創世記エルジェネシス




『創世記エルジェネシス』は1996年にゲーム・フィールドから発行されたファンタジー
ロールプレイングゲームです。


システムが表現したいもの
『エルジェネシス』の基本は、「〜っぽい」です。


上の文章は『創世記エルジェネシス』のデザイナーズノートに記されているコメントで
す。それからも分かるとおり、『創世記エルジェネシス』というシステムが表現したい
ものは、「何か他の作品とよく似た」ストーリー展開です。その「他の作品」というの
は、特にTVゲーム、TVアニメが多いようです。
最新の独立型サプリメントである『神世紀エルジェネシス』の方は、明らかに「新世紀
エヴァンゲリオンとかファイナルファンタジー7とかっぽい」を目指したんだろうな、
と言う印象を受けました。


豊富な『キャラクターテンプレート』
この『創世記エルジェネシス』の特徴の一つとして、このキャラクターテンプレートが
あげられます。PCは数多くのテンプレートの中からプレイしたいモノを選び、そのデ
ータを書き写すだけです。この方法だと「データをダイスによって算出する」などの手
間が省けるため、キャラクターメイキングの時間が大幅に短縮できる、という利点があ
ります。
もう一つ、このテンプレートシステムには挑戦的な試みがなされています。
ランダムテンプレートというものを用意し、あえて全てのテンプレートを基本セットに
封入しなかったのです。セッションに参加する人間は全てシステムを持っていて当然で、
参加者全員が基本セットを持っていれば、テンプレートの補完はできるはずだと言う考
え方をすれば自然なんですが、現状だとその考え方は「一般的でなく不親切だ」という
取られ方をされてしまっているのではないでしょうか?


手を加えやすい『サンプルワールド』
大地ソフィアのルインファーナ地方がサンプルのワールドとしてつけられています。ご
くありふれたオーソドックスタイプのファンタジー世界(&神話)で、「〜っぽい」を
やるのにも妨げにはならないと思います。
ただ、「〜っぽい」をしなくても十分楽しく遊べるレベルには仕上がっているので、無
理に「〜っぽい」シナリオを作る必要はありません。
何よりも、サンプルワールドがついてこないシステムが多い中、それをしっかりと提供
していると言うところには好感が持てます。


手に汗を握る『戦闘』
V.I.P(ヴァリアブル・イニシアチブ・ポイント)システムで動く戦闘は、単純で
ありながら、それでいて表現力に富んだ楽しい戦闘を提供してくれます。
PCは自分の動ける範囲内で大きい攻撃や小さい攻撃、魔法、回避、防御などを行って
いく、と言うのがおおざっぱな説明です。
もちろん、大きな攻撃をすればもうあまり動けないでしょう。そうすると、回避や防御
行動もとれないので、隙ができてしまう事になるのです。
『創世記エルジェネシス』と言うシステムにおいて、最も白熱するのがこの戦闘といえ
るでしょう。


魅力に乏しい『行為判定』
大胆かつ繊細に作られている戦闘とは違い、行為判定は簡単すぎて表現力に乏しくなっ
てしまっているような気がします。判定自体は戦闘と変わりません。ただ、難しいの判
定ですら比較的高い確率で成功してしまうのはどうか・・・と思います。


キャラクターの個性を表現する『特徴』
『創世記エルジェネシス』において、キャラクター間の差をもっとも出してくれる項目
が特徴です。プレイヤーとして遊ぶ分には有利な状況を提供してくれることが多く、と
ても便利なものではありますが、GMをやる際にそれが裏目に出てしまうことが多いよ
うな気がします。どういうことかというと、特徴がプレイヤー側にとても有利になって
いるため、それが故にシナリオが崩壊してしまうことがあるのです。
その辺りを上手くまとめられない限り、GMにとってかなりネックとなってしまう項目
と言えるかもしれません。


サプリメント、エキスパンション
『創世記エルジェネシス』には現時点で『ナイト・オブ・ソフィア』というサプリメン
ト、そして『神世紀エルジェネシス』という独立型エキスパンションが発売されていま
す。そして、この12月には新たな学園を舞台にした独立型エキスパンションが発売さ
れるようです。
その点でも、かなり元気のあるシステムといえるかと思います。ただ、本体である『創
世記エルジェネシス』を店で見かけなくなったのが心配と言えば心配な点ですが・・・
(注:1998年11月現在の話です)


エルジェネシスの魅力
結論から言えば、『創世記エルジェネシス』という作品は「挑戦作ではあるものの、バ
ランスは今ひとつ」と言ったところです。
簡単すぎる行為判定、バランスの取りづらい特徴、不親切なランダムテンプレート・・
・ですが、それを補うくらいすばらしい出来の部分もあります。V.I.Pを取り入れ
た戦闘がそれです。このV.I.Pのおかげで頭を使わないと勝てない戦闘を楽しむこ
とができます。コンベンションでこの戦闘ルール部分だけを抽出した「武闘大会」が開
かれると言うのも分かるような気がします。
そういった意味でも大胆かつ繊細な戦闘が楽しみたい人におすすめのシステムといえる
かも知れません。

                                      (了)

                              創世記エルジェネシス
                               ゲーム・フィールド
                               ゲームデザイン
                               久保田悠羅&山本剛
                                 1996年発売


 

 

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Written by kazuha kitouin