<2月末の入感のレビュー/1月〜3月初めまでのまとめ>
現時点での留意点
現時点で不十分な項目として、
(1) アンテナの指向性に関して十分な基礎データがなく感度の方向特性から
Singen方向の定量的推定が行なえないこと
(2) 入感レベルの測定値そのもののデータが記録されていないため
Singenまでの距離についての定量的推定が行なえないこと
(3) 入感検知判定のスレッショルド(敷居値)が高めに設定されている可能性があり、そのために比較的近くにある観測点同士(横浜と東京南部)で矛盾する検知記録件数となった可能性が高いこと
といったことが考慮されなければならないが、これらの視点を踏まえた上でこれまでの入感記録のデータと同期間中に並行して発生した活動との対応的な関係を考察してみることにする。
入感レベルを記録件数で代用することは本質的にはできないと考えられるが、ひとまず現時点では記録の件数と現実に発生した活動との間でどのような相関が見られるか定性的に調べてみた。
[1]破壊に関係した断層長との相関関係
発生した活動の規模(M値)を破壊に関わった断層の長さに換算(*1)して見てみると、図1のようになる。M3.6で断層長=1、M4.2で断層長≒2なので断層長が2以上のところはM4.2より大である。
図1
(青字)で示したM値は直近で発生した余震も含めた場合の全断層長に対応するM。ただし棒グラフの高さは個別の活動に対応している(<青字>:気象庁暫定値)。
現時点での留意点の(3)を考慮すると、福島県沖や会津地方で発生した活動に対しては、横浜等での入感検知は敷居値ぎりぎりないしそれより下のレベルにあるために検知結果が不安定になりやすい可能性を示唆しているように見られることで、それが赤い破線で示した時期に入感がないことの解釈となる(これが東京南部が横浜とほぼ同じ記録になってくれない理由のひとつであるという可能性)。
一方最新3月6日の埼玉中北部の入感が同日福島県沖のM4.3等と無関係の別の(今後に発生する)活動に対応する入感であったことが判明した場合には、上記の横浜での対応する入感が福島県沖の活動に対して不安定であるというよりも、図1から示唆されることはむしろ、房総南東沖および関東東方沖での活動に対して入感が不安定であるということなのかもしれない。その場合には、埼玉中北部と横浜とでは、同活動には約50kmほど横浜の方が近いことから、この場合にはむしろアンテナの感度のバラツキや設置環境の違いの方が問題となるように考えられる(アンテナの感度バラツキ・指向性・設置環境については早急に明瞭にするべき項目として研究中)。
図1は観測地点/Singen間距離との関係を見るには適切ではないが、仮に秋田県沖方面の活動等にも対応していたとすると、それらのSingenからは距離による減衰によって容易になくならない程強い電磁波が出ていたことになるが、これが横浜で非常に強く入感して埼玉中北部では弱くしか入感しなかった理由は不明となる。これを神津島の時の事例から説明するとすればそのためには東京南部と横浜で同様な干渉機構が存在していなければならない(やはり現時点ではやや考えにくい)。
ただしもとより上記留意点(1)(2)の事項から見て、入感敷居値が高い時のこのような「記録件数」だけからは格別の結論は引き出し得ない。そのためには詳細な入感データが必要であるが現時点ではそれが取れる状況にない。ここでは単に様々な可能性を吟味するということ以外は不可能である。
そういった意味では、1月に発生した宮城県沖、東海道沖、長野県中部の活動に対しては入感記録がないことは、これまで同様、入感レベルの絶対値がどうであったのかによって判断されるべきで、スレッショルド以下のレベルでは入感があった可能性はある。その場合には今後どのような記録を取るのかが銃ようになる。
[2]近接度合いを含めたパラメータで見た場合
つぎに、仮の試みではあるが上記で求めた断層長を、Singenから観測点までの距離で割った値で比較してみた。
図2
図3
福島県沖での活動に対して、横浜が入感記録を出しにくい理由として、先にスレッショルドが高いために微妙に達しない場合を想定したが、図3はそれを表しているかに見える。2月1日の方はわずかに入感しているが、これが埼玉ほどでないのはアンテナ方向依存性によると考えたとして2月1日のレベルでぎりぎりの入感とすると、赤い破線の丸で示した部分には入感記録がないのは、断層長×近接係数(1/距離)の値が一定値以下であるためと考えることも可能に思われる。
また、2月20日の房総半島東方沖の2つの活動(気象庁の速報にはなかった無感Jisin)が仮にスローJisinであった場合に物理的に電磁波が出にくいと仮定すると、これに対応した入感がないという可能性も考えられる。スローJisinでは無感になり安く、たぶん臨界圧力は高くなく、岩盤の大きな破壊を伴わない可能性が考えられるので、その場合当然被害も少ないのでそれを検知する必要性はほとんどないと思われる。この点から、仮にスローJisinを検知しない場合があっても実際上大きな問題には繋がらないと考えられるから、本検知機構の有用性がこれによって損なわれることはないように思われる。この房総沖の活動がスローjisinであったかどうかは今後の情報から判断できるが、そうでなかった場合についての現時点での解釈としては、房総沖での観測点が増えてみないとなんとも言えないと考えている(スレッショルドレベル、アンテナ設置環境なども考慮の上。)
そうすると3月2日に発生した関東東方沖のM5.8の活動に対してはどう考えるかということになるが、これの対応入感記録として、今回の2月26日から3月2日までのものを考えることができるのではないか、と思われた。2月20日の無感JISinで移動した地殻が、別の近くのポイントで圧力を高めた可能性を考えると、そのために岩盤の破壊が起こり、2月26日からの入感をもたらした可能性も考えられる。入感記録のパターンもかつて経験したM6クラスも場合と似たパターンで数日に渡る入感となったことと、後の気象庁の暫定値M6.2というデータとからこれが該当jisinである可能性は当初考えていたよりも非常に高まったと思われる。
3月2日秋田沖は横浜からは400kmも離れているとしていたが実際には350km、埼玉からは300kmであった。これが入感するとしたら、相対的なアンテナ方向は同等で感度も同等となるとすれば、埼玉の方が入感記録頻度が高いように思われ横浜で圧倒的な入感という事実は説明しにくく、距離の差からいってもこれがスレッショルド近辺の微小な差であるとするのは少し無理と思える(これがあるとすれば、神津島のときの埼玉のような反射干渉による以外には考えられない)。
1月31日福島県沖からの入感では埼玉の方が40kmほど近いのでより多く入感し、2月12日が神津島からの入感であり、2月26日から3月2日までも関東東方沖からの入感とすれば、こちらは横浜の方が50kmほど近いために横浜の方が自然状態では多頻度で入感したと考えるのが自然であるが、これはアンテナの設置環境等が両地点で同じと仮定した場合には成立する(東京南部は2月26日から3月2日までの入感ではこれが成立しない環境にあったと解釈するしかない)。したがってやはり2月26日から3月2日までの一連の入感は3月2日関東東方沖M5.8に対応するものと推測する。
そうではあるが 1月28日以前の3つの活動の内(480km以上離れた宮城県沖を除けば)、近接係数を入れても入感はわずかにでもありそうには思われるが現実には入感していない。この地域からの電磁波発生機構が他の地域とどのように異なるのかによる違いで、この付近での観測が行われた上でこれらは解釈されなければならないと考えている。
結論
ここまで見てきたところでは、
1.検知機の改良(アンテナの感度・指向性・設置環境の研究改良、入感記録の残し方の改良など)によるSingen領域特定の定量的研究
2.配置地点の拡大による入感データの積み重ね
3.入感データの積み重ねによる電磁波発生源に関する地域別の性質の積み上げ、入感から対応活動までの遅延時間等の積み上げ
の必要性が、定性的に再確認されたにとどまった感はあるが、これまでの結果からはこれら1〜3の条件が整った場合には、今後これまでの傾向と大きく矛盾するようなデータが出ない限り、本検知機はそれなりによい相関をもってJisin活動に対応した検知を行ない得るようになることを示しているように思われた。
今回は入感から対応活動までの遅延時間についてはまだまとめられる段階でないため次回以降の課題とする。
今年になって連続的に発生し続けているこれら一連のJisinの数の多さにより、観測地点のまだ少ない中での推定は極めて困難な作業であり、装置の改良とあいまって、今後の観測地点数の拡大に希望をつなぎたい。
(3月7日記載)
(*1) 「阪神淡路大震災と地震の予測」(岩波書店)p.160「地震の大きさについて考える」(大塚道男)参照。
M=2*logL+3.6[M:マグニチュード値,L:対応断層長]から計算したLで表現した。M値そのものよりも対応活動を表現しやすいと考えたため使用した。