それぞれの花花インタビュー  岡本 尚子

1/200の星の糸

編物作家 猪俣 愛美(いのまたまなみ)さん

 


 おにぎり、キーウィフルーツ、トマト…これがブローチ?! リアルな色や形で編まれている。おいしそうで可愛い♥色違いの花を重ねたネックレスも立体的で綺麗…。
 猪俣愛美さん。29歳。編物作家。埼玉県生まれ。京都市在住。ネックレス、ブローチ、帽子、カバン、カーディガンなどを手編みで制作する。
 20歳の時、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)を発症。5年の闘病の後、制作を始め、ネットショップ、手作り市、ギャラリーなどに出品。'14には、京都出町柳にハンドメイド雑貨花花インタビューの店“きゃろっとたうん”を開店('16年に閉店)。現在も病の経過観察をしながら制作を続けている。
 取材前、「話をするのが得意ではないので、お役に立てるか不安ですが…」とハガキをくれた愛美さん。端正で温かみのある字だった。
 京都の街はハナミズキが満開。“みやこめっせ(京都市勧業館)”のカフェの前で愛美さんは待っていてくれた。白いスカートに、胸元には黄色い花が3つ並んだネックレス。「こんにちは」。少し低めの可憐な声だった。とまどいがちな目で、はずかしそうな笑顔。アイスコーヒーを前にじっと記者の言葉を待っている。

編む hand-knit

 小物を編む前はあんまり下絵は描かないんです(笑)。例えば、このお花のネックレスだと、基本の形を編み進めていって、「うーん、もう1枚花びらを増やした方が綺麗かな」と感じたら加えたり。うさぎさんのブローチだと、うさぎの耳や顔の形を編んでいって、目と鼻はボタン。三つのボタンをどの位置につけたら可愛いかなと動かせて、一番いいと思った位置で止めます。
 たった一本の糸が針で編むだけで立体になっていく…面白いです。いろんな編み方もあるし、針の太さもいろいろ。糸も毛糸や夏用の糸や刺繍糸…。
 どの色で、どの糸で、どの針で編むか、頭でイメージを膨らませて編んでいくのは楽しいです。
 カーディガンとかは、製図が必要なので、大きい紙に全体を描いて一目一目を書き入れます。袖ぐりのカーブの所は、数学を使って計算します。面倒ですけど(笑)。
 編むのは、気持ちに結構左右されます。イライラしている時はきつく編んでしまったり、ゆったりするとゆるくなったり。その時はほどきます。再開してもだめなら、気分転換に他の作品を編みます(笑)。

 記者が質問する度に、「うーん…」と考え込み、一つ一つ丁寧に答える愛美さん。

デザイン desigh


 お花とか葉っぱとか動物をモチーフにすることが多いですが、食べたいもの…アイスクリームとかおにぎりとか、そのまま自分の欲求通りに編んだりもします(笑)。
 市販の品にないようなデザインや色合わせで作ろうと心がけています。楽しそうな色合い、見てて楽しくなるようなデザインをと…。
 自分がかわいい・面白いって思って編んだものをお客さんが求めてくれる…有難いですね。小物や服に気持ちを助けられることもあると思うんです。「これを身に着けて外に出かけたい」と思ってもらえるようなものを作っていきたいですね。   (以下本文へ)

 

 


 

 

ホームページへ