櫛形山

 














甲府盆地の西に、文字通り櫛を立てた形にそびえる櫛形山。
標高は2000メートルを超えるから、300メートルに満たない甲府盆地から、実に1700メートルあまりも屹立していることになる。
南アルプスを左右に従え、道理で、なかなかの「番」の張りようである。

  甲府盆地から見た櫛形山<山岳展望ソフト カシミールで作成>




 



実はこの山、火山でないのに火成岩からなる不思議な山。
その秘密は、この山が外国産だからなのだ。

伊豆半島は、フィリピン海プレートに載った海嶺が、本州に衝突してできたことはよく知られている。
いまでもそのプレートは年3センチ北上して、本州の乗るユーラシアプレートの下に潜り込んでいる。
このことが、来るべき南海・東南海大地震の元凶の訳なのだが・・・






さて、話を元に戻すと、
今から約1200万年前、フィリピン海プレートに乗った最初の海底火山が日本列島に衝突した。
本来、海のプレートは陸のプレートの下に潜り込むはずなのだが、海底火山の連なりである海嶺は大きすぎて潜れず、衝突して押しつけられてしまう。これが今の巨摩山地だ。

その後からも、御坂山地、丹沢などがどんどん押しつけられ、とうとう日本列島の中心部の地形は、逆U字型に変形してしまう。


22は丹沢帯<フィリピン海プレートに乗って日本列島に押しつけられた海底火山の地層>資料 千葉県立博物館




というわけで、南の海からやってきた外国産の海底火山のなごり、これが巨摩山地の先端に位置する櫛形山というわけだ。

櫛形山の属する黄土色の部分は中新世の火山岩で非アルカリ苦鉄質 <資料 産業技術総合研究所 100万分の1日本地質図「甲府」>




この山は、屏風のように立ち連なっていて、甲府盆地側は結構険しいのだが、うまいこと林道がつけられていて、標高1300メートルあまりまで車で上がれる。
裏側の丸山林道側からは頂上直下の1850メートルくらいまで車で行けるが、このルートでは風情がない。





標高2000メートルのアヤメ平までは、標高差700メートル、斜めにした屏風をトラバースするのだから、つづら折りなんかない一直線、直登。





アヤメ平は、ちょうど今が盛り。群生してなかなか見事である。それゆえ、反対側からのラクチンコースで来たであろう年配の登山者で満杯。

昼食を摂り、写真を撮して、そこそこに出発。
やがて櫛形山頂上。眺望はなく、カラマツの大木が茂っていた。

アヤメ平のアヤメ
アヤメ平
テガタチドリ

見事なカラマツの大木





さて、登山道はおおむね土で覆われていて、岩石を見かけることは余り無いが、それでも、足下にころがる石をよく見ると、海底火山のなごりの岩石だ。

デイサイト<石英安山岩>
石英閃緑岩<白い部分は石英の結晶>
ラピリストーン<火山礫岩>
火山礫凝灰岩
  岩石名称はいずれも筆者推定




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