時差ボケ
 時差ボケとは,5時間以上の時差がある地域をジェット機で高速移動した際に起こる「心身の一過性の不調状態」をいう。時差症状は,睡眠覚醒障害,集中困難,能率が落ちるなどの精神作業能力低下,便秘や下痢,食欲不振などの胃腸症状,だるさや疲労感,目の疲れなどが知られている。

 時差による睡眠覚醒障害は,日本から東行き飛行をしたときのほうが,同じ時間帯を西方飛行したときに比べて著しいことは知られている.東西に飛行することで時差症状に差が出るのは,次のような理由が考えられている。

@ 東行きでは,生体リズムの位相を前進させて現地に同調する必要がある。
 その際,本来24時間より長いリズム周期を短くして同調するという無理が生じる。
A時差地では体内時計が混乱し,フリーランニングのような位相後退を起こす。
H東行き飛行は出発が夜間となることが多く,睡眠不足や疲労が時差症状を強くする。

1. 時差解消対策の基本的な方針 
@ ずれたリズムを早く現地時間にリセットさせること。そのためには,現地の同調因子, 特に明暗,社会的接触などを利用して,再同調を早くする。
A 現地の夜に合わせて一定時刻の睡眠をとるように心がけ,その作用力が他のリズムへ 及ぶようにする。
B短時間の仮眠をとり,旅行中の睡眠不足を解消する。

2.具体的な方法
@高照度光を使う:
まず,時差ボケの強い東行き飛行の場合,成田−サンフランシスコを例にとると,到着第1日の午前中はホテルの部屋でカーテンを引いて仮眠し,機内での寝不足を解消する。しかし,生物時計の位相前進相にあたる現地の午後には,無理にでも起きて戸外で高照度光(自然光)に当たるようにする(起きられない場合にはそのままホテルで眠ってしまい,その夜は全く眠れなくなってしまう)。

その結果,睡眠相が前進し,時間を進めて再同調しなければならない東回りの時差解消を早めることになる。 西行き飛行では,生体リズム位相を後退させて同調していくことになるため,再同調はしやすい。

A薬剤による時差調整法:
半減期の短いペンゾジアゼピン系(ハルシオン・レンドルミン・エバミールなど),シクロビロロン系睡眠薬を現地時間の夜に服用することは,夜間睡眠時間を確保し,時差による不眠を解消し,不眠による寝不足の累積を防ぐことに役立つ.夜間睡眠がとれれば,日中の眠気も軽減し,日中の活動がしやすくなり,適度の運動や仕事で程よく疲れると夜間睡眠への導入もしやすくなる。

 睡眠薬投与は,到着後の第2夜,第4夜には特に必要である.その理由は,到着日はフライトの疲れや睡眠不足で比較的眠れるが,2日目は時差の影響を強く受けて眠りにくく,その寝不足で3目は眠りやすく,4日目が眠りにくいというジグザグ再同調経過をとることによる。

 なお,時差調整用に睡眠薬とアルコールを併用した旅行者が一過性の健忘を起こしたという報告もあるので,使用時は用量を守り,飲酒との併用は避けるように指導することが必要である。
(日本医師会雑誌より転載)
コメント:
ハルシオンとアルコールで一過性の健忘が起こることが知られている。以前、ハルシオンの不正使用してトリップするなど、ハルシオンの不正売買が問題になった。

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