ブロンコレアとはどのような疾患ですか?
同愛記念病院アレルギー呼吸器内科部長 佐野靖之
 ブロンコレア(気管支漏)は、スラリー様といわれる卵の白身のような外観を呈した喀痰を、1日に100ml以上、難治時に喀出する病態とされています。その原凶となる疾患には、慢性気管支炎、気管支拡張症、ぴまん性汎細気管音炎、肺胞上皮癌など多岐にわたり存在しますが、これらのように原因のはっきりしたものでは原因疾患の治療が第1選択となります。

スラリー様外観を呈する多量の喀痰を喀出する原因の明からかでない症例の約9割は、喘息や何らかのアトビー疾患と関連していることが多く見られます。喘息にブロンコレアを分併すると胸部閉塞感が常にあり、重症難治喘息に移行することが多い。

 喀痰の1日量が300〜400mlと多く、ほとんど1日中痰が出ている状態、つまり肺の中で溺れているかのような状態では、息苦しく、激しく咳き込んで難治的に痰を喀出することが多いので、疲弊し著しくQOLが損なわれ、重症の患者は通常の生活すら困難になる場合があります。

【診断法について】
  前述のように、ブロンコレアの喀痰は卵の白身様の外観で、上郡の3分の1は泡沫状と、特徴的な外観ですので、これがまず第一の診断根拠となります。ですから蓄痰して喀痰量とその性状のチェックを行うことが最も大切な診断法となります。

 気管支鏡検査では、独特の気管支腺の変化を見ることができ、慢性気管炎の気管支腺と比較して2〜3倍ほどに肥大増殖し、粘液が太い導管にまで充満し、問質に浸みだしている場合もあります。また、発症してから5〜10年と長期間こわたる患者の上皮では杯細胞の増加(goblet cell hyperplasia)や、扁平上皮化性が見られることが多く、このような場合は、長期にわたって常に痰の多さを.訴えていたにもかかわらず、医師より適切な診断・治療が行われなかったケースに多く見受けられます。

【治療について】
 効果的な薬剤としては、ヒスタミンH1拮抗薬、テオフイリン薬、マクロライド少量投与療法、抗コリン薬、インドメタシン吸入療法、吸入ステロイド療法など種々あげられていますが、痰が少量(30mlくらい)の場合は効果的ですが、100ml/日以上を超えてしまうと、上記の治療法では、痰量をかなり減少はできても止めきってゼロまで抑えることはできません。

唯一、抑えきって痰量をゼロにできるのは現時点ではステロイド薬の全身接与しかありません。重症度にもよりますが、入院させて安静を守らせた上でプレドニン換算60〜80mgを初期投与量として用い、約10日間で痰の湧出が止まりほぼ10ml/日に近づいたところより10日〜2週間かけて約25%ずつゆっくり減量し、20〜30mg/日時点より、より注意深くゆっくり約2週間かけて5mgずつ減量していきます。

減量を急ぎすぎたり、減量中に風邪や感染にかかれば再憎悪し、再度、最初から治療をやり直さなくてはならなくなりますので、注意が必要です。気管支炎が肥大した症例はステロイド薬が効果的ですが、扁平上皮化性や杯細胞化が日立つ症例ではステロイド薬治療も効果的でない場合が多く、その場合はいたずらに全身ステロイド療法に固執することなく、むしろ喀出を促すような治療に変更すべきといえます。

 すなわち使用薬剤の副作用などを考慮して、無理に痰を止めようとせず、去痰薬、気管支拡張薬、マクロライド少量長期療法、インタール液十β2刺激薬のネブライサー療法や肺理学療法などの対症療法に変更すべきといえます。

 いずれにしても、診断や治療の遅れから、重症難治化している患者さんが少なからず見られますので、早期に診断し、適切な治療を行って症状を軽減してあげることが大切といえます。
メディカルトリビューン2000.Janより

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