ルーカススタータモーター 分解

マグネットスイッチタイプ スタータモーター
ロータスヨーロッパ

レストアに伴いスタータオーバーホールの依頼です
通常の分解を進めながら問題点を探してゆきます

同型参考図

ギヤの部分にグリスがいっぱい飛んでいました
通常はブッシュの油かエンジンオイルが
にじんで少量付着することはありますが
あまりの多さでした。

セルの回りが重いために塗ったのでしょうか?

マグネットの端子がひどく錆びていました 
他のネジと比較してここだけ極端ですので
負荷が多く大電流で発熱し
接触不良による錆と思われます
分解してテスターで調べ

洗浄しクラックや緩みなどがないか調べ

ブラシとコミュテーターの当り
マグネットスイッチの接点部分を
修正し各部注油します
マグネットを外す際
取り付けボルトが馬鹿ねじになっていました
ボルトを作り 外れ止めにクリップも

マグネットスイッチ内部の接点を磨いて
修正します

右写真の銅のプレートが
ギヤが飛び出すと同時に左の接点側に押され
バッテリーとモーター部分と導通します
マグネットスイッチのコイル部分にハンダが
流れ落ちていました
リビルト時のハンダ付けの量が多すぎて
流れ込んだようです

多いと外周の金属と接触しショートします
このタイプのブラシは3角形です

このコミュテーター部はアンダーカット
(絶縁体部分の切削)はしないように

ルーカスのコミュテーターはアンダーカットを
しない物が多いので注意が必要です
ドライブギヤとシャフトのクリアランスが多くて
ガタガタでした 洗浄してよくみると
間に入るべきのブッシュが入っていません
ブラシの減りや接点の荒れから考えて
磨耗する程の使用感はなく
ゴールドのリビルトシールが張ってあることを
考えるとリビルト時ブッシュの入れ忘れか
このせいでグリスを塗ったのかもしれません?
0.5mm厚のブッシュを作ります

在庫の特殊なブッシュを
旋盤で加工して圧入します
薄いので苦労します
シャフトスライド部分にエンジンオイルや
モリブデンペーストを塗って組み上げします
モータリングテストをして
お化粧して
完成です






ポルシェ911のスタータモーター

スタータの廻りが悪いとの依頼で
検査時 車両に付いた状態を写したものです


左側のねじが右の短いねじに比べ
ひどく錆びています
ここはバッテリーと直接繋がって
エンジン始動時は数百アンペア流れます
このねじが緩むと接触不良で
スタータを廻すたび発熱(ジュール熱)の
繰り返しでこんな状態まで腐食

最後にはナットの角に白く見える跡
これはスパークした跡です

引火物が近くにあれば危険です


ベンディックスタイプ スタータモータートラブル

ロータスセブン

スタータが回らない時がよくあったので
押しがけしたりしていたが
今回はチェンジを入れて押しても動かないとの事

外したらブラケットが割れている
このタイプのスタータはモーターに電気を流し
回転する勢いでギヤを前に押し出し
エンジンの大きな歯車とかみ合わせてエンジンを回転させるといった
シンプルな構造です

大きな注意点は
バッテリーの力が弱いとギヤがエンジンの歯車にかみ合った時力尽き
かんだまま止まってしまうことが多くあります
取扱説明書に書かれていますがスターターの後端シャフト部が4角になって
そこをニュートラル キーOFF時に工具で廻すと抜けると記載されています

無理に押しかけや牽引して抜こうとすると破損やシャフトの曲がりの原因となります

こういったスターターが使われた車は元々大きなバッテリーが搭載されているはずです
それを容量が似ているからといって小さなバッテリーを使い
さらにあまり乗らないため容量低下させたまま
使用するとこの様な原因になりかねません

あまり乗らない車ほどバッテリーは新しくし補充電のメンテナンスを行ってください

コミュテーターエンドブラケットが割れています

ギヤとブラケットの交換なら
英国からのリビルトアッセンブリ
の方が安いかもしれません。

同型参考図

ベンディックスタイプ スタータモーターオーバーホールの依頼
スタータモーターオーバーホール

上側はギヤが割れています


最初にプレスを使ってギヤ先端のCクリップを外します
そしてギヤを抜きます

すんなりと抜けないようなら
ギヤの中にあるワッシャのキリカキ部分と
シャフトのキリカキ部分を合わせます
軽くプラハンマー等でショックを与えたりします

分解時位置を合わせるため印を打っておきます

コミュテーターエンドブラケット(ブラシ側)を
外したところ

ドライブエンドから先に外してもかまいません

ブラシとコミュテーターわかり易いように撮影
しています
ドライブエンドブラケットを覗いた所

アーマチュアを抜きその外側が擦れた形跡がないか

ポールシュー(周りの四角い金属)のスクリューが
緩んでいないかチェック
洗浄してクラックがないか

絶縁 断線 ブラシスプリング張力
ブラシ長さなどをチェック
ブラシとコミュテーターを修正します
ブラシが短ければ交換
アーマチュアシャフトに曲がりがないか
Vブロックに乗せて廻し検査します
ブラケットのブッシュに注油します
ブッシュにがたが多ければ交換又はブラケット交換
組む時位置合わせのピン位置を確認
コミュテーターエンドブラケットのボルトが
小さくて硬いので折れやすく注意が必要
組み上げてギヤを新しくしました

廻して確認し完成です