△━1999/6/6━━━☆━━━━━━━━━━━━━━━☆━━━━━━━━━

★☆             たま

◇◆◇     バンコク発!<地球>乗り見聞録

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□■□■□━━━━━━━━http://www.hi-ho.ne.jp/qwerty/[第九号]━━

                       (月一回発行)

 

 

◆◇ コバちゃんの世界で、たま乗り 

 ◆                            

‖(9)ベンチのある風景、寝ころびの街  

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昼間、薄暗い部屋に居るのもなんなので

何をするわけでもなく、ふらりと外に出てみることも多い。

 

出てはみたものの

外の強烈な日射しの中で黙々と歩きつづけることができるわけもなく

運動不足でひよわな私はヘナヘナと

すぐにどこかで一休みなどしてしまう。

歩いている時問などより、休んでいる時間のほうがかなり多いだろう。

 

とにかくそんな一休みをするのに

手軽で手っ取り早いのがべンチなのである。

 

タイの街を見回してみるとたくさんのべンチがどこにでもあることがわかる。

 

モーターサイの兄ちゃん達ご用達の休憩所べンチ。

誰が作ったのか分からないようなべンチに腰ける物売り。

べンチで熟睡している市場のおばさん。

 

一般住宅の前にもべンチが並べてあることも多い。

 

おうちの人がそこでひなたぼっこや夕涼みをすることもあるだろうし

訪問客がしばし外で待つときのためにも使われるのだろう。

僕のような見知らぬ旅人が疲れて一休みしたいときのためのスペースに、、、

とまで考えてくれているのかもしれない。

 

べンチには石で作られたもの

プラスチックで作られたものなどがあるが

なんといっても肌に一番なじむのは木製だろう。

 

そんな木製のべンチでできた

いなかのバスの停留所が好きだ。

 

タイ式のデザインで作られた立派な屋根に、

3つの長い木製べンチが正方形方に配置されている。

 

家屋というには少々小さいが、バスの停留所というには立派すぎる建物だ。

少なくとも十五人は優に座れるスペースがあり、立つ人も考慮すると

四十人ぐらいぎゅうぎゅうと詰め込むことができるだろうか。

 

まあ、そんなにバスを待つ人はいないのだろうが、

雨季には毎夕遭遇するであろうスコールのときの

一時雨やどり避難所として彼は十全に威力を発揮する。

 

時々どうみてもべンチには見えないものがある。

背もたれがなく座るところが異様に広い彼ははどうみても簡易べットである。

時々ご丁寧にも敷布団と枕まで用意してあることさえある。

公衆ベンチならぬ、公衆お昼寝べット?

 

時間とは相対的なもので

熱い火鉢を五秒お尻に付けるのは永遠にも等しい苦しみを感じるが

面白い二時間の映画があっという間に幕を下ろしてしまうように

現在の私にとって、バンコクにいる日々の生活は

時間のない竜宮城で暮らす浦島太郎さんに似ている。

 

以前、約束の時間に

友人が三時間遅れてきたのではあるが

くつろぎ、とうたた寝のなかで過ごしたその時間は

まったくたいした長さではなかった。

 

「ごめーん、待った?」

「ううん、べつに。

 眠り込んで夢見てたら、あっという間にこんな時間かあ。」

 

これぞ「くつろぎのマジック」という奴であろうか。

 

   

◇◆ 久慈ちゃんのバンコクで、たま乗り 

 ◇                            

‖(9)Have You Ever Seen The Rain? 

‖==================================================================

 

皆様、ご無沙汰して本当にどうも申し訳ありません。

いかがお過ごしでしょうか?オイラは相変わらずダラダラと

非生産的な毎日を送っております。

今回もとりあえず、その中で考えた様々なムダ思案を

これから書き綴ってみようと思います・・・。

 

もう6月になっちゃった。今年は雨がよく降る。

各地で洪水が起こって大変らしい。一緒に住んでいたコバちゃんは、

キー・マオ(酔っ払い)のオイラに愛想を尽かして部屋を移ってしまった。

オイラも、とある日本人がバンコクに貸りている部屋を、その人が留守の間

管理するよう頼まれているので、自分の部屋へはあまり帰らない。

テレビもステレオも冷蔵庫もある、居心地のいい部屋だ。

 

今日もそこで、朝からテレビを観て過ごしていた。最近はだいぶタイ語が

解るようになってきたので、テレビを観るのもぐんと面白くなった。

タイのテレビは変におカタく、オッパイを映すのはもちろん御法度で、

タバコを吸っているシーンや、銃を人に突き付けているシーン等に

モザイクがかかる事がある。もっと驚いたのは、ほんの小さな子供の

チンチンにまでモザイクがかかった時だ。いいじゃねぇか、そんなの。

かえってやらしっぽいよな。そのくせニュースなんかじゃ人の死体を

平気で映したりするんだからワケ解んないぜ。

 

5月31日は世界嫌煙デー(正式には何というのか知らない)だったらしい。

タイでもテレビやラジオ、新聞で、凄まじいばかりに嫌煙を煽っていた。

「タバコはあなたの健康を蝕みます」

「タバコはあなたの未来を奪います」

「タバコなんか吸う奴ぁ人間じゃありません」

うっせーバカヤロ、大きなお世話だ!これじゃまるでファシズムじゃねぇか。

とオイラは一人、憤慨していた。

 

そこで、6月1日のニュース。タイの嫌煙イベント中、巨大なタバコのハリボテ

に火をつけて燃やしたところ、何人かがヤケドを負ったらしい。オマヌケ。

そう言ゃあ、以前成田空港で、ナントカ嫌煙友の会という団体のジイサンたちが

その団体名を染め抜いたタスキを掛けたまま、タバコを吸っているのを見た事が

あった。嫌煙運動なんて、所詮その程度のモンなんだね。

オイラはなんと言われようがタバコは止めない。そのかわりタバコが嫌いな人にも

迷惑はかけない。それでいいじゃないか。

 

午後2時過ぎ、友達の女のコからの電話。

「ゴハンでも一緒にどう?」と誘ってくれたので、近くにあるデパートで

待ち合わせる事にして、水浴びの後すぐに出かけた。

 

彼女は美容師になるための勉強をしていて、夜はその実習も兼ねて、

ナイト・クラブのおネェちゃん達にメーク・アップを施す仕事をしている。

もうかれこれ一年近い付き合いになるが、お互い変な生臭い感情を挟むことなく

さらりとした姉弟のような関係を保っている。

気っ風のいい、さっぱりとした性格で、女にしとくのはもったいないくらい

度胸もいい。

 

名前を“X”という。オイラには彼女の他に“S”という女のコの友達

もいるのだが、タイ人の発音ではどちらも「エッ」と聞こえるので、電話など

かかって来ると、一体どっちからなのか判らないって事がよくある。

 

ん?“S”と“X”か・・・。これで“E”ってコと友達になれば

“SEX”だな。バシッ!!(←コバ編集長のツッ込みハリセンの音)

どうもオゲレツですみません。反省します。

 

話を戻そう。

MKのタイスキを一緒に食った。

「どう?美容師のほうは」

「うん、学校はもうじき卒業できそうなの。仕事も順調よ」

嬉しそうに彼女は話す。順調でなによりだ。

「一日に何人位こなすの?」

「多い時にはねぇ・・30人位かな。もう手首が痛くて、痛くて」

と右の手首を擦って顔をしかめて見せる。その細腕じゃ無理も無いな。

彼女はさっきから野菜ばかり食っている。白菜をナベにブチ込みながら話を続けた。

 

「人の顔っていろいろあるのよね、もともとキレイな顔のコはいいんだけど

中には・・こう・・・・」彼女は手を止めて視線を落とし、言葉を探している。

「どうなのさ」とオイラは、解っているくせにスッとぼけてきいた。

「すごくムズカシイ顔があるのよ、もう手の尽くし様がないような」

これには大笑いした。ムズカシイ顔たぁ良かったな。どんなんだ?

(ちなみに、この“ムズカシイ”を彼女は日本語で言った。タイ語で

ズバリ言ってしまう事を憚ったのだろうが、それがかえってこのセリフの

インパクトを強くしてしまった)

そういう彼女自身は?もちろん美人である。何にしても彼女の顔は、日々を

充実して過ごしているという自信で凛々しくみえる。うらやましい事だ。

 

ハラいっぱい食った。チェック・ビン(お勘定)をするために店員を呼んだ。

Xは自分のサイフを取り出そうとバッグの中を探っている。

あわててオイラはそれを制した。女性に払わせるなんてみっともない。

ところが彼女は聞かず、オイラが差し出すお札を押しのけて、さっさと

勘定を払ってしまった。

 

「おい、おい、頼むよ オイラに払わせてくれってば」

「いいの!アンタお金無いくせにそうやってカッコつけるから

いつも損するのよ。それに今日は私の方が誘ったんだから。

・・誘った人が払うのがタイ・スタイルなのよ」

そりゃまあそうだけどさ・・・・。

でも、こう言われちゃこれ以上食い下がると、彼女のメンツを潰して

本気で怒らせてしまうだろう。ここはご馳走になっておこう。

 

出口に向かって行く途中のテーブルに座っていた三人の女のコ達が、

一斉にオイラを見て囁き合った。

「みて、みて、あのコ」 「うん、カワイイね」

オイラは聞こえないフリしていたが、耳はしっかりダンボになっていた。

よせやい、そんな事わかってらあな。

 

タイの人々というのは、こういう所ひどくあけっぴろげで、恰好のいい男や、

ベッピンの女が通りかかると、じぃ〜っとそれを見つめる(いや、別にオイラは

自分が恰好いいなんて本気で思ってるワケぢゃないよ。あくまでも一般論です)。

そして見られている方はその視線にさり気なく余裕の微笑を送って答えるのだ。

オイラもそうしたいのだが、日本人は恥ずかしくてなかなかその“さり気なく”

っていうやつができない。それでもなんとか彼女達の方にむかってニコリと

してみると、彼女等は「キャ〜!」と歓声をあげてよろこんでくれた。

う〜ん、いい気分。まるで、ディカプリオにでもなったようだぜ。(こういうの

をタイ語でローン・トア・エーンと言う。つまり自惚れという事)

 

デレデレやに下がっていたら、突如、右の耳に痛みが走った。Xがオイラの

耳を引っ張ったのだ。あれ?なにそれ?。ひょっとして彼女はオイラに対して

友達っていう以上の気でいるんだろうか?。普段そんな女臭い事しない奴なのに。

ちょっと悩んでしまった。

 

外に出るとまた雨が降ってきた。

「じゃあ、私そろそろ仕事の時間だから、これでね」

そう言って、彼女は自分の車が停めてある方へ向かって去って行った。

しっかりとした、力強い後姿だった。

 

さあて、オイラはどうすべぇ・・・・。

ヒマだけど、この雨じゃどっかへ行くのも億劫だし、

部屋に帰って音楽でも聴いていよう。

 

雨脚は見る間に強くなってゆく、

深く溜息を一つついて、オイラは赤バスに乗り込んだ。

                           <つづく>

 

      

それでは、第十号の発刊予定は、7月1日です。

お楽しみに・・・

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