【特集】 介護の多様な面を拓く
介護―それは言うまでもなく、日常生活に障害をきたし、生活が立ち行かない障害者や高齢者に対して、援助を行う営みである。介護の社会化などと言われて久しいが、日本においてはまだまだ絵に描いた餅であり、障害者や高齢者に対しては家族介護が主流とされ、とくにその担い手は女性であるべきというジェンダー規範が色濃く残る。
障害者運動は、こうした家族介護の風潮を批判し、公的介護保障制度の拡充を要求し続け、不十分ではありつつも制度の支えによって地域生活を送ることができることを示してきた。かつては、介護という行為それじたいが、障害者と健常者との人間凝視の場であった。介護を通して、真の人間関係を築いていくことを目指したのである。近年、「ケアの倫理」と呼ばれる考え方も登場し、介護やケアの負の側面だけでなくその積極的な意味にも関心が寄せられている。
介護は我が身に密着するごく私的(プライベート)な営みであると同時に、公的(パブリック)な社会的課題として私たちの前に立ち現れる。その重層性、多面性こそが新たな可能性を開くのではないか。それぞれの立場から考えたい。
→ 「季刊しずく」
第26号 もくじ
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