最近の結核性眼病変の特徴
メディカルトリビューン 2001.4.12
1997年,日本での結核の新規発生患者数が38年振りに,罹患率が43年振りに増加に転じた。こうしたことから,99年,厚生(労働)省は結橡緊急事態宣言を発表し,現在も結結核撲滅に向けた取り組みがなされている。このように結核患者が増加してきた最大の原因は,結核が既に克服された遇去の疾患として捉えられ,警戒感が薄れていることにあると言われている。
 眼科領域においても結核性眼病変の患者数は増加していることから,結核についての知識の再確認,疾患に対する再認識が,内科医はもとより眼科医にも求められて いる。そこで,大阪大学眼科学教室の渡辺仁講師に,特徴ならびに診断,治療法について聞いた。
  最初に眼科を受診する場合も
 これまで眼科では,内科で結核と診断された患者について,眼合併症の検査・診断,局所的治療が行われていた。しかし,最近では,眼症状で最初に眼科を受診し,結核が判明するケースも見られる。渡辺講師は「最近の結核は,必ずしも病変が明らかでなく,喀痰検査で結核菌が検出されないことも多い。そのため,典型的な症状が現れず,結核の診断は難しくなっている。加えて,医師側も結核を診療する機会が少なくなっているため,病態を十分に認知していないという現状がある」と説明する。こうしたことから,眼科においても結核を見逃さないために,結核の眼病変の特徴をしっかりと把握しておくことが重要となっている。

 もっとも頻度の高いぶどう膜炎
 結核による眼合併症には,おもにぶどう膜炎,虹彩炎,角膜実質炎,強膜炎,結膜フリクテンがある。非常にまれだが,一次性に結膜潰瘍が生じることもある。
 結核の最も額度が高い眼合併症としては,後眼部に発症するぶどう膜炎が挙げられる。粟粒結核,結核腫が脈絡膜に出現する例もあるが,最も頻度が高いのが網膜静脈炎を呈するタイプである。結核性の場合,閉塞性の網膜静脈血管炎が出現し,網膜出血さらには静脈の周りに白鞘化を生じる。その際、病状の進行とともに増加する前房や硝子体の炎症から視力低下や霧視が起こる。
 診断は、眼底所見により閉塞性の網膜静脈炎があれば、結核性を考慮に入れて検査を行い、ベーチェット病やサルコイドーシスなどとの鑑別診断が必要である。
 結核性のブドウ膜炎が進行すると、血管炎から血管が閉塞し、無血管領域が形成され、新生血管が生じ、硝子体出血に至ってしまう。無血管領域が生じると光凝固術を行う必要があり,出血すると硝子体手術の適応となる。渡辺講師は「眼科医が結核性眼病変の特徴を認識しておくことにより,全身治療を含めた適切な治療ができ,重症化を抑えることが可能だ」と述べ.眼病変把握の重要性を重ねて強調する。
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 4つのポイントから診断を
 近年は,眼病変が軽度で,診断に苦慮することが多いため,渡辺講師は,4つの診断ポイントを挙げている。
すなわち,
@眼病変が結核性病変に当てはまり,それらが他の要因で生じたものではない
A結核病変が全身のいずれかの臓器で認められる
B結核性の免疫反応,つまりツベルクリン反応が確認される
C眼病変が抗結核薬治療に反応する。
これらのうち3項目以上該当すれば,結核性眼病変と診断できるとしている。
 同講師は「結核性眼病変のなかでも,ぶどう膜炎は視力低下を来すため,特に注意しなければならない。
結核を早期発見するためには,病態を認識しておくことが最も重要であり,また,喀痰検査で結薇菌が認められなくても結核性によるものではないか慎重に診断を進めることが重要である」と強調している。