キツネとおサルとボク

 

 ボクの父ちゃんは、魚つりが大スキです。ときどきボクを連れて行ってくれる。だからボクも魚つりがスキになりました。でも、ボクは、車イスを使っているから、港の安全なところでしか魚つりができないし、エサも父ちゃんにつけてもらうので、それが、ちょっぴりくやしいです。

 夏のあつい太陽がカンカン。デッカイ白い雲。夏休み。父ちゃんとボクは、強い日ざしをさけて、夜につりへ出かけました。海までは、山道をぐるり、ぐるりと車で走って、二時間くらいかかります。そのときに出あったコトを話します。

 ボクは、車のリフトに乗っているので、ぐるり、ぐるりのくら〜い山道は、あまりスキじゃありません。だって気分が悪くなるんだもん。まわりはくらいから、父ちゃんの運転する車のライトの中しか見えません。一時間くらい走ったころ、道の先のライトの輪の中に、いくつものキラキラと光るものが見えました。車が近づくと、道路のはじっこに、何か動物がたおれていて、そのまわりで、小さな動物が三びき、ウロウロしていました。父ちゃんが車をとめて、その動物のようすを見に行くと、三びきは、いなくなりました。父ちゃんが大きな声で、ボクに、

「オ〜イ、ヤスヒコ。キツネが車にはねられて死んでるぞ。いやなものを見てしまったなぁ。」

 と、いい、おおいそぎで車に帰ってきました。それから、車を走らせようと、たおれているキツネから少しはなれると、さっきどこかに行ってしまった小さな動物、それは、子どものキツネだったんだけど、三びきが、たおれているキツネのところにもどってきました。少しはなれたところで、その子ギツネのようすを見ていると、車のライトで、目をキラキラ光らせて、たおれているキツネのまわりをグルグル回るのです。ボクは、たおれているのは、母ちゃんキツネかなぁと思いました。父ちゃんが、

「こりゃあヤバイなぁ。あのままほうっておくと、子ギツネも車にはねられちゃうぞ。」

 って、たおれているキツネの方に、走って行きました。そして、キツネを車の通らない原っぱに運んだんだって。子ギツネは、三びきともついてきたそうです。

「あの三びきの子ギツネは、親ギツネが死んでしまって、悲しいんだろうな。ああして、親ギツネを守っているんかもしらんね。」

 と、父ちゃんはハナをズルリとすすりあげて、ボクに話しました。なんだかボクは、小さな子ギツネたちに、

「ガンバレよ。」

 と、いってやりたくなりました。

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