グラフトンストリート

 

もう10年以上も前の話・・・

僕はたくさんの刺激を求め、新宿、吉祥寺、中野など

いろんな路上で歌を歌っていた。

ライブハウスや自室とは違い、自分の歌声が空に、街に響き渡る

なんともいえないあの世界はいつになっても忘れられない・・・

 

そして、1995年の春、僕は初めての海外路上デビューを果たした。

アイルランドの首都、ダブリンの中心にあるグラフトンストリート。

この通りは世界各国から様々な大道芸人やミュージシャン達が集まり、

個々それぞれパフォーマンスを披露しているとても刺激のある所だ。

ここで歌ってみたいという目標を日本で3年間抱え、実現したときの感情は

ホント歌が喜びに満ちあふれていた!

日本語とはほぼ無縁のこの通りで、僕は日本語のオリジナルソングを

堂々と歌っていた。

今思うと、ホント勇気あったな〜なんて感心してしまう。

でも、そこそこお客さんも集まってくれる事もあり、

音楽に国境はないんだな〜っと改めて認識出来た時でもあった。

 

この通りでパフォーマンスをする人達の事を、「バスカーズ」と呼び

僕も「バスカーズ」の仲間入りをした。

「バスカーズ」を求めてアイルランドに旅する人も数多くいるらしい。

U2のボノさんなどもお忍びでよくやってくるらしい。

僕は見かけたことはないけど・・・

 

なかでも僕が一番お気に入りだったアーティストは、

アイリッシュトラッドを演奏する少年少女4人組。

小学生とは思えない程、きれいな音色を響かせていた。

ほか、JJというアメリカ人のシンガーソングライターと知り合いになり、

歌えるパブなどを紹介してくれた。

彼が歌うボブ・マリーさんの「NO WOMAN NO CRY」は

ボブさん自身が乗り移ったような、なんとも言えない味のある歌声と

ギターの音色が僕自身を大いに刺激した。

彼はその年の冬にアメリカに帰ると告げ、グラフトンストリートから

姿を消したけど、今はいったい何をしているのだろう・・・

また、僕が通っていた語学学校の先生が歌っていて、

「君をよく見かけた!」などと話が咲き、様々な出会いがそこにはありました。

 

一度、歌っている最中に中国人の女の子にナンパされた!?・・・と思ったら、

その子は日本人で、「日本人がここで歌っているなんて初めて!」なんて

興奮気味に話され、その後カフェで様々な話をしたりもした。

 

だいたい僕は週に2回程ここで歌い、お気に入りのカフェに足を運び

詞を書いたり、ボーっとしてたりしていた。

ここ最近、僕はあのときの自分にもう一度巡り会い、

再びグラフトンストリートで一緒に歌えたらな〜なんて思っている。

夢を置き忘れたあの通りをもう一度旅して、たどってみたい今日この頃・・・

 

拝 マーボ

           2006年2月12日 3時05分 自室にて