜ。びじょびじょの美女もいっぱいいるしな。

それではまた手紙書きます。
御身、御大切に。
              敬具




◇◆  こばちゃんのバンコクで、たま乗り 
 ◇                            
‖    柔らかい水
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ソンクラーンというと
みんなで元気にわっせわっせと水をかけ合う風景を想像するかもしれません。

  飛び散る水しぶき。 高揚した躍動感。 

実際そのとき私は

子供たちが大きなマグナム44(水鉄砲)を持って人に水をかけてはダハハといたずらっぽく豪快に笑う

そんな姿を思い浮かべながら、ちょっとびくびくしながら、
そして、ちょっとわくわくしながら外に出かけていったのです。


そのとき予想外に外には誰もいませんでした。
きっと元気な子供たちはお昼ご飯を食べていたのでしょう。
実は私もお昼ご飯を買いに外へぷらぷらと出かけていたところだったのです。

白昼の中の妙な静けさに、すこし拍子抜けした私は
そそくさといつも通っている食堂に足を運びました。
カンカン照りの暑い日でした。

食堂には15、6歳のいつものお姉さんが一人立っていました。
彼女は主人の妹さんのようで、いつも兄の手伝いをしています。
この食堂でご飯を食べるときは
いつも顔を合わせていたのですが、今まで一度も言葉を交わしたことはありませんでした。

彼女は私を見つけると
今まで一度も見せたことのないような顔で少しうれしそうに笑った後
奥に引っ込んでしまいました。
そしてすぐにニコッと笑いながら戻ってきました。手に水桶を持って。

彼女は私のすぐ近くまで来ると
手で水をすくい上げ腕のところに少しだけ水をかけてくれました。


   私はそのときのことをほとんど覚えていません。
   でも、ひとつだけはっきりと忘れられないことがあるのです。



      それは、「その水がとても柔らかかった」ということ。



子供たちにかけられるあの、おてんばのようにはしゃいだ水ではなく
興奮に包まれた人々たちにかけられるあの、はじけるように刺激的な水でもなく

それは静かに落ち着いている、
そう、そのとき思い浮かべた言葉がひとつあります。それは


     ナーム ̄チャイ (心の水 → 優しさ、思いやり)


でした。
そんな水でした。
柔らかくて全てが包み込まれてしまうかのようにやさしい水でした。




それでは、第十四号の発刊予定は、7月5日です。
お楽しみに・・・

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