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VS(ヴァーサス)マキさん 牧口 一二 二本足でも、車いすでも、私は私。鈴木 千春さん 牧口(写真左) お久しぶりで〜す。以前、鈴木さんたちにボクが取材されたことがあって、今度は逆に取材させていただきます。 鈴木(写真右) 公団住宅1階の喫茶店を訪ねて3人だったかで取材させてもらいましたよね。あの時は自立生活センター・ナビで研修していた頃で、たまたま本づくりを手伝うことになって。
牧 今度の取材先の相手を、小林さん(この欄の写真担当)から「鈴木千春さん」って聞いて、ひょっとしたらと本棚にある『大阪バリバリマップ』を繰ってみて、アーあの時の、って思い出しました。何年前だったのか、と奥付をみると2001年8月発行とあるから、10年前やね。鈴木さんたちが活動を始めた頃なのかな。 鈴 そうです。前年の2000年から自立生活センターの立ち上げ準備会を始めてます。 牧 10年前というと鈴木さんはいくつ? 鈴 23歳です。 牧 わー、お若い! さぁ、これからやったるぞぉ、という頃だったんやね。ところで、障害者への仲間入りは、どんな理由で、いつ頃から? 頚損でしょ。 3階から落ちて……記憶が飛んで 鈴 中学2年の、14歳の時です。学校の大掃除で教室の窓ガラスを拭いてて3階から落ちたんです。 牧 えっ3階、ひぇー3階! なんとまぁ、よう生きとったなぁ。 鈴 あと5メートルずれてるとコンクリートの上だったそうです。 牧 ひぇー助かってよかった、よかった。怖かったやろう。 鈴 それが覚えてないんですよ。その日の朝、玄関で野良猫と遊んでたところまで覚えてて、それから先の記憶が飛んでいるんです。 牧 ほー、すごいなぁ。生きるか死ぬかの怖い目に遭ったら記憶が飛んでしまうんやね。人間ってうまくできてるんや。 鈴 あーいう恐怖の瞬間は記憶が飛んでしまう人とすべて覚えてる人がいるんだそうです。 牧 ほーそうなんだ。それも不思議な話やね。ところでさ、高い所から落ちた人は、落ちながらそれまでの自分の人生が走馬灯のように甦るんだって聞いたことがあるよ。 鈴 よく言いますよね、私も聞きました。私はそんなことなかったけれど。 牧 な〜んだぁ、なんて言ったら悪いけど、じつはどんな話が聞けるのか、それをたのしみにしてきたんだけどな。劇的な話でも聞けるんじゃないかってね。 鈴 ほんと何も覚えてないんです。「三途の川を渡ってきましたよ」なんて言えればよかったんですね。 牧 そう、そういう話がボクは好きなんよ。 鈴 と言われても、ほんとに記憶がないんです。あっ、そういえば落ちたとき、スカートだったかズボンだったか、それがずうっと気になってて、けど、なかなか聞けなくて……やっと20歳になった頃、事故現場で隣りにいた仲良しの級友に、「私、パンツ丸見えやなかった?」って聞けたんです。で、ホッとしました。「それどころやなかったわ」って言われましたけどね。 牧 わー乙女チック、ええ話やなぁ。昔ね、サリドマイドで両腕がちょっとしか無い少女がいて、その人をNHKが子どもの頃から成人するまでドキュメントしてて、少女が子どもの頃は何でも器用に両足でやってて、バスに乗っても切符を靴の中に入れてて、降りる時に足の指に挟んで運転手さんに屈託なく渡すのね。ところが年頃になって足を上げて切符を渡すことができなくなるんよ。そのシーンを思い出したなぁ。(以下、本文へ)
●鈴木 千春(すずき・ちはる)さんのプロフィール ◆1978年生まれ。 |