<将棋部>

営業部長「こんちは」
将棋部長「やあ、営業部長」
営業部長「将棋部に入れて貰おうと思ってね」
将棋部長「将棋指せるんですか?」
営業部長「昔はプロ棋士を目指したんだがね。
     ある事情があって将棋をやめたんだよ」
将棋部長「深い訳が有りそうですね」
営業部長「ああ、聞きたいかね?」
将棋部長「いえ、別に」
営業部長「聞いてくれ」
将棋部長「じゃあ聞きます。どんな訳なんですか?」
営業部長「そんなに私に言わせたいのか?」
将棋部長「じゃあ別にいいですよ」
営業部長「聞いてくれ」

将棋部長「・・・・。一体どういう訳なんですか?」
営業部長「ある日突然将棋の指し方を忘れたんだ」
将棋部長「あほかこのおっさんは」
営業部長「でね、今朝突然指し方を想い出したんですわ」
将棋部長「じゃあ試しに一局やりますか」
営業部長「ええ、先手は貴方がどうぞ」

先手の将棋部長はまず歩を進めた。
営業部長は長考する。


将棋部長「どうしたんです。貴方の一手目ですよ」
営業部長「参りました」
将棋部長「『参りました』って、まだ歩を突いただけですよ」
営業部長「いや仮にも私はかつてプロを目指した男だ。あと130手位で私の負けだ。
     じゃあこれで失礼」
将棋部長「ちょっと待っ・・・行っちゃった。何がプロを目指した男だ。
     そこまで先が読めるんだったら何故「130手位」ってあいまいなんだ」


その頃部屋を出た営業部長はつぶやいた

営業部長「桂馬はどう動くんだったっけ?」

                           戻る