【特集】
家族という現場
ー それは拠りどころか障壁か
小誌創刊のきっかけの一つとなった相模原市の障害者殺傷事件から5年半、U青年の死刑が確定して人々の関心はほとんど失われたように見える。しかし事件が投げかけた問題の多くは未消化のまま、私たちの身体の内部に取り残されている。その一つが知的障害者たちとその家族の問題である。自分の子どもやきょうだいを施設に入れる最終判断をしたのも、事件の後、被害者の「匿名」に強くこだわったのも家族であった。そして事件の報道や分析においても、障害者と家族の問題はきわめて慎重に取り扱われるか、敢えて触れることが避けられてきた。
家族をめぐっては、老老介護や児童虐待といった問題に加えて、この間、親や祖父母、きょうだいの介護や家事を担って社会から孤立するヤングケアラーの存在が注目を集めている。高齢化や核家族化を背景として、家族にしわ寄せするのではなく社会全体で介護を担うことをうたって介護保険制度がスタートして21年、いま再び家族とは何かが問われている。それは利害を超えた人間的な絆の拠りどころであり社会の基盤なのか、個人の権利や自由をはばむ厚い壁であり乗り越えられるべきものなのか、それとも……。
→ 「季刊しずく」
第15号 もくじ
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