コウノトリ来襲前 2(不妊期間の心の動き)


子宮外妊娠と流産後、とてもじゃないけれどすごく神経質になってしまい、人の言葉に(時には
優しい言葉に対しても)おかしな意味で敏感に反応するようになってしまいました。
その当時の事を振り返ってみます。「裏なりのページ2」です。

***年賀状***

年賀状を頂いた時に、やはり目に付く、「うちは○月に二人目が生まれる予定です。そちらの予定はどうですか?」とか「家族が一人増えました。そちらはどうですか?」という文面。

年賀状を見る度に、悲しい気持ちになっていたのは事実です。勿論、送ってくれる方は何の悪気もないのだし、私の不妊の事も知らないのだから傷ついてしまっても誰が悪い訳でもありません。私が勝手に落ち込んでいるだけ。・・・と自分でも分かっているはずなのに、年賀状に載っている知人の赤ちゃんの笑顔を見ると、泣けてくるときもありました。

他の方と自分を比べたって何にもならないのは分かっているのに、最終的には「なんで私だけ・・・」という思いに苛まれ続けました。

小学校からの友人がいて、彼女は地元で結婚して落ち着いているので、アチコチ移動している私とはほとんど年賀状のみの付き合いになってしまっていました。

でも、一年に一度とは云え彼女との情報交換が楽しみで毎年年賀状をやり取りしていたのですが、ある年から「子供はまだ?」という言葉がずーっと書かれ続けるようになりました。

「まだ産まないの?」から始まって「私があんたの年の時には子供が二人いたよ」「ずっと作らないとできなくなるよ」「もう年なんだからいい加減に子供をつくったら?」・・・ちょうど外妊と流産をした年の年賀状には「なぜ作らないの?」・・・勿論、何も知らない彼女に罪はないんですよね。

でも、その時だけは我慢ができなかった・・・。
私も大人気なく「欲しいけど外妊と流産してから全く授からなくなった」とキツ目の文書を彼女へ送りつけてしまいました。当然、翌年から彼女は子供の事について何も触れなくなりましたが、私が何も知らない彼女に対してイキナリ叱り付けるように、とてもきつい言葉を投げつけてしまったのは事実です。


おそらく彼女も驚いただろうし、もしかしたら「そんなつもりじゃなかったんだよ」という彼女の心を私は傷つけてしまったかもしれない。未だにあの時の事を謝る機会がないままですが、今年の年賀状を見て彼女も安心してくれたら良いな・・・と思っています。そしていつか、小学校の同窓会か何かで、そっと謝る事ができたらな・・・と思っています。
***親友の言葉***

親友に言われた言葉は、「不幸なあなたを見てると自分は幸せだと思える。子供を産めて本当に良かった」でした。勿論彼女自身にしてみたら、順調に妊娠・出産し、それが当たり前だと思っていたけれど、私の流産や不妊の事を考えると、あまり悩まないままに無事子供を産めた自分を幸せだと改めて認識できる・・・という事でしょう。

しかし、折りしも私と彼女は2,3ヶ月しか妊娠月数が変わらなく、私は流産・彼女は無事出産という、まさに「天国と地獄」をそれぞれ演じてしまったわけです。そんな訳で、もし生きていたならば彼女のベビーと同じ成長を遂げていたであろう私のまめの事を思うと、彼女の言葉はどうしても私を意固地にさせてしまうのでした。

私は自分が過剰反応し過ぎているという事を理解しながらも、それでも必要以上に、あえて自分が傷付くようにしか、相手の言葉を受け止める事ができなかったんです。

彼女の言葉を、なぜか私は「悩む事無く妊娠・出産できた私は【女性】。でも不幸なあなたは、子供を産めないあなたは、【女性】として欠陥がある。」・・・と言われたように捻って飲み込んでしまいました。そんなハズない、と自分が一番分かっているのに。なんとなくそれ以来、私の方から彼女へ連絡するのを避けてしまっていたように思います。

彼女がご主人の転勤で初めての土地に住む事になった時。きっと初めての妊娠と慣れない土地ですごく心細かったんだと思う。特に彼女は私より年上で、プライドも高いから・・・それなのに年下の私に対しては独身時代からいつも弱みなんかを見せてくれて、本当なら私が一番彼女の力になってあげなければならなかったのに、と思います。でも、どうしても彼女の妊娠・出産の話を聞く事ができませんでした。

彼女と普通通りに親しく戻った今でもその当時の事は後悔しています。
***友達の妊娠報告***

不妊治療を受けていた時期、ずっと昔からの付き合いの男友達から電話が来ました。最近結婚した彼の話や、知人の話等をした後に、ぽつりと彼が「赤ちゃん、できた?」と聞いてきました。「いいや、全然・・・」と答えた私に、「うち、できたんだ」。・・・それがあまりにも自然な流れだったので、こちらも自然に「あ、本当?おめでとう!」と答えていましたが・・・。

後になって、やはり自分より後に結婚した人が赤ちゃんに恵まれるといった出来事に、言いようの無いあせりとショックを感じてしまいました。仲良しの友達のおめでたいニュースはとても嬉しくて、本当ならもっともっと喜んであげたいんだけど、どうしても素直に喜べない自分がいて・・・。

そんな自分に自己嫌悪で、ますます落ち込むという悪循環。2,3日後に、もう一度彼と電話をする機会があって、その時に「やっぱ、ちょっとショックだった。」と正直に伝えると、彼は「うん・・・分かってた。でも、隠す方が嫌だからね。だから、あっさり自然に伝えた方がいいかなって思って」と・・・。

本当に友達っていいなって思いましたよ。さりげない会話の中でも、すごく気を使ってくれていたんだなって。
***時間***

人の妊娠や出産に対して過剰に反応してしまう時期も長く続き・・・。なんというか、戒厳令がしかれたのかな・・・というか、おふれが出たのかな・・・というか。友達でさえも「赤ちゃん、まだ?」という言葉を誰も私に言わなくなりました・・・。

自分の親も勿論ですが、旦那のパパママさえも。旦那のママはたまに電話で「体調どう?」とさり気無く聞いてきてくれるので、こっちの方から「うーん、なかなか赤ちゃんできないよ〜」と答える様にしていました。気を使ってくれた旦那のパパママ、感謝しています。一時過剰にパパママの言葉に一方的に傷付いていた私を許してね・・・。

で、高校からの友人で、毒舌の人がいまして。前まで、会うたびに「子供まだできねーのか?不妊じゃねーの?」なんて辛口で言われてたんですが(でも、彼がどんなに口が悪いか・・・だけどどんなに本当は優しい人なのか長い付き合いで分かり切ってる私は、全く悲しくなったり頭に来たりしませんでしたが)、その彼でさえ子供の事、さっぱり口にしなくなりました。

なんとなく申し訳ないと思いつつも、やはりサッパリした気持ちにもなり・・・でも、やはり、「とうとう(私の不妊歴も)そういう時期に入ったか」と少し寂しいような複雑な気分になったりもしました。勝手な私です。
だから余計に、親や友達をはじめ知人のみなさまに対して・・・頭を下げたい気持ちで一杯です。