検証!電車内”通信”は本当に悪なのか?
DIME 200.11.16
 車内の混雑時、携帯電話の電瀬を切るようアナウンスする鉄道会社が増えている.すでに実施している1R東日
本や東京都交通局などに加え、JR西日本や閑西の大手私鉄も、この10月からラッシュ時の携帯禁止に潜み切った。
 これまでマナー上の問題で禁止きれていた会話だけでなく、モパイル通信もできなくなったわけである。
 禁止の理由としてあげられているのが心臓ペースメーカーへの影響である。
監督官庁の通達やペースメーカー利用者の苦情、要請によって、今回実施に踏み切ったとする鉄道事業者も多い。
 ベースメーカーは、心臓に問題のある患者の体内に埋め込まれ、電気的な信号を送ること(ベーシング)で心臓を正常に動作させる医療機器である。国内には約30万人の利用者がいる。

 そして、科学的な根拠として用いられる資料が「医用電子機器への電波の髪菅を防止するための携帯電話等末等の使用に関する指針」である。不要電汲開題対策協議会によって97年に公表されたこの文書には、〈携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携帯電話を植え込み型心臓ベースメーカ装着部位から22cm以上離すこと〉)(ペースメーカ装着者と近接した状態となる可能性がある場所(例:満員電車等)では、その推帯電話端末等の無線機の電源を切るよよう配慮することが望ましい)とある。

22cmという数値は、実際の携帯電話による最大干渉距離15cm(1.5GHZPDC)に、誘導磁界の強度が半分になるよう安全マージンを考慮したものだ。
 
国内でベースメーカーを取り扱う各社が加盟するベースメーカ協議会でも、95年にNTTドコモの協力を得て、国
内13社228機種のペースメーカーを対象に実験を実施している。そこでも、最大干渉距離は15cm以下であり、安全マージンをとって22cm離せば安全というPRを独自におこなっている。

ペースメーカー利用者に危害が及ぶことはまずない!!
 では、推帯電話のベースメーカーヘの影響とは、具体的にどういうものなのだろうか。
 ベースメーカーは、心臓が自発的に動いている場合、電気信号をストップする設計になっている。これは、心臓
の自発を魅極力優先させることと、電池の消耗を低減するためである。携帯電静の電波が干渉するのは、この検知(センシング)回路に対してである。

 検知回路が携帯電話の電磁波を心心臓の鼓動と誤認識してしまい、その結果ベーシングが止まる可能性があるのである。ベーシングの停止は、直接人命に関わるるほど危険なのか。
「一時的にベーシングが止まったとしても、本人には気分が悪くなるなどの自覚症状がありますから、その携帯電話から離れるなどすれば、ペーシングは正常に戻り、問題はありません。しかも15cmという距離も、携帯電話、ペースメーカーの感度を上げた状態で測定した値です。満員電車でも、胸にべったりくっついていなければ干渉する可能性は非常に低く、現実にはまず危険はないと言っていいでしょう。

 実際に国内では、携帯電話の使用によってペ−スメーカーに影響を与えた事例はいまだありません.
 最近の報道は、ことさらに危険であることを強調しすぎており、利用者の不安感を増してしまっています。
 さらに、センシンング回路もフィルターを入れ、心弁の波形のみをとらえるように設計されてきています」(ペース
メーカ協議会会長・」富岡隆広氏)

 またメーカーによっては、ベースメーカー本体と心臓につながるリード線のコネクター部分(もっとも電磁波の
影響を受けやすい箇所)をシールドして対策しているという。
 ベースメーカー利用者が携帯電話を使用する際も、身体の左側に装着しているなら右手に持って通話すれば問題ないとのことだ。

”誰が責任をとるのか”が携帯規制の根底にある!!
 そうなると、これだけ安全性の高いペースメーカーを理由に、携帯電話の電源を切らせようとする鉄道会社の対応は、紳経質すぎるのではないか。こうした疑問が生じてくる。
 しかし、″影響がある″というデータが存在している以上、混雑した車内で携帯電話を使っていい、とするわけにもいかないのだ。

 日本心臓ベースメーカー友の会は、利用者や心臓外科・循環器医、厚生省、機器メーカーなどを会員とする団体だ。

ここには、去年の4月から利用者による問い合わせが急増しており、会員も900名以上増えている。
「それだけ不安になっている人がいるわけです。われわれも利用者に対しては、影響はあるけれども心配はしなくてよいと言っています。

 しかし、不要電波問題対策協議会で影響があるとされた結果を、われわれが影響ないと言うのはおかしな話で、混雑した車内では逃げられないケースも考えられ、電源を切るよう徹底した方が良いとい、考えです。
ペ−スメーカー側で対策はされてきていますが、20年も入れたままの人もおり、全員、最新機種に入れ替えるのも無理なのです。

 また利用者が携帯電話に不安になることを神経質だとする意見がありますが、それも閏題。万が一のときに責任
を持てるのか、との意見も医学界にはあるのです」(同会副会長・日高進氏)
 つまり、抵帯電話が命に関わる確率は極端に低いものの、事故があった場合の責任の所在がはっきりしていないことこそが問題なのだ。

 現実問題として、もし事故が起こったとすると、被害者は鉄道会社の責任を問うことになろう。各鉄道会社の携帯電話の使用親制は、これに対する自衛措置といえよう。
 しかし、携帯電話ユーザーとしてはなにかすっきりしないのも事実。また到底徹底されえない「電源オフ」では、ベースメーカー利用者の不安も解消されない。

 ベースメーカー利用者の自衛方法や、ベースメーカーのどの機種が安全といえるのか、関係機関によるさらなる情報公開がいま必要ではないだろうか。


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