新宿 名曲喫茶スカラ座

 

1990年から1995年の間、僕は時間があれば

しょっちゅう喫茶店に腰を据えていた。

喫茶店は僕にとっては時空を旅する貴重な空間だったし、

自分自身と会話が出来る唯一の心のオアシスだった・・・

手紙を書いたり、詩を書いたり、ぼ〜っとしたり、

そして、たま〜に好きな女の子を誘ったりと・・・

でも、そのほとんどは一人でいたかな・・・(笑)

たった一杯のコーヒーに詰め切れない程の夢を託して・・・

 

様々な喫茶店に入り浸っていた頃、唯一、時代の流れが止まった

昭和初期の匂いのする喫茶店がありました。

そこは新宿・歌舞伎町のど真ん中。名曲喫茶スカラ座・・・

1955年に開店したこの喫茶店に、僕は何度何度お世話になったか・・・

学生時代、バイトが終わればほぼ毎日、通っていた記憶がある。

建物全体は蔦に覆われていて、歌舞伎町特有のネオンが燦々と輝く中、

スカラ座だけは時の流れが止まっていた。

古き良きそのままの姿がなぜか新宿のど真ん中に存在した。

お店の中に一歩足を踏み入れれば、ここが新宿?歌舞伎町?と

錯覚に陥る位、静寂が存在した・・・

薄暗い店内にはあまりお客さんはおらず、静か〜にクラシック音楽が流れ、

心地よさが全身に染みたのだ。

そして、なんと言っても座席!

普通の喫茶店のような向かい合う座席もあったが、

特に僕のお気に入りは特急電車の座席のような、並列に前を向いた座席・・・

今で言うカップルシートのような座席がいくつも並んでいた。

僕はその座席に一人で座り、様々な野望を胸に抱いてコーヒーと向き合っていた。

そのスカラ座も2002年12月31日で閉店してしまい、

今は、発展途上のラーメン屋さんに姿を変えてしまった・・・

取り壊しの最中、スカラ座の横を通り過ぎるたび、

あの頃の無垢な自分が甦り、なぜか胸が痛んだものだった・・・

人間誰しも、心のオアシスを生成する場所は必要だと思う。

でもそこが無くなってしまった時、人は一つずつ心の成長を

遂げて行くのかな〜と思ったりもした・・・

皆さんはそんな貴重な場所を今でも持っていますか?

その瞬間を大切に生きて行きたいな〜と思う今日この頃・・・

スカラ座に幸あれ!

感謝の気持ちを込めて、今、改めて「ありがとう!」と心から言いたい。

そしてこれを読んでくれた人に、それ以上の「ありがとう!」を送ります・・・

 

拝 マーボ

           2005年12月10日 4時00分 自室にて