春の平泉

東北は春がとても美しいのです。

全国に桜の名所はたくさんありますが、私は平泉の桜が一番好きです。

平泉へは一ノ関駅から東北本線に乗って二駅目の平泉駅で降ります。列車本数が一時間に一本しかないので少々不便です。一ノ関駅から平泉方面へのバスが三十分毎くらいで走っているので、これを使うのもいいかと思います。岩手県交通では日曜日、休日だけ発売されるフリー乗車券があり、一日路線バスが乗り放題になります。値段は600円(平成14年4月時点)。平泉へは往復760円(たしか)、厳美渓へのバス代は往復960円なので、平泉と厳美渓へ両方行く場合など大変お得になります。

一ノ関駅から厳美渓へはバスで20分程度。磐井川を越えて行きます。磐井川の堤防には染井吉野がたくさん植えられています。バスの車窓から覗く桜狩のプロローグです。磐井川の上流に厳美渓はあります。

15分ほどでかんぽの宿に着き、ここをすぎると厳美渓はすぐそこです。道の両脇に見える桜がだんだんと増えてきます。バスに乗るときは左側の席に座ってください。バスは磐井川の右側を走ります。

厳美渓という停留所は橋の手前になります。ここで降りて、奇岩と桜を楽しみましょう。対岸に咲く水仙も見事です。

厳美渓に咲く桜は染井が多いのですが、政宗公が植えられたという貞山桜(エドヒガン)もポツポツと見られます。染井より花が小さく、色も濃いのが貞山桜です。温泉神社の境内には大きな貞山桜が三本咲いていました。そら飛ぶ団子屋のそばにも一本咲いていて、染井とは比べ物にならないくらいの美しさでした。

温泉神社の貞山桜

厳美渓へ行ったなら達谷窟へも足を延ばしてみたいのですが、足がありません。無料で自転車を貸してくれる所は、私が行った時、悲しいかな、閉まっていました。

一ノ関駅→平泉駅→中尊寺とバスは走ります。平泉駅で降り、駅を背にまっすぐ歩いて行くと毛越寺です。

本堂

ここの浄土庭園はとても美しく壮大です。あの時代にこんな大きな庭をつくるなんて藤原氏というのはなんて偉大なのでしょう。京に負けない素晴らしい都がここにあったのだと地元の人は大いに自慢して欲しいです。

毛越寺から平泉へは山を越えていくのが私流の歩き方です。倍の距離を行くことになりますが、その価値はある道のりです。毛越寺と観自在王院跡の間にある道を20m程行くと左手に坂があります。ここを登ります。

坂を少し登って振り返ったところ

かなりキツイ坂ですが、左には桜並木、右にはスミレ、カタクリが咲き、とても綺麗です。坂を車で走ってしまうと見つけられない風景なのです。

このあたりが一番キツイ坂になります。時々、後ろ向きに歩きながら登ります。この後、墓地販売と分譲地販売をする地区が出てきて、ちょっと興醒めしますがこらえて登ってください。半分くらいの地点に展望台があり一休みできます。

展望台まできてしまえば、後は下り坂になり、すぐ中尊寺裏庭です。ここの桜は疲れた身体を一気に癒してくれます。時々通り過ぎる車と鳥の鳴き声がなければ、キーンと頭の中だけに響く脳の音だけが聞こえる静寂の場所。枝垂桜と椿と木蓮が一気に咲く庭。田に一本だけ植えられた紅枝垂。春の浄土がここにあります。

桜の咲く季節なら金色堂もゆっくりと拝観できます。運がよければ堂内にただ一人になることもあるでしょう。金箔の張った金堂の中に夜光貝で美しく飾られた須弥壇をじっくりと眺められるのです。

隣にある讃衡蔵の中にある仏像三体はとても立派でした。三体とも平安末期の作だそうで、私は右端の仏様が好きです。

帰りは下り坂です。月見坂では登ってくる参拝客を尻目にうきうき帰りましょう。足ががくがくしてしまっているかもしれませんが、この月見坂を思うと毛越寺ルートを選んでしまう私です。

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