ナイトメア・ハンター(夢魔狩人)




闇の中に潜む、魑魅魍魎
人の心に巣喰う、悪夢……夢魔
浄化の時は、まだ
ナイトメア・ハンターの救いがあるまで


あなたも体験したことがあるのではないだろうか...
夢の中での恐ろしい夢を、いいようのない不安にのしかかられるような夢を...

大概の場合は、「そんな思いをした」で済んでしまう。
夢とはそんなものだ。
ただときおり、現実味を帯びた嫌な夢を見ることがある。

あなたが特別だからだろうか?記憶力が良いから起きてまで夢をはっきり覚えているのだ
ろうか?

違う!

それは、密かに奴らが、あなたの夢の隙間に潜り込んでいる証拠に他ならない。

世界的な要人が急死する、権力者が政界財界から何の前触れもなしに引退する。

奴らは...ナイトメア...人の精神を喰らう....


ようこそナイトメア・ハンターの世界へ

「ナイトメア・ハンター(夢魔狩人)」は1988年に翔企画から出版されたブックタイ
プのファンタジック・ホラーRPGです。


・世界設定

 ・場所
  舞台となるのは、現代日本で(ルールブック中には1970年〜1980年代の日本
  と書かれています)、ほぼ、私たちの住む現実の日本と違いはありません。
  違う点はただ一つ、ナイトメア(夢魔)という不確かな存在が一般には認められてい
  ないものの、人の精神世界に悪影響を及ぼし、それに対抗すべくナイトメア・ハンタ
  ーと呼ばれる人々が、人知れず夢の世界で暗闘を繰り広げているということです。

  ルールブック中には、基本的に資料が準備できるならどんな世界で遊んでも良いと書
  かれています。
  たとえば、江戸時代の日本や1920年代のアメリカなどです。


 ・ナイトメア・ハンターの社会的扱い
  ナイトメアと戦う力は誰しもが持っているわけではありません。
  ほとんどの人は、夢の中で夢魔に弄ばれ、救いを求めています。
  ナイトメア・ハンターは、ナイトメア(夢魔)と戦う力、素質を持っている人たちで
  す。
  しかし、普通はその力を持っていることも知らず、使い方も知りません。
  ナイトメアに対抗する力を“組織”によって見いだされ、訓練を受けた者だけが、本
  当のナイトメア・ハンター、SNAT(スペシャル・ナイトメア・アタック・チーム)
  の一員になることができるのです。    

  ルールブック中では、ナイトメア・ハンターの社会的認知度を5段階の中から選択す
  ることになっています。

  国家(国際)エージェント(公認)〜組織はない
  
  「組織はないのに、組織で訓練は受けたというのは?」と思われる方もいるかもしれ
  ません。
  ここでいう組織とは、仕事を請け負う組織の認知度を表しています。
  訓練機関と一緒になっていることもありますが、訓練機関自体が謎の組織ということ
  もあり得るわけです。


・システム

 ・能力値
  能力値は筋力、知識、観察力、器用さ、体格、魅力、運、精神力の8つが設定されて
  います。
  それぞれの能力値がどんなものを指すのかは特別なものがないので想像できるでしょ
  う。

 ・技能
  このシステムは、クラス制ではなく(夢の中での話で、日常生活を送る上での職業は、
  ナイトメア・ハンターの認知度が「組織はない」で、なおかつ副業であれば様々です)
  、スキル制です。
  技能はルールブックでは

  コンピュータ、銃器、精神集中(後述)、自動車、オートバイ、刀剣戦闘、兵器、
  錠あけ、科学、機械工学、電子工学、地質学、医学、格闘、(各種)外国語、化学、
  かわし身、観察、考古学、忍び足、情報収集、植物学、神秘学、心理学、人類学、
  聴く、追跡、天文学、投てき、動物学

  の30例が提示されています。

 ・判定法
  使用する能力値(複数もあり得ます)+技能値 を目標値に
  6面体のさいころを振って、目標値以下がでれば成功となっています。
  そして、その行為の難易度によって振るさいころの数が加減されるようになっていま
  す。

・夢の中
  ナイトメア・ハンターでは邪悪なナイトメア(夢魔)と戦うときに精神力及び精神エ
  ネルギーを使います。
  夢の中ではそう、あなたが思い描いたものが「確かにある」と認識できたときに実在
  化するのです。
  剣から銃器に至るまで、精神エネルギーが許せば、飛行機や船さえも実在化させるこ
  とができます。
  通常は、精神エネルギーを消費して、さいころを振った値が精神力値以下で成功(通
  常の技能判定と大きく変わるわけではありません)ですが、実在化させようとしてい
  るものがどれほどの大きさか、プレイヤーキャラクターがよく知っているものか、入
  り込んだ夢の世界の住人(その夢を見ている人)がどれだけ知っているかというよう
  なことで振るさいころの数に修正が入ってきます。

  そして《精神集中》技能で一時的に精神力を高めることができます。そうすることに
  よって、実在化させにくいアイテムを、実在化させるのに有利になるようにすること
  ができます。

  夢の世界では、距離や方角、時間といった概念が存在しません。
  何キロも歩いた、といったことが起きたとしても、それは夢を見ている人の精神迷宮
  に惑わされているだけです。
  プレイヤーキャラクターたちがどこかへ移動しようとする場合は、そうした精神的な
  障害にうち勝つために精神力判定で成功しなければならないといった感じになります。

  また、夢の中で何日も過ごしたという経験をしたとしても、夢の中から脱出してきた
  ら、現実世界で1,2分のことだったということはよくあるようです。

・世界の闇に蠢く夢魔たち
  ルールブック中には全部で20体ほどの夢魔たちが紹介されています。
  中にはどこからか引っ張ってきた設定の怪物、というようなものもあります。
  いくつか例を挙げますと...

  ・古の種族
   蛸とも烏賊ともつかぬ容貌、背中には大きな羽根。未知の生物という設定になって
   いますが明らかにク○ゥ○フを意識しています。
  
  ・半魚人
   古の種族がそうならもうお分かりですね?あれです。
   ただ、この半魚人たちはもっと科学的です。
   幻覚発信器で人間に化けたり、
    未知の細菌を人に植え付けて半魚人化させたり、
   かなり怪しい連中になっています。

  注:ここら辺の記述が分からなかった方は、H.P.ラブクラフト という方の小説を読
    んでみてください。
    ホラー、オカルトRPGをやっている方なら、すでに読んでいるかもしれません
    が、読んでいない方には一読をおすすめいたします。

  ・O.D.D(アウター・デッドリー・ドロイド)
   O.D.D因子というものを植え付けてくる。
   この因子の摘出が遅れると、体を機械に乗っ取られるという、
   どうみてもス○ッ○ャーな怪物とか。

  他にもまともなものもいますから安心してください。
  ナイトメア・ハンターは日夜そういった化け物たちと戦っています。

・付属シナリオ
  このナイトメア・ハンターには導入部のショートシナリオ以外にも2本のシナリオが
  用意されています。

  ・第1の事件「地下鉄の夢」
   このシナリオはソロシナリオでパラグラフ形式になっています。
   プレイヤーは地下鉄に乗っている内に不思議な夢に誘われ、事件に巻き込まれてい
   く、救いを求める女性の声はあなたを頼ってのものなのか、あなたを奈落に落とし
   込む夢魔の囁きか...

  ・第2の事件「博物館の夢」
   このシナリオは複数のプレイヤーが参加して遊ぶために書かれたものです。
   ようやく、1人ではなくゲームマスター、他のプレイヤーと遊べるシナリオの登場
   です。
   依頼された先の博物館で起きる様々な怪異、その先に待ち受ける真実は?
   指輪があなたを悪夢へ導く...   

・総括
  さて、どうでしたか?
  ブックタイプのRPGなのでルールはそんなに難しくありません。
  導入もイメージの助けになる漫画や、ゲームブックのようにパラグラフを読み進めて
  いくと徐々にルールが理解できてくるといった流れで、TRPG初心者にも親切な作
  りになっています。
  現在では、ほぼ入手困難なRPGですが気楽にライトなホラーを遊ぶという点では取
  っつきやすかったシステムだと言えるでしょう。
  ゲームの雰囲気というか戦闘の雰囲気は、非力な人間が得体の知れない事態に恐れお
  ののくといった、純粋なホラーというよりも、マスターがシナリオ、演出を工夫しな
  い限り、困った人間を助けるために夢魔をばったばったとやっつけるという展開に往
  々にしてなると思います。
  おそらくそれは当時のOVA「ドリームハンター麗夢」という作品に(実際にこれを
  元にしているようです)触発されているからだと思います。
  夢の中の恐怖体験というアイディアでは「エルム街の悪夢」(これは本当に怖い映画
  です)といった映画にもアイディアを求めているようです。
  恐怖に恐れおののくのは、プレイヤーキャラクターではなく、依頼人たるノンプレイ
  ヤーキャラクターです。
  マスターは恐怖の演出に気を配らないと陳腐なヒーロー物のノリになってしまいます。
  夢の中の世界がいかに不思議な世界かというところに気を付けましょう。

                                      (了)

                         ナイトメア・ハンター(夢魔狩人)
                                     翔企画
                                 原案 勝木康明
                                 監修 藤浪智之
                                 1988年発売


 

 

Go to 紹介記事 page

 


Written by ragou