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指示がないと動けない子


 とてもおとなしい子の中で、大人の指示がないと全く何も出来ない子が時々いる。聞き分けが良くて、言われた事は何でもソツなく出来る。でもその指示が「これからはここにあるもので、何をしてもいいですよ。自分の好きなように遊んでもいいし、寝てもいい、好きにして下さい。」というような指示になると、とたんにこちらの顔色を伺って、どうしていいか分からなくなる、といった状態になる。

 ごく小さい頃から、どんな時にでも指示があり、その指示通りにしていたら認められ、どんな行動も一応母親かそれに代わる人の承認のもとに行ってきたのだろうことが推測される。あるいは過去の経験から自分の好きな通りにして、お母さんに叱られた事で“どんな時にも行動する時はお母さんに承認を求めてから”という考えを子どもなりに会得してきた結果かもしれない。

 あくまでも程度の問題ではあるが、例えば、積み木を10個渡して、色々な問題を出し、それには全部的確に答えられて、最後に「それでは今度はあなたの好きなものを作ってごらん」とか「好きなようにして遊んでごらん」というと、それこそ手を膝において、こちらの顔をじっと見ている。といった子の場合はちょっと考えていかなければいけないだろうと思う。

 先ずは生活の中で、小さな事でもいいから“子ども自身が一人で考えて選ぶ事が出来る環境”を作ってやる必要があるといえる。

 例えば、おやつにりんごとみかんがあるとすれば「今日のおやつはりんごとみかんがあるけど、あなたの好きな方でいいから何にする?」とか「お風呂に入ってからご飯を食べるか、ご飯を食べてからお風呂に入るかどっちにする?」とかいうように、まず小さな事の中に“自分で決める”という行為を何回も経験させ、子どもが自分で決めたらその通りにする、などから、段々と「好きなことをしていい」時間を1日のうちに必ず設ける、など。

 「好きなことをしている」時に、どうしても私達は私達の許せる範囲内での「好きなこと」になってしまいがちだから、そんな時にはやってほしくない事は前もって子どもに伝えておくことを忘れないようにすること。

 また、色々なおもちゃや知育玩具で遊んだ後に必ず「好きなものを作る時間」を5分ぐらいでいいからもつこと。そして、子どもが作った「好きなもの」が何なのか聞いてやってほしい。その時に、けなしてはいけない。出来ればどんなに下手なものでも「頑張って一人で作ったね」ぐらいは言ってやってほしい。

   子ども達が一番気にしているのは、お母さんの評価だから、お母さんに「良くできた」という一言をもらうと、それだけでもう百人力になったように感じ「自分はこれで良いんだ」という安定感が、子どもの心の中に生まれるのである。そして、それが他の人に言われた時にも同じような行動としてでるのである。

 反対に「好きなものを作っていいよ」と言われ、恐る恐る作ったら、それをお母さんに「何よ、これは。もっと分かるようなものを作りなさい」とか「下手ねえ」等と言われたら、もうそれで、なにをどういうふうに作ればいいのか自信を無くしてしまう。

 そして、教室で教師に「好きなものを作ってください」等といわれても全然作る事が出来ない状態になってしまうのである。

 「好きなものを作りなさい」と言ったなら、先ずは歯の浮くような言葉で褒めておいて、それから、もっと上手に作るためのアドバイスを言えばいい。

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