湘南新宿ライン、快走なるか!!





 この秋からのJR東日本の新ダイヤの概要が、先日公表された。
目玉は、見出しの通り、湘南新宿ラインの
大増発である。


 この6月に、池袋での埼京線の上りと山手貨物線の下りとの
平面での交差が解消され、これを受けての大増発となったものだ。
<参照>http://www.jreast.co.jp/construction/proj01_main.html#05



 首都圏を通過する貨物列車は、昭和48年に武蔵野線ができるまでは、この湘南新宿ラインのルートを通っていた。

 歴史をたどれば、今から120年も前、山手線が
東京都心部を迂回する客貨両用のバイパスとして完成した明治18年にさかのぼる。<路線図 明治20年>

 その後、品鶴線
<横須賀線として使っているのだが元々は東海道線の貨物別線>が昭和4年に完成し、両者が一体となってその後40年あまり貨物の大幹線として活躍した。<路線図 昭和20年>

 10年少し前に、新小平で武蔵野線が
水没し不通となった時は、その昔に立ち戻り、武蔵野線の迂回ルートとして、復活したものだった。




 JRが昭和62年に発足し、設備投資に関する姿勢が国鉄時代と比べて格段に厳しくなった。自分と関わらないところ
<たとえば国会で>で将来の負担となる新規投資の是非が決められたのでは、民間企業として生きていけないからだ。

 鉄道の、とくに輸送設備の改善は、時間と費用がかかる。総体としての輸送需要の増加が見込めないなかで、
採算性を厳しく吟味し、短期にリターンが期待できるものに厳選する抑制基調が続いたわけだ。



 こういう状況のなかで、あまり使われてなかった
貨物線の活用は、比較的投資額も少なく、即効性もあることから、有効な手段として選択された。

 成田エキスプレスの品川から先、横浜、大宮、高尾方面ゆきなどもその一環。すでにある品鶴線、山手貨物線を活用したものだ。無理矢理つないでいるので、大宮行きが品川経由というのはどうしても
違和感があるのだが・・・

 



 今回の、湘南新宿ラインの大増発は、こうした方策の
集大成で、東海道と東北という両幹線の旧貨物線ルートを、少ない投資で本格的に生き返らせた。


 鉄道の結節点は、新幹線は東京だが、首都圏の日常生活ベースでは、いまや新宿だ。そこと首都圏の南北両方面を直結し、
高速化、高付加価値化(グリーン車の導入など)も同時に行い、収益源として育てようという意欲的なもの。



 迎え撃つ
民鉄グループは大変だ。JRに押しまくられている関西の現実が、関東でも再現されようとしている。

なかでも
東急は、新宿方面への地下鉄乗り入れの完成まえに、稼ぎ頭の東横線を直撃するプロジェクトをぶつけられ、心中穏やかでないはずだ。
 特急の導入や、みなとみらい線との相互直通運転などそれなりの対策も講じてはいるが、これからが勝負どころ。



 それから、
小田急
藤沢への湘南急行の増発など、やってはいるがほんの小手先。
今回は1時間1本の「特別快速」で小田原・新宿間のお客を直接ねらわれる。
 所要71分で、「はこね」など有料のロマンスカーとほとんど遜色ないから脅威だ。
 いまのJRとの料金差を維持できるか、複々線化の進展をスピードアップという形で還元し乗客確保につなげられるか、この先真価が問われる。


 北方面の
東武は、あまり路線は重ならないが、決して安閑としていられない。それでなくても需要が縮むのに、さらにJRにじわっと幅寄せされ、おまけに過去の膨大な投資のつけが回る・・・



 一方のJRも、明るい話題だけとは言えない。

まず、
安全面だ。
今回池袋の平面交差は除去できたが、
蛇窪(大井町のJRの車庫の裏の方)のそれはいったいどうするつもり?
 この付近には複線どうし、3カ所の平面交差
<右図丸印>があり、全体として列車の行き違いは増える。

 ちなみに、ここは、いわゆる
三角線を形成していて、むかし、展望車のついた「つばめ」「はと」などの方向転換に使われていた(ので有名?)。
 
 JRには、万一の事故など起きないよう、ぜひ立体交差をしてもらいたいものだが・・
それまでは、先頭と最後尾の乗車は避けた方がいい?



 それから、横須賀線・総武線の
直通運転の始末
 
 もともと、国鉄時代の通勤輸送改善作戦として、前述のように品鶴線を横須賀線に転用したわけだが、今回、そのルートをかなり新宿方面に振り向ける。
 当然、横須賀線・総武線の直通運転ルートには
穴が開く。両線の列車本数には差があるから、多少は許容できるのかもしれないが、品川の都市開発でこの方面のお客も増えてきた。
 総武線の品川折り返し(過渡的にそういう時期もあった)をつくらないと対応がむずかしいのではないか。



 さいごに
名称
この湘南新宿ラインというのは、列車(群)の愛称と言ってもいいのかもしれないが、妙な名前だ。
 東海道線、横須賀線からの列車はその名の通りだが、大宮以遠の高崎線、東北線からの列車に「湘南」とはそぐわない。
 京浜東北線みたいに、うまく両方に通じる名前はないのかしら。


(おまけ)

りんかい線と埼京線の直通運転の大増発も今回の目玉のひとつ。

なにしろ、大崎での両方向の折り返しなんて、無駄と不便の象徴。CS経営の時代には合わない。
それにしても、そんなに客はいないのに、全部10両編成にして直通可能にした、りんかい線側の蛮勇?も、賞賛に値するか・・・・




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