1)MRSAが単独感染の場合
@ABK、VCM、TEICのどれかを使用する。
ABK(ハベカシン) | 1日150〜200mgを2回に分け筋注または点滴静注、点滴は30分〜2時間かけて |
VCM(バンコマイシン) | 0.5g(1V)6時間毎、あるいは1gを12時間毎 |
TEIC(タゴシット) | 初日200mg(1V)1日2回をまたは400mg(2V)を2回、以後1日200mgまたは400mgを30分以上かけて点滴静注 |
注)タゴシットは最近高い評価を受けている抗MRSA薬で、グリコペプチド(GPs)の一種
である。その投与方法に特徴がある。半減期が約50時間と長いため1日1回投与でよいが,トラフ(谷)値を早期に上昇させることにより、より効果を上げることができる。初日に200、400mgを2回投与する,いわゆるローデイングdose方式が行われる。 GPsのなかでは安全性が比較的高いためトラフ(谷)値を10μg/ml以上に早期に上げることがであり,そのためTDM (血中薬剤濃度のモニタリング)を行うとよい。
A上記にRFPとST合剤の経口併用投与
リマクタン150mg(1T)+バクタ2T 1日2回(バクタはRFPの耐性化防止のため) |
気道のコロニゼーション,軽微な症状のMRSA肺炎, MRSA敗血症, MRSAトビヒなど経口剤のみの併用でも十分治療可能のものが多い。
2)VCM軽度耐性MRSA
ABK+SBT/ABPC(ユナシン) |
ABK+イミペネム/シラスタチン(IPM/CS) |
注)β-ラクタム薬は細胞壁の構成要素であるペプチドグリカン層の生合成を阻害することにより殺菌的に作用する。ここに一定量のアミノグリコシド系薬のABKが入ると,相乗作用により両薬のMIC低下が期待できる。
3)MRSA+緑膿菌感染の場合(最強療法)
MRSAはP. aeruginosaなどとの複数菌感染多いため, P. aeruginosaには配慮が必要である。 FOM (ホスミシン)とSBT/CPZ (スルペラゾン)との時間差攻撃療法は,多剤耐性P.aeruginosaにも有効である。
ABKを加える場合
(FOM→ABK→SBT/CPZ) |
@FOM2g+蒸留水20ml 3〜5分でone shot静注
60分後
AABK100mg+生食100ml
30分で点滴静注
BSBT/CPZ(スルペラゾン)2g+5%ブドウ糖250ml(+ハイドコーチゾン300mg最初の3日間使用することも考慮)
60分で点滴
第1日目 @→A→Bを1日2回、2日目以降は朝のみ@→A→B、夕は@→Bのみ |
VCMを加える場合
(FOM→SBT/CPZ→VCM) |
@FOM2g+蒸留水20ml 3〜5分でone shot静注
60分後
ASBT/CPZ2g+5%ブドウ糖250ml(+ハイドコーチゾン300mgを最初の3日間使用も考慮) 60分で点滴
BVCM0.5〜1.0g+生食100ml 60分で点滴静注
第1日目 @→A→Bを1日2回、2日目以降は朝のみ@→A→B、夕は@→Aのみ |
TEICを加える場合
(FOM→SBT/CPZ→TEIC) |
@FOM2g+蒸留水20ml 3〜5分でone shot静注
60分後
ASBT/CPZ2g+5%ブドウ糖250ml(+ハイドコーチゾン300mg最初の3日間使用も考慮)
60分で点滴
BTEIC400mg+生食100ml 60分で点滴静注
第1日目 @→A→Bを1日2回、2日目以降は朝のみ@→A→B、夕は@→Aのみ |
4)スイッチ療法
肺・軟部組織・骨・関節などにはABK (ハベカシン)の移行がよいので, MRSA感染症治療のスタートにFOM+ABKの時間差攻撃療法を行い, 2、4週以上の治療を必要とする骨髄炎や関節腔内感染症には後半をFOM十TEICまたはFOM+VCMにスイッチする方法である。
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