新米オジサンからのラブレター

箕面市人権啓発推進協議会 会長 芝 寅勇

 

 オジサンは、長いこと、大阪府箕面市の市役所で働いていました。その市役所のお仕事をやめました。でも、お家にいると、いろいろと考えるチャンスが、グルグル、グルグルとたずねてきては、ドアーをどんどん、どんどんとたたくのです。

 オジサンの「おくさん」には、たくさんのお友だちがいて、毎日、いろいろなひとたちと、話したり、笑ったりして、とてもいそがしそうですが、オジサンは、そんな「おくさん」とはちがって、とてもヒマでした。「おくさん」は、

 「たまには、外に出て、いろんなひとと話してごらんなさいな。」

 と、いってくれるのですが、なんだか、おっくうでした。そんなある日、市役所で働いていたころに知り合った、ヘンなオジサンから電話がかかってきて、あれこれと話をしました。そしてね、箕面市内でワイワイ、ガヤガヤと、「ひとのいのちのこと・人権」について、自分の時間をつかって、走り回っているひとたちと、お友だちになったのです。

 それからは、大いそがしです。差別をうけている、障害者市民、部落のひと、箕面に住む外国のひと、女のひとのこと、こどものイジメとか、とか。そのほかにもいろんなことでヘコんでいたり、なやんだりしているひとたちが、たくさんいることを勉強しました。そして、ひとりひとりの力を出し合って、差別をうけているひとたちだけではなく、特別なことでもなく、自分のこととして、支えたり、支えられたりしているひとたちが、おおぜいいることも知りました。

 そのようなひとたちが、おおぜいいることは、オジサンの住む街が、みんなの豊かな街なんだと、オジサンは、考えるようになったのです。それから、なにがなにやら、なにがどうしたのか分からないまま、オジサンは、「箕面市人権啓発推進協議会(愛称・わっと)」という、むずかしい漢字が1ダースもある、みんなのあつまりの会長になってしまったのです。できたてホヤホヤの、ゆげが立っている新米会長です。みんなに迷惑をかけちゃいけないなと、このラブレターを書きました。

 ひとには、そのひとにしかない「いのち・人権」があります。それはとても大切なもので、人間が地球上にあらわれてから、四〇〇万年もかかって、小さくて、ほそい赤い糸をたどり、オジサンや、あなたたち、こどもにもつながっているものなのです。でも、人間は、なかなか考えません。世界中で戦争がつづき、殺したり、殺されたりして、そのほそい糸を切りつづけています。戦争でなくても、オジサンたちのまわりで、死んだり、殺されたりするひとがたくさんいて、オジサンは、ときどきなみだがこぼれます。オジサンは、いろいろなひとたちと協力して、こうさけぼうと考えています。

 「ひとを殺してはいけない。死んではいけない。生きていてこそ。」

 と。それが、新米オジサン会長の、新しいこれからのお仕事だと、うーんとおなかに力を入れています。そして、この絵本ができました。みんなで楽しく読んでくださいね。そして、チョッピリ考えてくださいな。

2007年5月

 

 


 

 

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