ローズ トゥ ロード




最初にいて最後にいるものはハヴァエルである。
彼はすべての主である。
初まりの前にいて、終わりの後にいるものである。
(中略)
彼は善でもなく、悪でもない。
故に全ての主である。
(中略)
彼は多くの神々(スィーラ)を創った。
神々はその分だけ世界を創った。
世界はその分だけ神々を作った。
(中略)
それが際限なく続き、非常に多くの世界と、それらの世界を守護する非常に多くの神々が
いた。
(後略)

             −ファラノウム図書館『ユルセルーム創世神話』要約より−


世界に住まう人々は未だに、

「調和による永続性」たるイーヴォを崇めるものと

「試行錯誤による発展」たるデュールを崇めるものとに分かれ、

啀み合っていた...


「ローズ トゥ ロード」は1983年にツクダホビーから出版されたボックスタイプの
国産初の本格的ファンタジーRPGです。


・世界設定
 ・場所
  舞台となるのは、ユルセルームと呼ばれる世界です。
  この世界には至上神であるハヴァエルより守護を命じられた7柱の守護神がいます。

  
  運命・予言、白色、変化の決定、の象徴たるイーヴォ

  裁断者、黒、闇、の象徴たるデュール

  光、生、金色、太陽、の象徴たるオザン

  青、法、調和、海、の象徴たるアウル

  紫、伝達、知性、の象徴たるザリ

  赤、力、統治、山、の象徴たるガルパニ

  緑、本能、反応、幽界、月、の象徴たるメディート


  です。そして、これらの守護神(スィーラ)のうち、誰を守護神の長として信仰する
  かによってユルセルームの宗教はイーヴォ派とデュール派の大きく2つに分かれてい
  ます。
  
  ちなみに、具体的な様子も書きますと...

  ユルセルーム世界は、ユルセルーム亜地球の北半球、約南北3500km、東西40
  00kmに渡るユルセルーム大陸とその周辺諸島のことを指し、その気候は亜寒帯か
  ら熱帯まで幅広く、種族も、人間の他に妖精、小人、鬼族らが各々の地域で勢力を有
  しています。
  そして、この世界では魔法の力が今なお確かに存在します。
  文明度は中世ヨーロッパ的世界をモチーフとしているために低く設定されています。  

 ・ユルセルーム世界を冒険するものたち
  『ローズ トゥ ロード』では、プレイヤーキャラクターが具体的に何を為すべきか
  は明記されていません。
  つまり、ゲームマスターの了解さえ得られれば何をしても良いと言うことです。
  冒険を一生続けるものもいれば、一国の王を目指すものもいる...

  これは、デザイナーズノートの作者の言葉で、

  「厳密な意味で、ゲームデザイナーは、今、これを読んでいるみなさんで、私はただ
   RPGのヒントを与えたにすぎない」

  という言葉の中によく表されていると思います。
  
 ・キャラクタージェネレーション
  ローズ トゥ ロードのキャラクターメイキングはかなり特徴的です。
  能力値を決めてから、職業を決めていくという手順を踏んだりとか、キャラクターポ
  イントを消費してキャラクターを創っていくといったものではなく、D100ロール
  (00〜99までのパーセンテージロールです、10面体さいころ2つで決めます)
  で、種族から生まれ(どんな家系(もしくはどんな職業に就いている親)の子か)が
  決まってしまいます。
  それらが決まった後に、各能力値が決まるようになっています。

  能力値は、体力、俊敏性、精神力、魅力、の4つです。
  生まれが決まると各能力値の基本値が与えられ、それに6面体さいころを1個振った
  値を足したものが最初の能力値となります。    
  
  また、最初のキャラクターレベルは「0」から始まるのもおもしろいと思います。

  そして、この能力値の数値、キャラクターレベルによって、称号を獲得することがで
  きるようになっていて例えば、体力が10以上でキャラクターレベルが1レベル以上
  ですと、

  <冒険者>
  条件 体力10以上 レベル1以上
  特典 同種族間のコミュニケーションに+1の修整値

  といった称号を得ることができます。

・システム
 ・技術
  技術の修得のルールは書かれていますが、明確な運用方法は明記されておらず、運用
  は各ゲームマスターの判断に委ねられています。

  基本的な指針として、修得したい技術を教えてくれる人を捜し出し、魅力による反応
  チェックで相手が好意的に教えてくれるかどうか(具体的にはいくらお金を取られる
  か、です)をチェックし、といった感じで習得していきます。  

  技術はルールブックでは

  乗馬
  操船
  医術
  スパイ
  言語
   同種族外国語
   同種族辺境語
   異種族語
   古代語(死語)

  といった例が提示されています。

 ・判定法
  使用する自分の能力値(能動側)−相手の能力値(受動側)
  という能力値の差から、成功の確率(成功率(%))が導き出され、
  10面体のさいころを2個振って、成功率(%)以下がでれば成功となっています。
  そして、その行為の時の状況や技術を持っているといったことでゲームマスターの判
  断によって成功率が修正されます。

  例えば、戦闘では攻撃が命中したかどうかの判定に、俊敏性の能力値を用います。
 
 ・戦闘
  ローズ トゥ ロードにおける戦闘はなかなか緊迫したものになります。

  通常、戦闘は「戦闘ボード」と呼ばれるヘックスボード(6角形のマス目でうめられ
  た盤です)を用いてシミュレーションゲーム的に処理されます。

  このゲームではHP(ヒットポイント、キャラクターがどれだけのダメージに耐らえ
  れるかを表す数値)を別個に表すという概念がありません。
  受けたダメージは全て、体力、俊敏性、精神力、の3つの能力値で吸収しなければな
  らないのです。
  ですから、戦闘中に体力が0になれば即座に死亡し、俊敏性が失われていけば敵への
  攻撃が当たらなくなり、精神力が失われれば魔法もかけることができず、0になれば
  気絶してしまいます。

  戦闘は、極めて危険な行為となっています。

  また、戦闘に関しては「クリティカルヒット」、「アクシデント」という概念があり、
  戦闘における命中判定で
  01〜05のさいころの目が出れば必ず攻撃は命中し、有利な効果が得られます。
  相手の防具が壊れたり、ダメージが2倍になったり、あろう事か「即死」という結果
  もあります。
  また、反対に
  96〜00のさいころの目が出れば攻撃ははずれ、戦闘において自分が不利な状況に
  追い込まれます。
  戦闘中に、転んだり、自分の武器が壊れたり、恐ろしいことに転んで気絶という結果
  もあります。  

  以上のことから戦闘は、片時も気を許せないものになります。

 ・魔法
  ローズ トゥ ロードにおける魔法の存在もかなり特徴的です。
  ボックスセットの中には99枚の魔法カードが入っています。
  魔法は7系統の魔法が存在します。
  通常、プレイヤーキャラクターは魔法を修得することができません。
  ゲームマスターがそのキャラクターが魔法を修得するに足る出来事を体験したと判断
  した時に初めて魔法が与えられるのです。  
  しかし、安心はできません。なぜならキャラクターは修得した魔法を使ってみるまで
  どんな魔法を修得したか分からないのです。
  状況によってはゲームマスターからどんな系統の魔法(火とか水とか、といったもの
  です)を得ることができたかヒントを教えてくれることもあります。  

  各魔法には消費する精神力値が決められていて、魔法を使う場合は精神力を消費しま
  す。
  ここで、分かった方もいるかもしれませんが魔法の発動も命がけです。
  突然目の前に「氷の嵐」が発生したり、突如「地震」に見舞われると言うこともあり
  得るわけです。
  そして、魔法を発動したときに精神力の値が消費精神力値に足りていなければ、魔法
  は発動することなく、プレイヤーキャラクターは気絶、あろう事かせっかく得た魔法
  を忘れてしまう可能性もあるわけです。

  知らない魔法は決して戦闘中に発動させてはいけません。  

・ユルセルーム世界の怪物
  ワールドガイド中には一般的な動物から想像上の生物、不死の怪物、亜人間からドラ
  ゴンまで、全部で約70種ほどの怪物たちが紹介されています。
  神話や伝承から引用された怪物やオリジナルの怪物など様々です。
  いくつか例を挙げますと...
  ・雪豹
   針葉樹林帯に住む、普通の豹より毛が長く、色は銀色で、より攻撃的な豹。

  ・サルファービートル
   毒ガスが充満している火山の火口付近に生息していて、体長30〜50cm程度の
   巨大な甲虫。毒ガスを吹きかけてくることもある。
  
  ・グリーンハンド
   多数の触手を持ち、触手の先が手のようになっていて物を掴むことができる。
   湖面の船や生物を掴んで水中に引きずり込み、溺死させて養分を吸収する食肉水中
   植物。

・付属シナリオ
  このローズ トゥ ロードにはソリテア(一人用)用のシナリオと通常のシナリオの
  2本が付属しています。

  .魔女の洞窟
   このシナリオは、パラグラフ形式のソロアドベンチャーです。
   新月の夜中、炎に吸い込まれる夢とともに目覚めたあなたは不思議な洞窟の中にい
   た。
   精霊の誘いか、英雄の導きか、
   あなたは洞窟から脱出することができるだろうか...

  ・ミレア島の黒塔
   不思議な洞窟の先には、見知らぬ港町と怪しげな黒塔があった。
   あなたは生まれ故郷に帰還することができるのか?
   望むと望まざるとに関わらずあなたは港町を取り包む事件に巻き込まれていくこと
   になる...  

・総括
  さて、今回は私の一番思い入れのあるシステムを紹介させていただきました。
  ルール的な部分はゲームマスターもしくは遊ぶ人間に委ねられていることが多いので
  自由に遊べるという点ではそんなに難しくないシステムであると言えるでしょう。
  反対の見方をすれば、どんな風に自由に遊んで良いか思いつかない方には、非常に遊
  び難いシステムになってしまう可能性もあるわけです。
  現在では、もう入手できることはありませんが、10年以上も前にしっかりした世界
  観を持った日本独自のRPGがあったというのは凄いことだと思います。
  また、驚くことに戦闘に用いるために、いくつかのメタルフィギュアまで付いていま
  した。
  このゲームに関しては、とにかく自由に遊んでみようと言うデザイナー氏の言葉がい
  つも頭の中にあり、このゲームだけで(後に「ナーハン・ラムザス編」と「ストラデ
  ィウム編」という2つのエキスパンションが出ました)10年以上遊んでいました。
  現在でも入手できる「ファーローズトゥロード」の源流になっているゲームです。

                                      (了)

                              ローズ トゥ ロード
                                  ツクダホビー
                               ゲームデザイン
                                    門倉直人
                                 1983年発売


 

 

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Written by ragou