食品を介した寄生虫病 最近日本で注目されている寄生虫病 生活衛生44(4)、163-169、2000 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
感染予防 食品の製造過程で寄生虫を原材料から見つけ、それを除去することは実際には不可能かと思われます。 ですから、寄生虫病の感染を予防するためには、消費者である私たちが、寄生虫に関する正しい知識、特に感染の起こる機序についての基礎知識を持つことが必要かと思われます。 食品や飲料水を介して感染する寄生虫の多くは、加熱または冷凍により死滅することが確認されています。 したがって、魚介類、肉類については十分な加熱または冷凍を行い(筋肉トリヒナの場合は、−30℃で36時間処理した場合でも感染性が保持されるタイプが存在するので加熱が好ましい)、また、生野菜などでは調理、摂食前によく洗浄することが重要です。 さらに、イノシシ、クマ、は虫類などの生食にょる感染事例が報告されていることから、これらの生食の危険性を周知することが必要かと思われます。 おわりに 現在は、かつて国民の70%以上が回虫に感染していた時代とは、衛生環境や食生活環境において大きく変化していると共に、多種多様な物資に満ち溢れ、経済的にも豊かな時代といえます。糞便で汚染された野菜を原因とする寄生虫病から、生鮮魚介類の生食による新たな寄生虫病へと、その発生も時代の変化に応じて様変わりしているものと考えられます。 自然食を含む生鮮食品の需要増加、調理済み食品の普及(特に魚介類)、ゲテモノの生食指向の高まり、海外からの生鮮食品の輸入増加、そして、食品の低温流通技術の発達(産地から大都市部へ新鮮な魚介類を届けることが可能になったこと)により、今後はさらに食品を介した寄生虫病が増加すると共に、これまで知られていなかった新たな寄生虫病の出現も予想されます。 |