パワープレイ
パワープレイは1992年にHJ社から発売されたムックタイプのファンタジーRPGです。 また、サプリメントのパワープレイ2は1992年に同じくHJ社より発売されています。 ・システムの最大の特徴 なんと言っても、ワールドがないと言う点です。 数年前にHJ社から出されたCRY-MAX TRPG「熱血専用!」にもワールドはありませんが、 それでも漠然とした世界観だけは提示されています。ですが、このパワープレイには本 当に世界観の欠片さえありません。 オーソドックスかつ豊富な種族、アイテム、モンスター、魔法などに行為判定がついて いると言うスタイルは、差詰め「FantasyTRPGツクール」と言ったところでしょうか? ・種族 サプリメントであるパワープレイ2も含めると、人間から有翼人種までかなり豊富な種 族が揃っています(大日本書籍のアドヴァンスド・ファンタズム・アドベンチャー程で はありませんが)。ルールブックにも書かれているのですが、これらの種族を全て使う 必要はありません。GMが自分のシナリオ(世界観)にあった種族をピックアップして使 っていけばいいのです。 スキルや特徴と言った細かい項目がないので、種族による違いは能力値とイメージイラ ストの外見のみです。似通った傾向の種族もあるとは思いますが(完全にチェックした わけではないので正確には言えません)、違った傾向の種族が揃っているとは思います。 ただし、中には魔術士風の風体で描かれていながら、その実あまり魔術師系の職業に向 かないと言った種族もありますからご注意下さい。 ・職業 FantasyTRPGツクールですから、職業も豊富に用意されています。 職業の方も基本的に成長時の上昇する能力値の違い、そしてイメージイラストの違いで すが、スペルキャスター系の職業はもちろん魔法を唱えることができます。 マジックユーザー系の職業と比べると、それ以外の職業の違いは何か些細なもののよう な気がしてしまいます。 ・行為判定 能力値の1/10の数の6面体ダイスに、能力値の1/5の固定値を足したもので行為判定を行 います(共に端数切り捨て)。 また、振るダイスの数は自由に減らすことができます(時間をかけて行為を行うのなら ば、ダイスを振らずに固定値だけで判定しても構わないのです)(*1)。つまり、能力値 の高い(習熟した技術を持つ)人は簡単な仕事なら、時間さえかければ固定値だけで仕 事を成功させることもあり得ます。その点、能力値が低い人は固定値も低いので、いく ら時間をかけても成功しないものは成功しません。一か八かにかけるしかないのです。 ダイスを減らすことにはもう一つメリットがあります。このシステムでは行為判定で1つ でも1の目が出た場合、その行為がファンブルとなるので、能力値が高い場合は状況を見 ながらサイコロを減らした方が安全な訳です。 戦闘もこの行為判定の域を抜け出すものではありません。 (*1)1個でもダイスを振っている限りは、行為にかかる時間は変化しません。 ・魔法 パワープレイ2のものまで含めれば、魔法使い系魔法、僧侶系魔法、吟遊詩人系魔法、 精霊使い系魔法、幻術師系魔法、そして舞踊家系魔法と6つの系統の魔法があります。 系統によって魔法の内容もかなり異なってくるので、表情に乏しい戦士、盗賊、その他 系の職業と比べれば、マジックユーザーはかなりいろいろな表情を見せてくれると言え るかも知れません。 ただし、このシステムの特性上、レベルがいくら上がっても頭が悪ければ魔法は覚える ことすらできません。ですから、必然的にマジックユーザーになれる種族は限られてき てしまいます(別になってはいけないわけではありませんが)。 ・モンスター パワープレイ、そして2をあわせると、実に100体以上のモンスターデータが掲載されて います。基本的にモンスターの能力値は全て達成値で表記されており、戦闘の際、マス ターはダイスを振る手間が省けるなど便利です。 ただ、このままだとダイスを振らないわけですから、ファンブルにもなりませんし、は っきり言ってマスターが暇になってしまいます。その為に、ダイスを振るためのルール ももちろん用意されています。 ・パワープレイの魅力 非常に答え辛いのですが、バランスが崩壊しているわけでもないし、特に目を引くとこ ろもない。無難と言えば無難な出来のシステムです。 ただ、やはりワールドがないのがネックと言えばネックかも知れません。「RPGツクール」 があまり一般受けしていないのと同じように、生の素材だけでは扱いにくいからです。 このような「FantasyTRPGツクール」と言うような体裁に関しては、別に構わないとは思 いますが、サプリメントとしてでもいいので、何かしらのワールドを提示してもらいた かった、と言うような気はします。 初心者の方に最初の一冊に、と言うわけには行きませんが、オリジナルのファンタジー ワールドは作ってみたいけど、システムを作るのは面倒と言う人なら一度誰かから借り るなどして、目を通してみても損はないかも知れません(*2)。 (*2)1999年12月15日現在、パワープレイ、パワープレイ2とも絶版商品です。 (了) パワープレイ ホビージャパン ゲームデザイン 山北篤&スペース・ワン・ゼロ 1992年発売
Written by kazuha kitouin