「車窓の山旅・中央線から見える山」という本がある。
旧国鉄で40年間中央線の車掌をやっていたその名も山村さんという人の書いた本だが、「ひときわ目を引く滝子山。山頂からの展望は広大ですばらしい」とある。
かつて源頼朝の叔父にあたる鎮西八郎為朝がこの地に住み着いたと伝えられる。雨乞いの山でもあるという。
さて、二月の三連休の中日、予報は「曇りのち晴れ」とあまり期待できない。
かつてのスイッチバック駅の初狩駅からは、堂々とした三つのピークを備えたこの山が一望できたが、頂上付近はややぼやっとしており、雪がちらついている様子。
駅前を9時に出発。中央道の下を抜け、藤沢部落から山道に入る。 途中出会った村人にも、雪ですから気を付けて、と声を掛けられた。
川沿いの道はやがて稜線にとりつくが、積雪40,50センチ。雪道である。風はないが気温が低い。トレースはしっかりしているが、足形を外すとズボッと踏み抜き、消耗する。途中からはアイゼン、スパッツの冬山装備。
標高差1200m近くを3時間20分で登り切り、12時20分に滝子山頂上。
標識一本、山梨200名山とあるのみ。晴れていれば富士山や周辺の山並みが一望のはずだが、わずかに笹子川の谷が霞むくらいで、ほとんど見えない。
ここで北に進路を変え、大谷ヶ丸を目指す。途中、鎮西ヶ池を通過。池とは名ばかり。小さな祠がある。一下りしたところで昼食。火をたくが、おそらく零下10度くらいの気温で、わかしたお湯がすぐ冷える。
13時、再出発。雪はますます深く、アイゼンを着けた登山靴を持ち上げて深さ30センチ位の足形の穴に入れ込んで進む。いわば、下半身の筋トレ、しかも下山まで止められないわけだからしんどい。大谷ヶ丸までは起伏もあって結構長く、あえぐ。
大谷ヶ丸は、本日の最高地点で、標高1640m。樹林帯の中ではあるが、西面からはわずかに奥秩父連峰らしき峰々が望まれる。
本来はここから北東へ向かい米背負峠から、天目山へ下り、やまと天目山温泉に入ろうという計画であるが、雪が深く、天目山へのルートはトレースがない可能性もあるので、方針変更。南西に向かい、小金沢連峰の南端のゆるやかな尾根道を行く。
やがて曲り沢峠に15時40分着。すでにやや薄暗い。初鹿野へ下りるか、笹子に下りるか迷うが、道が良さそうで、林道に早く出られそうな笹子ルートにする。しかし、この「すみ沢」ルートもきつい下りで、途中崩落箇所もある。足許は依然として雪が深く、気を抜けない。
夕刻17時に、大鹿林道(標高800m)に出る。ちょうど出発から8時間。強行軍であった。
ここからは林道歩き、携帯電話のつながるところでタクシーを呼び、原部落の手前で遭遇。一路、大月を目指す。
大月駅付近の銭湯で体を暖め、ビールで水分を補給、参加者四名の健闘をたたえ合い、大月始発の東京行きで帰宅。
本年最初の山行にしては、しんどく、疲れた。
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