大道芸人       詞・曲/友部 正人

 

 

大道芸人は路上をめざす

けっして舞台になどあがらない

炎天下だって

氷点下だって

衣装はいつだっておんなじだ

 

赤い着物で踊り狂えば

世界中の車が交差点でブレーキを踏む

 

 

飛行機に乗ってパリまで行く

だけどオランピア劇場に出るわけじゃない

名前もわからない街角に

自分の劇場を建てるのだ

 

大道芸人の天使の言葉は

世界中で使える共通語なのさ

 

 

雨の降る日には部屋にいて

残った小銭を数えてみる

数える小銭がなくなれば

路上でまたゼロから踊るのさ

 

大道芸人という職業があってもいいじゃないか

職業が一つ消えるのは悲しいよ

 

 

タクシーに乗ったら路上までと言おう

飛行機会社は架空のチケットは売らないだろう

大道芸人はとっくに先回りして

雲海で芸を披露している

 

ビル街に涼しい夕立が降る

花ビラが包帯のようにほどけはじめる